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「AQUOS R9」で起きた“3つの異変” Proなし、デザイン刷新、実質値下げの意図を聞く(1/3 ページ)

シャープのフラグシップスマートフォン「AQUOS R9」が、7月中旬以降に発売される。RシリーズはスマートフォンAQUOSの最上位モデルであり、最先端の技術やスペックを盛り込んでいる。しかし2024年は“異変”が起きている。Proモデルがないこと、デザインを刷新した意図をシャープに聞いた。

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 シャープのフラグシップスマートフォン「AQUOS R9」が、7月中旬以降に発売される。RシリーズはスマートフォンAQUOSの最上位モデルであり、最先端の技術やスペックを盛り込んでいる。

AQUOS R9
7月中旬以降に発売予定のフラグシップスマートフォン「AQUOS R9」

 しかし2024年は“異変”が起きている。2023年、AQUOS Rシリーズはお手頃価格のハイエンド「AQUOS R8」と最高峰のスペックを備える「AQUOS R8 pro」の2モデルに分けた。2024年もこの流れを踏襲するのかと思いきや、発表されたのはAQUOS R9のみ。5月8日の発表会では、「今期、AQUOS R9 Proは投入しない」ことが明かされた。

 もちろん、AQUOS R9もライカ監修のカメラやSnapdragon 7+ Gen 3、12GBメモリ、より明るくなったPro IGZO OLEDなど、ハイエンドと呼ぶにふさわしいスペックを有している。ただ、Snapdragon 8シリーズや1型センサーのカメラは見送られており、Proを求める人にとっては物足りないかもしれない。

AQUOS R9
AQUOS R8シリーズではR8とR8 Proの2モデルに分けて展開していた

 ポジティブな変化もある。端末価格が高騰する中で、AQUOS R9はオープンマーケット向けモデルが10万円前後(税込み、以下同)という価格を予定している。

 ハードウェアで大きく変化があったのがデザインだ。三宅一成氏が設立した「miyake design」監修によるデザインを取り入れて、従来のAQUOS Rシリーズから一新した。背面がよりプレーンな印象になり、カメラの台座に「円でも楕円(だえん)でもない自由曲線」を取り入れた。

 今期、なぜProがなく、安価な価格を実現できたのか、なぜデザインを変えたのか。5月8日の発表会後に行われたグループインタビューでシャープに聞いた。質問に答えたのは、通信事業本部 本部長の小林繁氏、通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の中江優晃氏、通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 課長の清水寛幸氏の3人。

パフォーマンスと価格の絶妙なバランスを取った

 まず気になるのが、やはり「Proがない」理由だ。中江氏は、パフォーマンスと価格の絶妙なバランスを取ったことを説明する。「パフォーマンスは大事です。その性能を出すためにコストで頑張る。値段ありきでは考えていません。ハイエンドスマートフォンとして、われわれが想定するユースケースに耐えうる性能を持ちながら、価格的にお手頃という絶妙なバランスを取りました」

AQUOS R9
中江優晃氏(写真は5月8日の発表会のもの)

 「実際、意識調査を見ると、何が何でも一番いいチップでないといけないという人は、数年前に比べると激減しています」と小林氏。「本当に普段快適なら、チップの品番にはこだわらない、8系にこだわらない」という人が圧倒的に増えてきているという。

AQUOS R9
プロセッサにはSnapdragon 7+ Gen 3を搭載。海外でのリリースから早いタイミングでの発表にこぎ着けた

 性能と価格の関係は、「性能が倍になるからといって値段が倍になるわけではない」ことが難しい小林氏は言う。性能が上がると価格も上がるが、その幅は緩やかなカーブになる。一方、需要と価格の関係でいうと、「お客さまの需要は、あるところでは急激に下がるようなカーブをしている」と小林氏。「性能と価格」「需要と価格」のカーブが交差する絶妙なポイントを探りながら、スペックと価格を決めてきた。

AQUOS R9
AQUOS R9の主なスペック。価格との絶妙なバランスにこだわった

 その結果、SIMフリーモデルの価格は10万円前後を実現した。昨今の円安状況を鑑みても、この価格は2024年のハイエンドスマホとしては十分安い。Snapdragon 8 Gen 3を搭載した他社のフラグシップ機を見ると、メーカー直販価格はXperia 1 VIが18万9200円から、ROG Phone 8が15万9800円から、Xiaomi 14 Ultraが19万9900円。もちろんプロセッサの差はあるが、AQUOS R9の価格が10万円だとすると、他社のフラグシップ機より約6万円〜10万円安い。Proがないことが取り沙汰されているが、10万円前後の価格は大きな武器になるだろう。

AQUOS R9の「10万円前後」は実質的な値下げ

 さらに、2023年に発売したAQUOS R8のSIMフリーモデルが13万円台後半だった。2023年からさらに円安が進んだ現状を考えても、AQUOS R9の10万円前後は特筆すべき安さだといえる。中江氏は「自分たちの中でかなり頑張りました」、清水氏は「10万円のハイエンドは覚えやすいので、そこは意識しました」と振り返る。

 小林氏はスマートフォンでは「パッケージング力が問われる」と前置きした上で、以下のように話す。

 「一般的に、プロダクトのライフサイクルは、成長期にはより優れたもので差別化を図りますが、成熟期に入ると、価格と機能のバランスがとても重要になります。言葉は悪いですが、Snapdragon 8シリーズを搭載して20数万円ですという商品が出ると、どう思うか」

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小林繁氏(写真は5月8日の発表会のもの)

 同時期にソフトバンクからは「Leitz Phone 3」が発売されたが、こちらの製品はAQUOS R8 proがベースになっている。プロセッサにSnapdragon 8 Gen 2を搭載するハイエンドモデルで価格は19万5696円(税込み)。決して安くはないが、「20万円切ることにはこだわった」(小林氏)という。

 AQUOS R9を“値下げ”できた要因は、「プロセッサの影響は大きい」と清水氏。仮にSnapdragon 8 Gen 3を搭載していたとしたら、Galaxy S24と同じく13万〜14万円程度の価格になっていたのではないだろうか。もちろんそれだけでなく、「カメラセンサーなど、いろいろ頑張りました」と小林氏。

 AQUOS R9は通信キャリアではNTTドコモとソフトバンクが発売するが、キャリアが販売するモデルについては、各社の端末購入サポートを適用できる。48回払いで購入し、1年や2年使用した後に返却すると、残りの割賦が免除されるため、よりお得に運用できる。そうしたキャリアはメーカーにとって「最大のパートナー」(小林)といえる。電気通信事業法で端末価格の割引が規制される中、「お客さんの負担を軽減されるためにいろいろなアイデアを出されている。もっと大きな影響が出るとことで、応えてくださっているので、感謝しかない」と小林氏は述べる。

 今期のAQUOS R9がバランスに優れたモデルであることは理解できるが、それでもProが欲しいという声は存在する。シャープとしても、今後Proをやめるわけではなく、そのニーズがあることは認識している。「お客さんが今回、X上でProはないのか、と言われているので、ありがたい。期待してくださっているお客さんがいらっしゃるなと。ブランドを立たせるためにフラグシップが必要だという意見は社内でも強いです」(小林氏)。

 2023年にAQUOS R8とAQUOS R8 proの2ラインで展開したことで「お客さんの層は広がった」(小林氏)。「当たり前ですけど、1機種よりも2機種で展開した方が、商業的な数値で見ても結果はよかった。やる意味はありました」(中江氏)

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