中国メーカーTranssionが「スマホシェア世界5位」に上り詰めた理由 上位メーカーの脅威に:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
スマートフォンの世界シェア順位5位にTranssionが浮上した。IDCのデータによると、2023年第2四半期のスマートフォン出荷台数順位はSamsung、Apple、Xiaomi、OPPOの後にTranssionが続いた。高性能スマートフォンも次々と送り出すことで上位メーカーを脅かす存在になろうとしている。
シェア3位目前 今後の重点市場に注目も、日本参入はなさそう
IDCのデータを見ると、Transsionは2022年第2四半期から34.1%も出荷数を伸ばしている。シェア上位の他4社全てがマイナス成長であったことと比較すると対照的だ。アフリカ市場がコロナから回復傾向にあることや、Tecnoの高性能モデルが次々と登場したことも追い風になっている。Tecnoは2022年12月にカメラのレンズが前後に収縮する望遠カメラ搭載「Phantom X2 Pro」を出しており、インドではカメラフォンとしての人気も高いようだ。
5位Transsionと4位OPPOの差は0.1%、出荷台数では10万台しか違わない。OPPOは主力の中国市場が停滞している上に、特許問題で欧州での販売撤退を余儀なくされている。2022年12月に発表した縦折りスマートフォン「Find N2 Flip」は、発売すると同時に中国国内で折りたたみスマートフォン1位の座をHuaweiから奪い去り、その勢いを欧州市場でも発揮したいところだった。だがイギリス、ドイツ、フランスなど主力市場での撤退が相次いでおり、先進国でのシェア拡大にブレーキがかかっている。そんな中で日本市場向けに主力モデル「Reno10 Pro 5G」を投入したのは明るいニュースといえる。
1年前だが、カウンターポイントの2022年第2四半期のデータによると、Transsionのマーケットは中東とアフリカが66%で最も多く、インドが12%、東南アジアが7%、その他アジアが11%、中央および東欧州が2%、ラテンアメリカが2%となっている。中東アフリカは、よほどの異変がない限りシェアを下げる理由が見つからず、むしろ他の市場でのシェアが低いことは、今後シェアを高められる可能性を十分秘めているともいえる。
ラテンアメリカは引き続き低価格モデルが主力製品になるだろうが、価格を抑えたモデルでも、Tecnoの「Pova 5 Pro 5G」は背面がLEDライトによって光る機能を持っている。同モデルのインド価格は約1万5000ルピー、2万7000円程度だ。格安とはいえないが高価でもなく、この価格で買える「光るスマホ」はTecno人気を引き上げるものになるだろう。価格や性能だけではなくプラスアルファの機能を乗せた製品を作るのがTecnoはうまい。
Tecnoは「色」にフォーカスしたモデルを既に出している。2022年7月に発表した太陽光で背面の色が変わる「CAMON 19 Pro Mondrian Edition」は、グローバルでも話題になった。またInfinixもレザーのエッジを光らせる「3D Lighting Leather technology」を発表。色の変わるスマートフォンは新興国で目立つ存在になるだろう。
東南アジアの7%という数字を伸ばすことも、戦略的な製品があれば十分可能だ。ライバルの中国メーカーは低価格・高性能な「高コスパモデル」を次々と出すことで地場メーカーを退け、シェアを伸ばしてきた。だがアフリカ市場を戦い抜いてきたTranssionにとってコスパモデルの開発力は互角かそれ以上だ。シンガポールで発表会を行ったのも、今後の東南アジア市場重視の姿を見せる意味があったと考えられる。
Transsionの日本参入は恐らくないだろう。だが、数年もすればアフリカの人たちが日本人の知らない機能を搭載したスマートフォンを楽しみながら使っている姿が当たり前になっているだろう。HuaweiやXiaomiが世界市場でも注目される存在になっていったように、いずれTranssionが世界中から注目されるメーカーになることは確実なのだ。
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