「電気通信事業法の改正ではNTTは規制できない」 KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルがNTTの主張に再反論
KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの3社が、NTTが11月7日に発表した「NTT法のあり方についての考え」についての見解を発表した。NTTは電気通信事業法で規制ができるとのスタンスだが、3社は「現実的ではない」と反論。ユニバーサルサービス(電話サービス)の考え方についても食い違いが見られる。
KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの3社は、NTTが11月7日に発表した「NTT法のあり方についての考え」についての見解を発表した。
政府や総務省では、NTT法の廃止を含めたNTT完全民営化の可能性について議論しており、その中でNTTはNTT法が廃止になるとの考えを示している。これに対し、競合他社は「公正競争が損なわれる」「日本全国で電話サービス(ユニバーサルサービス)が提供されなくなる」といった理由から、NTT法の廃止に強く反対する。
こうした意見に対してNTTも反論。公正競争の焦点となっているNTT東西とNTTドコモの合併は、電気通信事業法でも規制できるとする。これに対し、3社は「NTT法の業務範囲規制は、NTT東西とNTTドコモの合併禁止のみならず広範な規制効果を有しており、電気通信事業法での対処は現実的ではない」「市場シェアに基づき規制対象の事業者が定められる電気通信事業法の規制のみでは、規制逃れの懸念があり実効性に欠ける」と反論する。
業務範囲については、電気通信事業者ではないNTT持株とNTT東西またはNTTデータとの合併が規制できない恐れがあるとする。規制対象については、電気通信事業法の禁止行為規制は、端末回線設備シェアが50%の事業者が対象だが、(シェア50%未満になるよう)設備をグループ内別会社へ譲渡することで規制逃れが可能になることを3社は危惧する。
ユニバーサルサービスの範囲についても認識の相違が見られる。NTTは、「ユニバーサルサービスの対象は加入電話(約1350万回線)のみで光電話は対象外」とするが、3社は「光IP電話が対象外なのは、あくまで電気通信事業法のユニバーサルサービス制度においての位置付けであり、NTT法のユニバーサルサービス義務の対象は全世帯(6000万回線相当)で、光IP電話を利用中のユーザーも保護対象」だと主張する。具体的には、光IP電話のユーザーが加入電話を求めた場合、NTT東西は拒否できないことを挙げる(こちらは焦点が「サービス」か「ユーザー」かで食い違いが出ているようにも見受けられる)。
へき地や離島などの不採算地域(ラストリゾート)について、NTTは「条件が整えばNTT東西がサービスを提供する」としているが、3社は「NTTが求める特定の条件は現状整っておらず、NTT法を廃止した場合には全国あまねくサービスの提供・維持が保障できない」と危惧する。
NTT法では外資比率を3分の1以下に定めており、NTTは「外為法やその他の法令などで主要通信事業者を対象とすることを検討すべき」と主張する。一方、3社は「NTTの特別な資産は、他の通信事業者の設備と同列に扱えるものではなく、NTT法による外資規制が有効であり、また外為法強化による代替は困難」「モバイル事業者にも経済安全保障推進法は適用見込み」と反論する。
NTTは、海外の主要国では既に特殊法人法を廃止していることにも触れる。これに対して3社は「特殊法人法の有無は、各国固有の競争政策と競争構造の違いによるものであり、日本は特殊法人法を廃止するための前提条件が整っていない」と反論する。海外では(旧)国営事業者や市場支配的な事業者を資本分離しているが、日本では旧国営事業者のNTTが一体経営しているため、前提が異なるという主張だ。
局舎、電柱、とう道、管路などの公共資産をNTTが所有しているからこそ、特殊法人を適用すべきという点について、NTTはそもそも公共資産は「株主である政府や民間に帰属する」と主張する。これに対して3社は「公社承継資産はNTT東西が所有し、NTT東西の株主はNTT持株(100%)である上、会社保有の資産が株主に帰属するといえるのは会社解散時である」と一蹴する。
3社は、NTT法の「廃止」ではなく「改正」が前提なら、将来の通信業界ひいては日本のあるべき姿に向けて前向きな検討が行えると述べており、NTT法の廃止には反対の姿勢を貫いている。
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