IOWNの低遅延はどれだけ“リアルタイム”なのか 「IOWN WEEK」イベントで見えた実力(1/3 ページ)
NTTグループ(日本電信電話、東日本電信電話、NTTドコモ)、東急不動産は次世代通信構想「IOWN」の技術を使ったイベント「IOWN WEEK」を東京・渋谷で開催した。対象は事前に招待された関係者や報道陣。3社が6月7日に合意した「IOWN 構想に関連した技術・サービスなどを活用した新たなまちづくりに向けた協業」に関する最初の取り組みとなる。
NTTグループ(日本電信電話、東日本電信電話、NTTドコモ)、東急不動産は次世代通信構想「IOWN」の技術を使ったイベント「IOWN WEEK」を東京・渋谷で開催した。対象は事前に招待された関係者や報道陣。3社が6月7日に合意した「IOWN 構想に関連した技術・サービスなどを活用した新たなまちづくりに向けた協業」に関する最初の取り組みとなる。
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想とは、光ベースの技術を活用し、低消費電力や大容量、低遅延などを特徴とする情報処理基盤のこと。
東急不動産とNTTグループは6月、以下のような次世代社会をイメージしつつ、居住者・ワーカー・テナントの課題・ニーズを拾い上げ、より多くの人に利便性を感じてもらえるようなサービスを検討していると明かしていた。例えば、複数のオフィスでグローバルなオンライン会議を遅延なく多言語を用いた会話ができる。アパレル店舗なら遠隔地からでもリアルタイムに着せ替えなどの接客ができる――そんなイメージだ。
12月13日から15日まで複合施設「Shibuya Sakura Stage」(東急不動産所有区画)で開催されるイベントでは、NTT東日本/西日本が3月に提供を開始した遅延を抑えたサービス「APN IOWN 1.0」のユースケースが分かる。14日には報道陣にその一部が披露された。
イベントの具体的な内容の前に、まずはIOWNがどのような技術分野で構成されるのかを見ていきたい。
IOWNは3つの主要な技術分野で構成される
IOWNを構成する主要な技術分野は大きく3つある。1つ目は通信の部分であるAPN(All Photonics Network)。ネットワークから端末までエンドツーエンドで光通信を行う。2つ目がコンピューティングの部分であるDTC(Digital Twin Computing)だ。実世界とデジタル世界の掛け合わせによる未来予測や最適化を実現するものとなる。3つ目がそれらをつなぎ制御するCF(Cognitive Foundation)だ。それらに要素技術である光電融合技術を加えたものがIOWNのフレームワークだ。
このうち、イベントではAPN IOWN 1.0というAPNのサービスを活用した。残り2つのDTCとCFは技術研究段階で、サービスとしては提供されていないため、この記事での詳細な説明は控えたい。
APNは「通信ネットワークの全区間で光波長を占有する」が、これだけ聞くと、現在の光ファイバーと何ら変わらないのではないか? と思われるかもしれない。しかし、データセンターや通信設備収容ビル、オフィスなどを結ぶ従来の光ファイバー通信では、その途中で電気光変換を行っているため、遅延が発生してしまう他、電力を効率よく使えず、多くの電力を消費してしまうという。
これを光のダイレクトパスに変換するのがAPNサービスであり、結果として従来よりも大容量・低遅延、そして将来的には低消費電力を実現するネットワークを形成できるという。電車に例えると、従来が何度も電車を乗り換えているのに対し、APNは直通電車で高速かつ効率よく目的地へ行けるようなイメージだ。
データを光のまま運ぶAPNであれば、「遅延200分の1、伝送容量125倍、消費電力100分の1」という指標を目指せるという。
関連記事
- 100Gbpsの高速/大容量、低遅延 NTT東西が全区間光通信「APN IOWN1.0」商用化へ
NTT東日本、NTT西日本は3月3日、IOWN構想の実現に向けた商用サービス「APN IOWN1.0」の商用化を発表した。100Gbpsの高速/大容量通信を低遅延、ゆらぎなく提供するもので、3月16日に販売を始める。 - 「docomo Open House'23」で披露された最新技術 6G時代のコミュニケーションから、触覚共有、羽根のないドローンまで
オンラインで開催中の「docomo Open House'23」に先駆けて、報道陣に、リアル会場での展示を公開。5Gやその次の世代の通信規格「6G」に向けたネットワーク技術、昨今注目されているメタバースに関する新たな取り組みも披露。触覚を再現する人間拡張の新たな取り組みも興味深かった。 - 宇宙に自律的な通信インフラを ドコモ5G Evolution & 6Gの取り組み
「ワイヤレスジャパン 2022」が5月25日から27日まで開催された。26日にNTTドコモの常務執行役員(CTO) R&Dイノベーション本部長の谷 直樹氏が講演。「サステナブルでWellbeingな社会の実現に向けて」と題し、5G、さらに6Gに向けたドコモの取り組みを紹介した。 - 6G時代は「テレパシーがSFの世界でなくなる」 ドコモが掲げる“人間拡張基盤”とは
ドコモの最新技術を紹介する「docomo Open House'22」が開幕。同社は、6Gに向けて空、宇宙にエリアを広げる取り組みを続けている。人間の感覚をリアルタイムで伝え、保存できる「人間拡張基盤」も掲げる。 - 「NTT東西とドコモを統合する考えはない」 NTTが“NTT法の在り方”について意見表明
NTTが10月19日、NTT法の在り方について、同社の考えを表明した。NTT法を巡っては、政府がNTT法の廃止を含めた見直しについて議論をしている。NTTは「公正競争はNTT法ではなく、電気通信事業法で規定されている」と主張する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.