携帯電話ショップが“にぎわっているのに”閉店? 「売れない」以外の構造的な理由:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(1/3 ページ)
最近、客入りの良い携帯電話ショップ(特にキャリアショップ)が突然閉店する事例が見受けられる。なぜ、もうかっていると思われる店舗をあえて閉店(あるいは営業譲渡)してしまうのだろうか。理由を説明しよう。
前回、筆者の自宅近くの携帯電話ショップ(コーナー)が閉店したことについて、そのショップに勤めていた販売スタッフから話を聞いた。
この記事への反応として、「最近は携帯電話に関わる手続きの多くをWeb(インターネット)や電話でできるようになったからでは?」という指摘があった。それは事実の1つで、昨今は端末の購入を含めてWebや電話でできる手続きが増えた。料金プランも比較的シンプルになったこともあり、携帯電話ショップや家電量販店に出向く機会が減ったという人も少なくないだろう。
しかし、数こそ少なくなったが店舗(特にキャリアショップ)でないとできない手続きも残っている。また、プランがシンプル化した反面、購入プログラムが煩雑になったため、「しっかりと説明を聞いて契約(購入)をしたい」というニーズも根強い。
そういう時に「いざショップへ」と店舗に出向いてみたところ、ショップがいつの間にか閉店していた――最近、そんな話をよく聞く。この現象は大手キャリアの代理店(※1)となるキャリアショップで顕著で、手続きのできるショップが徒歩圏からなくなり、鉄道やバス(あるいは自家用車)で移動しなければたどり着けなくなるなんていうケースもある。
家電量販店や併売店(複数キャリアを取り扱う代理店)における店舗(コーナー)の縮小や閉鎖は、比較的シンプルに「端末(回線)売れなくなった」という理由が大きい。しかしキャリアショップの場合、客入りのいい「にぎわっている店舗」でも閉店に至ることが珍しくない。
なぜ、にぎわっている店舗まで閉店してしまうのか――今回の「元ベテラン店員が教える『そこんとこ』」では、その背景について解説したい。
(※1)数は少ないが、NTTドコモ以外にはキャリアが直営するキャリアショップもある。ドコモも子会社を通してドコモショップを運営しているが、あくまでも「代理店の1つ」という扱いで、特別な要素は一切ない
筆者の自宅近隣にある“大型”キャリアショップも突然閉店
携帯電話に関わる仕事をしていると、「市場調査」と称して他のショップに出向いて携帯電話を購入(契約)したり、プラン変更などの手続きをしてみたりすることが多くなる。自分が店舗勤務のスタッフだったとしても、である。
販売現場を離れ、キャリアやメーカーが行う発表会を取材して記事を書く立場となった筆者だが、「販売の最前線は店舗である」という考えは変わらない。ゆえに、今でも定期的に複数の携帯電話販売店に足を伸ばし、情報を収集するようにしている(だからこそ、店員にインタビューできるのだが)。
幸い、筆者の自宅周辺にはキャリアショップや家電量販店が多く出店しているので、時間をあまり掛けずに情報収集を行えた……のだが、最近ちょっとした(考えようによってはちょっとどころでない)異変があった。
スーパーマーケットにテナントとして出店していた併売店が閉店したことは前回の記事で触れたが、それ以外にも客入りの良かったキャリアショップ(店舗A)が突然閉店したり、別のキャリアショップ(店舗B)で「代理店が変わるので、一部の手続きを行えない」状態になったりしたのだ。
店舗Aは交通量の多いバイパスに面していて、店舗面積は広く、カウンター(窓口)数も多かった。いつも混雑しているのだが、カウンターが多いので待たされることはほとんどない。良く売れている店舗という印象だったが、それでも突然閉店してしまった。
一方、店舗Bは店舗Aと比べると大きくはないものの、客入りは良好で、常に店内に客がいる状況だった。昨今の携帯電話市場を考えると、十分ににぎわっている店舗だ。しかし、旧代理店が店舗運営を諦めて、別の代理店に経営権を譲渡することになってしまった。
また、前回の記事でも触れた通り、家電量販店の携帯電話コーナーやショッピングモール内にテナント出店している携帯電話ショップが縮小/撤退しているケースもある。こちらも、一見するとにぎわっていたのに……という事例も珍しくない。
郊外の家電量販店では、キャリアショップで行える手続きの一部(料金の支払い、住所変更、プラン変更、故障修理受け付け)を代行する窓口を見かけることもあったが、いつの間にかその窓口がなくなり、代わりにSIMロックフリースマホやスマホアクセサリーの売り場に転換されていた、なんてこともある。
暇そうに見えない、むしろ客で賑わっている店がなくなったり、地域唯一の携帯電話ショップがなくなってしまう――そんなことはなぜ起こるのだろうか。
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