「Galaxy S24」はAIでスマホの使い勝手を刷新 Google/Microsoftとの“等距離外交”も強みに:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
サムスン電子が新たに発表した「Galaxy S24」シリーズでは、新機軸としてAIを全面的に打ち出している。一連の機能をまとめた「Galaxy AI」は、Googleが下支えをしている。同モデルからは、2大プラットフォーマーとの等距離外交で差別化を図るサムスン電子の戦略も透けて見える。
Galaxy S24シリーズは“オープンコラボレーション”の集大成
さらに、Galaxy S24シリーズは、Google検索の新機能である「かこって検索」にも先行的に対応している。これは画面上に表示されたさまざまな物や文字を特定し、検索する機能のこと。ホームボタンやナビゲーションバーを長押しすると検索モードになり、画面の一部を丸で囲んだり、線を引いたりすることで指定でき、その結果が画面下部に表示される仕組みだ。
また、この検索結果に対し、質問を入力すると、生成AIによる回答も表示される。これは、Googleが日本や米国などで導入している「SGE(生成AIによる検索体験)」を応用したもの。Galaxyの独自機能ではなく、Androidの機能だが、Galaxy S24シリーズには発売時点でかこって検索が実装されている。Googleによると、この機能に最速で対応するのは、自社のPixel 8シリーズとサムスン電子のGalaxy S24シリーズだけ。GalaxyをAndroidの“代表”として、自社端末と同様に優遇しているというわけだ。
前回の連載で取り上げたように、Androidのファイル共有機能である「ニアバイシェア」も、サムスン電子の「クイック共有」に統合される。統合は2月からの予定だが、米国などで1月31日に発売されるGalaxy S24シリーズには、既にニアバイシェアが搭載されていない。クイック共有を立ち上げた際には、Galaxyだけでなく、Androidスマホ全体とデータを共有できる旨が案内される。GoogleのAIモデル採用やかこって検索の先行導入、さらにはニアバイシェアのクイック共有との統合など、サムスン電子はGoogleとの関係性をさらに縮めてきたように見える。
一方で、同社はかつて、Microsoftとの連携をアピールしていた時期もあった。Galaxyシリーズも、ギャラリーアプリには「OneDrive」が、Samsung Notesには「OneNote」が組み込まれており、Androidが標準で採用する「Googleフォト」や「Google Drive」とは連携しない。GalaxyシリーズがプリインストールするOfficeアプリも、Microsoftのもの。一時は検索エンジンを「Bing」に変更することも検討していたと報じられており、GoogleのAIを全面的に採用したことには意外感もあった。
サムスン電子はMicrosoftとの提携を強化しており、OneDriveやOneNoteをGalaxyのプリインストールアプリに組み込んでいた。写真は19年8月に開催されたUnpackedの様子。MicrosoftのCEO、サティア・ナデラ氏もゲストとして登壇していた
とはいえ、メーカーはある意味中立な立場。サムスン電子が2大プラットフォーマーと“等距離外交”を展開していると考えれば、その理由も説明がつく。Googleだけに依存していると、同社の純正スマホであるPixelを筆頭にした他社のAndroidとの差異化が難しくなる。実際、Galaxy AIも一部にPixelとの重複がある。また、PCなどとの連携を踏まえると、WindowsやOfficeに強いMicrosoftとタッグを組んだ方がAppleに対抗しやすくなる。Galaxyの中に、GoogleとMicrosoftを共存させることで、端末の特徴やGalaxyとしてのエコシステムの特徴を打ち出しやすくなっている。
サムスン電子の盧氏は、Unpackedの冒頭で「オープンなコラボレーションを通じて、意義のあるイノベーションを提供する」と語っていたが、ここには、GoogleやMicrosoftといったプラットフォーマーも含まれる。まさにこれは、年間で2億台以上のスマホを販売するサムスンならではの戦略で、他社が追随するハードルは高い。Galaxy S24シリーズは、こうしたオープンコラボレーションの集大成と捉えることもできる。Galaxy AIは2023年に発売されたハイエンドモデルにも展開される予定で、Galaxy S24シリーズにとどまらないサムスン電子の新たな強みになりそうだ。
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