「AQUOS R9」が進化したポイントと“proなし”の理由 シャープが考えるハイエンドスマホの売り方(1/2 ページ)
シャープが、5月9日にスマートフォンのハイエンドモデルとして「AQUOS R9」と、エントリーモデルの「AQUOS wish4」を同時に発表。シャープで製品の企画などに関わる4人が登壇し、製品の特徴や戦略を語った。どちらも日本で販売されるが、グローバルモデルである他、proの存在はどうなるのだろうか……。
シャープが、5月8日にスマートフォンのハイエンドモデルとして「AQUOS R9」と、エントリーモデルの「AQUOS wish4」を同時に発表した。アナウンスのあったSIMフリーモデルの想定価格は、AQUOS R9が10万円前後(税込み、以下同)で、AQUOS wish4が3万円台前半だ。今回は、AQUOS R9で進化したポイントをまとめる。
8日の発表会で登壇したシャープの開発陣。左から、通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 主任 福永萌々香氏、通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長 中江優晃氏、通信事業本部 本部長 小林繁氏、通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 係長 篠宮大樹氏
AQUOS R9はスピーカーを強化、生成AIで留守録を要約する機能も
シャープといえばディスプレイが強みで、技術力はテレビだけでなく、スマートフォンでも発揮される。ディスプレイの「明るさを追求した」と通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 係長の篠宮大樹氏がアピールした、ハイエンドモデル「AQUOS R9」では視認性に力を入れ、スペックでは表現しづらい体験を重視している。
ただ、「一口に明るさといっても、点の明るさと、面の明るさがあり、それぞれに役割がある」(篠宮氏)という。点の明るさとは文字通り「部分的に明暗差をつける」(篠宮氏)ことを指しており、HDR動画で効果を発揮する。面の明るさは「画面全体を強く光らせる」(同氏)という意味で、「くっきりとした美しさだけでなく、屋外や窓際の強い日差しの下でも、圧倒的に見やすい表示に」(同氏)なるようにしたという。
ディスプレイは6.5型のフルHD+(1080×2340ピクセル)のPro IGZO OLEDであり、リフレッシュレートは1〜240Hzの可変駆動に対応している。
音質についても強化した。通信事業本部 本部長の小林繁氏いわく、「海外では日本と違って、電車内でもスマートフォンのスピーカーで音楽を再生する人がいる」とのことで、「スマートフォンAQUOS史上最大サイズのボックススピーカーを採用した」(篠宮氏)ことがポイントだ。スピーカーは受話口の部分と口元の部分に配置したことで、従来モデルよりステレオ感が増しているという。篠宮氏は「少し離れた場所で料理や家事をしながら、AQUOS R9のスピーカーで音を聞いても、その迫力を感じられる」と自信を見せる。
音に関してもう1つアップデートがある。それはスマートフォンの基本機能の1つである電話だ。昨今のトレンドでもある生成AIが、AQUOS R9にも実装されたことで、留守番電話に録音された内容をAIが要約し、利用者が要件を一目で確認できるようになった。
この留守番電話は通信キャリアが提供している留守番電話サービスではなく、端末内に備わる簡易的な伝言メモのような機能だという。AQUOS R9では電話を受けたり、大手通信キャリアの留守番電話サービスセンサーへ接続したりせずに、電話をかけてきた相手の発話内容が要約される。
なお、留守番電話の内容要約はプロセッサにオンデバイスの生成AIをサポートする「Snapdragon 7+ Gen 3」を採用したからこそ実現した機能で、もっといえば同プロセッサが対応する大規模言語モデル(LLM)の「Llama 2」によって成り立つ。処理は「端末内で完結できる」(通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の中江優晃氏)ため、プライバシーに配慮された仕様となっている。
一方で、中江氏は「発表時点でお約束はできない」としつつも、「お客さまにとって価値があれば、生成AIを用いた機能の拡充はあり得る」との考えを示しており、「まったく進化しない、という意味ではない」と補足した。
カメラは光学式手ブレ補正に対応、被写体の追尾もスマートに
カメラ機能も拡張し、AQUOS R9では光学式手ブレ補正に対応した。また、被写体が柱などの障害物に隠れてしまっても、AIが被写体の動きを予測して追尾することも可能になった。
他にも、スマートフォンAQUOSとして初めて「ナイト動画」を撮影できるようになり、暗所でも明るく撮影できるようになったことに加え、背景のぼかし具合を調整して、被写体を強調した映画さながらの「シネマティック動画」も撮影可能になった。
これらの撮影体験を支えるアウトカメラは、標準カメラと広角カメラで構成される。どちらも有効約5030万画素だが、標準カメラはF1.9で画角が84度のレンズ、広角カメラはF2.2で画角が122度のレンズを採用する。インカメラは、有効約5030万画素でF値が2.2、画角が84度のレンズを搭載。ライカが監修しているが、イメージセンサーのサイズは「AQUOS R8」「AQUOS sense7」と同じ1/1.55型で、レンズは「Hektor(ヘクトール)」を採用している。
ゲーミング関連機能も強化し、スマートフォンAQUOSとして初めて「ベイパーチャンバー」を採用した。長時間の動画撮影やプロセッサに負荷のかかる作業をする際、安定したパフォーマンスを期待できる。「いつでも心地よいパフォーマンスで、心弾む映像体験を届ける」(篠宮氏)ことを目指した。
日本ならではのよさを発信すべく、デザインを刷新
ボディーのデザインも見直し、見たときの印象が大幅に変わった。AQUOS R8と「AQUOS R8 pro」は背面の上部に大きなカメラレンズがあるが、AQUOS R9では本体上部の左上の台座にカメラ、AQUOS、LEICAのロゴが収められている。この台座は「円でも楕円(だえん)でもない自由曲線」(中江氏)になっており、「カメラもそろいすぎない絶妙な配置」とした。「品位のあるいでたちの中に、なぜか気になる違和感」(同氏)によって、愛着を持ってもらうことを目指した。
カメラとその台座はAQUOS R9の顔ともいえる部分になりそうだが、1986年に劇場で公開されたスタジオジブリ制作アニメの「天空の城ラピュタ」に登場する「ロボット兵」の顔に似ており、この一風変わったデザインがユーザーに受け入れられるのかが気になる。
デザインの監修を担当したのは、三宅一成氏が設立したデザイン事務所「miyake design」だ。AQUOS R9はグローバル(詳細は後述)でも同時に発売することから、「日本ならではのよさをどのように発信していくのか」をmiyake designと追求した。
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