シャープの「AQUOS R9 pro」は“カメラを超える”スマホ 3眼カメラやシャッターキーの意図、19万円台でも投入する意義とは?(1/3 ページ)
予想外の登場となったシャープの最上位スマートフォン「AQUOS R9 pro」。カメラのハードウェアに最高峰のものを採用しただけでなく、撮影体験を向上させる使い勝手の工夫も随所に盛り込んでいる。7月に発売した「AQUOS R9」がヒットした中で、なぜあえて19万円台の最上位モデルを出すのか。
「恐らく多くの方が予想されていなかったであろうAQUOS R9 pro。やっぱり作っちゃいました」
10月29日の発表会で、シャープ ユニバーサルネットワークビジネスグループ長 兼 通信事業本部 本部長の小林繁氏は笑顔で“予想外”のフラグシップスマートフォン「AQUOS R9 pro」を披露した。
「プロ、できました」のメッセージとともに「AQUOS R9 pro」披露するシャープの小林氏(右側の機種は「AQUOS sense9」)。AQUOS sense9の発表は既定路線だが、AQUOS R9 proの発表は予想外だった人も多かったのではないだろうか
2024年、スマートフォンAQUOSのフラグシップモデルは「AQUOS R9」のみで、2023年に発売した「AQUOS R8」と「AQUOS R8 pro」という2軸のフラグシップ戦略は早々に見直された……と思われた。小林氏は2024年5月にAQUOS R9を発表した際に「proは今期、発売しない」とコメントしており、その「今期」は2024年度を指すと考えるのが自然だろう。しかし、AQUOS R9との同時発表はかなわなかったが、時間差でサプライズ発表される形となった。
AQUOS R9 proは、カメラ機能をとことん突き詰めた、これぞシャープのフラグシップと呼ぶにふさわしいモデルに仕上がっている。約1型センサーを採用した広角カメラに、超広角カメラと望遠カメラを含めた3眼カメラが大きな円形台座に並ぶ様子は、まさにデジタルカメラそのもの。カメラのハードウェアに最高峰のものを採用しただけでなく、撮影体験を向上させる使い勝手の工夫も随所に盛り込んでいる。
通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 主任の今井啓介氏は「1型カメラをスマホに載せてきた先駆けのメーカーとして、シャープがたどり着いた答えは、『カメラを超えること』だった」と話す。これまでのRシリーズとは“別物”ともいえる仕上がりになったAQUOS R9 proの中身を見ていこう。
1型センサーをフルに生かすべく複眼カメラに 望遠カメラの性能も重視
AQUOS R6でライカ監修のカメラを搭載して以降、シャープはフラグシップモデルには「最高峰のレンズを1つ」搭載することにこだわってきた。しかしAQUOS R9 proでは、他のハイエンドスマホと同様に、広角、超広角、望遠という組み合わせの3眼カメラを採用している。これら3つのカメラ群を総称してライカの「バリオ・ズミクロン」とシャープは呼んでいる。
各カメラのスペックは以下の通り。
- 広角カメラ……有効約5030万画素、F1.8レンズ、焦点距離23mm相当、1/0.98型センサー、光学式手ブレ補正対応
- 超広角カメラ……有効約5030万画素、F2.2レンズ、焦点距離13mm相当、1/2.5型センサー
- 望遠カメラ……有効約5030万画素、F2.6レンズ、焦点距離65mm相当、1/1.56型センサー、光学式手ブレ補正対応
今井氏は3眼にした意図について「望遠と(超)広角を付けて、あらゆるシーンで楽しんでいただきたい。そういう思いで3眼にしている」と話す。
これまでのAQUOS Rシリーズは、0.7~6倍といったズーム域を1つのカメラが担っていた。初期状態では1倍のカメラが起動するが、0.7倍の超広角が本来のスタート地点になる。いうなれば、センサーサイズの大きな超広角カメラを1つ備えていたので、1倍だとデジタルズーム扱いになり、1型センサーをフルに生かせていなかった。
そこで今回、超広角と広角のカメラを分けることで、「標準域で1型(1/0.98型)を全て使えるようになる。標準(広角)の1倍で撮ったときの画質が大きく変わる」と小林氏は話す。光学式手ブレ補正に対応したことも進化したポイントだ。
加えて、注目したいのが望遠カメラだ。ハイエンドスマホで望遠カメラ自体は珍しいものではないが、AQUOS R9 proの望遠カメラは1/1.56型という大きいセンサーを備えており、光学式手ブレ補正にも対応する。望遠の65mmという焦点距離は人物撮影をする際、自然に見る視野とほぼ同じことから、ライカが推奨するものだという。ポートレート撮影に適しており、広角レンズで見られる顔の変形やゆがみがなく、背景をぼかす望遠効果も得られる。
この望遠カメラは、他にライカカメラを搭載したスマートフォンとの差別化にもなる、と通信業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 課長の清水寛幸氏は話す。ただし光学ズームは2.8倍まで。デジタルズームを活用すれば20倍までのズームは可能だが、高解像処理によって2.8倍以降のズームでどこまでキレイに撮影できるかは気になるところだ。
超広角カメラでは122度の画角で撮影でき、マクロ撮影にも対応する。
画像や映像の処理にAIを活用しているのも特徴だ。光源を測定することでホワイトバランスの精度を上げる「14chスペクトルセンサー」をAQUOS R8 proに搭載したが、AQUOS R9 proではAIが被写体と周辺の光を分析することで、難しい光源下でも正確なホワイトバランスで撮影できるという。
Dolby Visionでの動画撮影では、フレームごとに最適な明るさや色情報を付与することで、より鮮やかな動画撮影が可能になる。
カメラ機能からは離れるが、AI機能として、Googleの対話型AIサービス「Gemini」を内蔵しており、電源キーの長押しで呼び出せる。画面内でかこった内容から検索ができる「かこって検索」も利用可能だ。シャープ独自の機能としては、留守番電話の内容を要約したり、通話時のキーワードをもとにテキストや画像でまとめたりしてくれる「電話アシスタント」機能も用意する。
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