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AQUOS R8シリーズが「無印」と「pro」に分かれたワケ 進むハイエンドスマホの二極化

シャープが2023年夏モデルとして、2つのハイエンドモデル「AQUOS R8 pro」と「AQUOS R8」を投入する。AQUOS Rシリーズは原則、年に1機種のペースで展開してきたが、なぜ2機種に分けたのか。ハイエンドスマホの二極化は今後も続きそうだ。

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 シャープが2023年夏モデルとして、2つのハイエンドモデル「AQUOS R8 pro」と「AQUOS R8」を投入する。これまで、AQUOS Rシリーズといえば、年に1機種のペースで投入しており、別のバリエーションとして投入したのはコンパクトモデルの「AQUOS R compact」「AQUOS R2 compact」のみだった。

AQUOS R8
最先端の技術を惜しげなく投入したフラグシップモデル「AQUOS R8 pro」と、機能は必要十分でもパフォーマンスに妥協したくないという人に向けた「AQUOS R8」

 これまでは、無印の「R」がフラグシップの扱いだったが、2023年は「pro」を冠するAQUOS R8 proがフラグシップになり、無印のAQUOS R8が準フラグシップという位置付けになる。では、なぜハイエンドモデルを2機種そろえたのか。

フラグシップスマホが20万円を超えて手に届きにくい存在に

 シャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の中江優晃氏は「先代のAQUOS R7のコンセプトが『趣味をとことん楽しむ』だった。1型センサーのカメラやディスプレイサイズが大きくなり、かなり特化した仕様になった。(その結果、)残念ながら、非常に高額になり、ユーザーが気軽に手に取って使えるものではなくなった。趣味を楽しむニーズも大切にしながら、実用性を重視したハイエンドモデルを出すことで、2つのニーズを共存させたいと考えた」と説明する。

 ここ数年のAQUOS Rシリーズの価格(発売時、税込み)を振り返ると、2020年発売の「AQUOS R5G」はドコモが11万1672円、ソフトバンクが12万9600円、2021年発売の「AQUOS R6」はドコモが11万5632円、ソフトバンクが13万3920円だった。ここまでは、フラグシップモデルなら許容範囲といえる金額だが、2022年発売のAQUOS R7は、ドコモが19万8000円、ソフトバンクが18万9360円と大きく跳ね上がってしまった。これは、より高性能なカメラやプロセッサなどを搭載したことに加え、部材費の高騰も影響しているとみられる。

 AQUOS R8 proの価格も「AQUOS R7並みになる」(中江氏)見込みで、20万円に迫りそうだ。一方、AQUOS R8は「コンセプトに合った価格になるのではと期待している」と話し、AQUOS R5GやAQUOS R6と同程度になると予想する。

AQUOS R8
20万円に迫る価格になりそうなAQUOS R8 pro
AQUOS R8
どこまで価格を抑えられるかが注目のAQUOS R8

 ハイエンドモデルの価格高騰は、AQUOSに限った話ではない。メジャーなところではiPhoneも同様で、例えばiPhone 14 ProやiPhone 14 Pro Maxはストレージ容量によっては20万円を超えている。サムスンのGalaxyシリーズも、Galaxy S23 Ultraは20万円前後で販売されている。一方、iPhoneやGalaxyともに、無印の「iPhone 14」や「Galaxy S23」も併売しており、こちらは10万円台前半からの価格帯に収まっている。

 iPhone 14 ProやGalaxy S22 Ultraのような最上位モデルは、発売直後は指名買いのユーザーが購入して販売ランキングの上位につけるが、その勢いは長く続かない傾向にある。代わって長く売れているのはiPhone 14やGalaxy S22といった無印のハイエンドモデルになる。Galaxy S23シリーズは4月に発売されたばかりなので、現在はS23よりS23 Ultraがランキング上位につけているが、長い目で見れば、より安価なS23が多く売れるはずだ。

よりカジュアルに使えるAQUOS R8の投入でハイエンドスマホの裾野を広げる

 iPhoneとGalaxy以外のメーカーを見ると、Pixelも、「Pixel 6」と「Pixel 7」は無印とProの2ラインで展開している。ソニーも「Xperia 1」シリーズをフラグシップに据え、小型化してやや機能を落とした「Xperia 5」シリーズの両軸で展開している。OPPOも最新フラグシップは「Find X6」と「Find X6 Pro」をそろえ、XiaomiもXiaomi 13シリーズには無印、Pro、Ultraと複数の機種をそろえる。シャープはミッドレンジこそAQUOS sense、AQUOS wish、AQUOS zeroなど多様なシリーズをそろえているが、実は上位モデルのラインアップは限られていた。

 シャープの場合、AQUOS senseシリーズが売れ筋で盤石の地位を築いているが、ハイエンドモデルをもっと気軽に使いたいというニーズがあると判断。AQUOS R8では「時短ニーズのための効率化ハイエンド」というコンセプトを掲げている。

 シャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 主任の平嶋侑也氏は、「ロボット掃除機や食洗機など、時短の家電が使われているのは、時間を効率的に使いたいというニーズの表れ。毎日の家事はできるだけ時短して、その分家族の時間を増やしたい。自分1人の時間、仕事の時間、大切な家族との時間――どの時間も譲れない気持ちの表れ」と開発背景を話す。これはスマートフォンにも当てはまり、「俊敏な動作によっていかに短時間で情報収集、各種手続き、カメラ撮影などができるか」が重要になる。

AQUOS R8
AQUOS R8
最上位プロセッサや処理速度の速いメモリを搭載することで、高速なレスポンスにこだわった

 そこでAQUOS R8では、AQUOS R8 proと同じくQualcommのハイエンドプロセッサ「Snapdragon 8 Gen2」を採用し、ディスプレイは1〜240Hzの可変リフレッシュレートに対応している。カメラも、AQUOS R7から40%高速化したというHDR撮影や、素早くピントを合わせられる全面位相差AFに対応するなど、高速レスポンスにこだわった。

 シャープ 通信事業本部 本部長の小林繁氏は、2019年に「AQUOS zero2」と「AQUOS sense3」を発表した際、「何となくハイエンドを選ぶという購買方式は終わる」と語っていた。これは、電気通信事業法の改正に伴って端末値引きが規制されたことに端を発したものだが、この値引き規制によってハイエンドモデルが手に届きづらい存在になり、近年の物価高がそれに拍車を掛けた。そこで、AQUOS Rを2つのラインに分けることでハイエンドスマホの裾野を広げ、性能や効率化を重視するユーザーのニーズに応えた。

 AQUOS R8シリーズの取り組みは決して新しいわけではないが、より多様なニーズに対応すべく、最先端の技術を惜しげなく注ぎ込んだ真のフラグシップスマホと、よりカジュアルに使える高性能スマホという、“ハイエンドスマホの二極化”はますます進みそうだ。

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