Evernote日本法人の解散、「アプリ終了」との誤解につながる サービス改悪、告知不足がユーザー離れに拍車
オンラインメモサービス「Evernote」の日本法人、エバーノート(東京・中央区)が解散する。政府の機関誌である官報で公表した。突然の公表にユーザーからは戸惑いの声が相次ぐ。中には「サービス終了」とのデマもある。
オンラインメモサービス「Evernote」の日本法人、エバーノート(東京・中央区)が解散する。法律、政令などの広報に利用される官報で公表した。突然の公表にユーザーからは戸惑いの声が相次ぐ。中には「サービス終了」とのデマもある。
Evernoteは2000年にステパン・パチコフ氏が立ち上げた。スマートフォンやPCの普及が進むに連れ、メモなどのテキストだけでなく、画像、動画、音声、PDFなど、多様なファイルを扱えるようになり、Evernoteの名は世に知れ渡ることになった。
2010年3月には日本語対応を果たし、同年6月には日本法人のエバーノートが設立された。さらに、iモード対応のフィーチャーフォン(同年に主流だった携帯電話)でもEvernoteを使えるなど、利便性が高まった。
2014年には日本経済新聞社から2000万ドル(当時で約23億円)の出資を受け、Evernoteで日経記事の表示や引用が可能になった。
日本市場に力を注いできたEvernoteだったが、2023年1月、Evernoteはイタリアのテクノロジー企業、Bending Spoonsによって正式に買収された。Bending Spoonsは動画や画像の編集ツールを提供する企業だ。
同じ年の11月には無料プランの仕様変更を発表。ユーザーが作成できるノートブックの数は最大250から1つに制限され、作成できるノートの数は最大10万から最大50へと大幅に減った。これが反感を生み、結果として「改悪」と評されることになった。
これまでの動きの中には、「Evernoteヘルプと学習」などで案内される場合があり、ユーザーへの安心感につながっていたように思う。
今回、筆者が大きく注視したのは「Evernoteの買収に関するよくある質問」というページだ。このページにはBending Spoonsによる買収について記載されているが、概要のすぐ後に「Evernoteはなくなりませんか?」という小見出しがある。
これが意味するものは先にも述べた安心感だ。買収に関する発表や案内は通常、ニュースリリースやプレスリリースとして、メディア向けに送付されるが、Evernoteは日本のユーザーに対して、日本語で丁寧に買収の概要と、ユーザーが気になるであろう疑問に答える形で、Evernoteの買収に関するよくある質問というページを公開していた。
日本のユーザーを大切にしていたはずのEvernoteだが、日本法人の解散についてはユーザーやそうでない人が閲覧できる「お知らせ」には掲載されていない。Evernote Japanの公式Xアカウント(@EvernoteJP)を見ても日本法人の解散に関する案内は見当たらない。
日本法人の内部の動きは当然、外の人間からは見えないが、「EvernoteにAI検索がやってきました」という投稿を最後に同アカウントによる更新は途絶えている。あるタイミングで広報活動がストップしているようにも見える。
今回、明らかになった日本法人の解散を受け、一部のユーザーが「サービス終了なのか?」「使えなくなるのではないか?」などという疑問をXで発信しているが、2024年4月26日21時の時点でサービス終了の案内はなく、App Store/Google Play/Microsoft Storeからダウンロードして利用できる。
ただ、一度貼られた「サービス改悪」のレッテルは簡単に剥がせないことに加え、ユーザーへの案内が不足したことがユーザー離れに拍車を掛けそうだ。
2024年4月27日4時5分追記
Evernote公式Xアカウント(@evernote)が日本法人の閉鎖とサービスの継続提供について発表した。
【修正:4月28日20時40分】初出時、Bending Spoonsを「欧州のテクノロジー企業」と説明しましたが、正確にはイタリアに本社を置く企業であるため、「イタリアのテクノロジー企業」としました
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