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ライカが長年、愛されるブランドであり続ける理由――カメラファンの聖地「ライツパーク」に行ってみた石川温のスマホ業界新聞

ドイツの老舗カメラメーカー「ライカ(Leica)」の本拠地には、「ライツパーク(Leitz Park)」という展示館がある。常に順風満帆とはいえなかった同社の歩みと奥深さを改めて知ることができる。

 ドイツの老舗カメラメーカー「ライカ」の本拠地、ドイツ・ウェッツラーにある「ライツパーク」を取材することができた。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2024年9月28日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。

 ライカの歴史や製造工程を学べる場所だ。個人的にはライカとは、シャープとソフトバンクと共に共同開発された「Leitz Phone」からのお付き合いとなるが、長い歴史を持つメーカーの苦難の数々と、何とか耐え忍んできた経緯を知ることができ、ライカブランドの奥深さを知った次第だ。

 ライカには過去に何度も経営危機があったが、特に2000年代前半の窮地から復活に向けてデジタル化への変革を進めたことで、何とか今のポジションを築けたというのが印象的であった。ただ、単なるデジタル化だけでなく、カメラ事業への依存体制を脱するかがライカブランドが生き残るカギとなってきた。

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 最近は、二度と経営危機に陥らぬよう、スマートフォンシフトが明確だ。

 2016年にファーウェイと技術提供を発表し、「HUAWEI P9」を投入。当時、珍しかったダブルレンズ、しかも片方はモノクロセンサーを搭載することで、光の陰影が強調され、力強い写真に仕上がるなどの特長があった。

 P9ユーザーが撮影したことがわかるウォーターマーク付きの写真がSNSで共有されることで、ライカブランドを世間に知らしめた感があった。

 ファーウェイとの関係は上手くいっていたように思えたが、アメリカによる禁輸措置によって、すぐに提携先をXiaomiに切り替えた。一方で、ソフトバンクとシャープとの提携により、日本市場限定で「Leitz Phone1」が発売されたのであった。

 Xiaomiとはカメラを一緒に技術開発していく関係であったが、Leitz Phoneに関してはライカ自身が本体などのデザインなども監修。高級感のあるデザインで日本だけでなく世界から注目を浴びていた。

 ライツパークには過去の製品が数多く展示されていたが、Leitz Phoneも本流のカメラとは別のところにひっそりと展示されており、胸が熱くなった。Leitz Phoneの展示はあるものの、ファーウェイやXiaomiの製品は一台もなかったということは、あくまでLeitz Phoneはライカがハードも手がけている一方でファーウェイやXiaomiは「技術協力しているだけ」というスタンスの表れなのだろう。

 ライカパークにあるミュージアムは単に歴史を学ぶというよりも、写真撮影の仕組みや、ライカで撮影したプロのフォトグラマーによる写真を再現できるブースがあったりと、意外と楽しめる展示が充実していた。

 ライカではiPhoneユーザーに向けにライカらしい写真が撮れる「Leica LUX」といったアプリを提供。ライカの画質に興味を持ってもらいつつ、ライカのエコシステムに入ってもらえるような取り組みにも注力している。

 ライカパークには他にも古くなったカメラを修理してくれるクラシックストアもあった。説明員によれば「亡くなった父親の遺産からライカのカメラが出てくるなんてことがある。どんなに古いカメラでも子供が再び使ってもらえるよう修理体制を充実されている」とのことであった。

 過去の製品をいつまでも使える環境を整備しつつ、新しい顧客層を広げようと努力を続けることが、メーカーにとって生き残るために重要なことだと改めて気がつかされた。

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