IOWNの低遅延はどれだけ“リアルタイム”なのか 「IOWN WEEK」イベントで見えた実力(2/3 ページ)
NTTグループ(日本電信電話、東日本電信電話、NTTドコモ)、東急不動産は次世代通信構想「IOWN」の技術を使ったイベント「IOWN WEEK」を東京・渋谷で開催した。対象は事前に招待された関係者や報道陣。3社が6月7日に合意した「IOWN 構想に関連した技術・サービスなどを活用した新たなまちづくりに向けた協業」に関する最初の取り組みとなる。
設備の構成が明らかに 低遅延性を実証するデモも
イベントではShibuya Sakura Stageの建物と、渋谷ソラスタの建物をAPN IOWN 1.0の回線で有線接続し、特徴の1つである“低遅延性”がアピールされた。両方に回線終端装置と、遅延測定と遅延調整を行う端末「OTN Anywhere」が設置され、両方の回線終端装置間がAPN IOWN 1.0の回線でつながる。
この構成を生かし、披露されたのが「どれくらい遅延が少ないか」が分かるデモンストレーションだった。「IOWN体感ゲーム」と題したデモは「からだじゃんけん」「あっち向いてほい」「表面張力ギリギリストップ」「ラップ対決」のパートに分かれ、Shibuya Sakura Stageの建物と、渋谷ソラスタの建物から複数の芸人が参加。
Shibuya Sakura Stageの建物には鬼越トマホークの坂井良多さんと金ちゃん、見取り図の盛山晋太郎さんとリリーさん、ヨネダ2000の誠さんが、渋谷ソラスタの建物にはトレンディエンジェルの斎藤司さん、ヨネダ2000の愛さん、とろサーモンの久保田かずのぶさんが駆け付けた。
からだじゃんけんでは、体全体を使ってじゃんけんを実施。あっち向いてほいではモニターに指さした方向がはっきりと映るように大げさなパフォーマンスを披露した。表面張力ギリギリストップはShibuya Sakura Stageの建物内にいる鬼越トマホークの坂井さんが頭にコップを載せ、アイスティーをいっぱいまで注ぐときに、渋谷ソラスタに居た久保田さんがストップと指示できるか否かを試した。
比較対象として無線LAN(Wi-Fi)回線接続時のデモも披露されたが、いずれもAPN IOWN 1.0の回線に比べて大幅な遅延が見られ、対決の勝敗が付きづらい一幕もあった。特に分かりやすかったのが、表面張力ギリギリストップ。Wi-Fi接続時には互いの姿が確認できるモニターの映像が遅延し、アイスティーをこぼす場面があった。
ヨネダ2000によるリズムネタも披露された。Shibuya Sakura Stageの建物内にいた愛さんと、渋谷ソラスタの建物内にいる愛さんがせりふを話したり、歌唱したりした。その途中でリズムに合わせて餅つきを面白く表現するシーンがあったが、IOWN最初から最後まで互いの姿をリアルタイムに確認し合い、APN IOWN 1.0の低遅延性が十分に発揮されたデモだった。
この他、Shibuya Sakura Stageへ入居する法人を対象に、オフィスでの利用を想定した「IOWNウェブ会議」が渋谷ソラスタで実施される。
APN IOWN 1.0はコンサート、遠隔医療、eスポーツにも活用可能
APN IOWN 1.0の活用事例が示されたのは今回のイベントが初めてではない。日本電信電話(NTT)の川添雄彦副社長が14日、報道陣や招待された関係者に向けて説明した。
12月31日から2024年1月1日にかけて、Bunkamuraオーチャードホール(東京・渋谷)で開催された「東急ジルベスターコンサート2023-2024」では、オーチャードホールと放送局をAPN IOWN 1.0の回線でつなぎ、リアルタイムで中継伝送した映像を地上波・BS(HD/4K)で生放送する取り組みが実施された。APN IOWN 1.0の特徴である大容量・低遅延という特徴を生かし、映像ソースを非圧縮のまま伝送できた他、タイムラグのほとんどない生放送になったという。
2月10日には同じくオーチャードホールを含む複数のコンサート会場をAPN IOWN 1.0の回線でつなぎ、多地点間協奏の実現性について検証された。川添副社長は「オーチャードホールにいた指揮者の指揮を、直線距離にして500km離れた大阪会場の演奏者が確認し、指揮と演奏にズレが生じなかった」とアピールした。
遠隔医療にもIOWNを活用できるという。「例えば、難しい手術は都心のドクターがこなして、その他の手術を現地のドクターがサポートする際、互いの場所同士をAPN IOWN 1.0の回線でつなぐことで、都心にしかいないスーパードクターが遠く離れた患者の手術が行える」(川添副社長)
低遅延性の重要性に関してはeスポーツも同じで、遅延の少なさが重要なポイントとなっているが、遅延の調整を行うOTN Anywhereが勝敗のカギを握るかもしれない。eスポーツの分野では回線品質の偏りを減らすためにあえて遅延を追加することはあるが、OTN Anywhereではマイクロ秒レベルで調整できるため、従来のような意図した遅延の追加が不要になり、より公平で快適な対戦につながるという。
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