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「Suica」のタッチレス化やチャージ不要の利用を可能に JR東日本が今後10年の新構想を発表
JR東日本が、今後の「Suica」のロードマップを明らかにした。今後10年で、残高の管理をサーバに移行する他、それを生かした各種サービスを順次投入していく。
東日本旅客鉄道(JR東日本)は12月10日、現在交通系ICカードとして提供している「Suica(スイカ)」の今後10年間のロードマップ「Suicaの当たり前を超えます~Suica Renaissance~」を公表した。現在はICカードで管理している残高をサーバ管理に切り替えることなど、現状のSuicaを“大幅に”刷新していく方針が盛り込まれている。
短期的な取り組み(2025~2027年度)
2025~2027年度に行う短期的な取り組みとしては、以下のものを予定している。
- Suicaの利用可能エリアの拡大
- 2025年春以降に長野エリアで利用可能に
- 2027年春頃をめどにSuicaの利用エリアを撤廃
- JR東日本のSuica利用可能エリアなら、どこでもSuicaで乗降可能に
- Suica未導入エリア/線区については「スマホ定期券(仮)」を導入
- モバイルSuica/Suicaアプリで表示できるようにする想定
- iPhone/Apple Watch向け「Welcome Suica Mobile」の導入
- 2025年3月:発行開始
- 専用アプリから発行可能
- 訪日前にクレジットカードでチャージ可能
- 2025年秋:自社エリアの「新幹線eチケット(自由席)」「在来線特急チケットレスサービス」に対応
- 2026年春:自社エリアの「新幹線eチケット(指定席)」と首都圏の「普通列車グリーン券」に対応
- 2025年3月:発行開始
- Suicaの他事業者への展開
- 2025年3月:のざわ温泉交通の高速バス「野沢温泉ライナー」でSuicaに対応
- 2025年3月1日:長野県北部の6市町村の路線バス共通ICカード「KURURU」がSuicaベースの「地域連携ICカード」に一新
- 2026年春:長野県松本市周辺の路線バスにSuicaベースの「地域連携ICカード」を導入(名称未定)
- アルピコ交通が運行する路線バスで利用可能
- 2026年春:モバイルSuica/Suicaアプリで東京モノレールの通学定期券を購入可能に
- 東京モノレールの通勤定期券は既に対応済み
- モバイルSuica/Suicaアプリにおける「コード決済」の導入
- 2026年秋頃~:実装予定
- Suicaのチャージ上限額(2万円)を超える決済での利用を想定
- バリュー(残高)を送り合う機能やクーポン機能も搭載見通し
- 「地域バリュー」(地域限定の電子マネー)の発行にも対応
- 2026年秋頃~:実装予定
訪日外国人向けの「Welcome Suica」にモバイル版が登場する。海外モデルでもFeliCaを利用できるiPhone/Apple Watch向けとなる(仕組み上、Androidへの対応はかなりハードルが高いと思われる)
中長期的な取り組み(2028年度以降)
2028年度には、センターサーバ型の鉄道チケットへの対応を見込んでいる。2028年度をめどに配信を開始する予定の新しい「Suicaアプリ」を活用して、以下の取り組みを進めるという。
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- 「ご当地Suica(仮)」の提供
- 個人番号カード(マイナンバーカード)とのひも付けによって、サービスを居住する自治体に最適化
- 地域連携ICカードと同等の機能をモバイル環境でも利用可能に
- 地域内の生活コンテンツやサービスの提供も視野に
- 商品券や給付金を地域バリューとして付与することも視野に
- サーバ管理型の「サブスク」「鉄道クーポン」の提供
- サブスク:一定額の支払いで鉄道運賃を大幅割り引き(上限額設定あり)
- 鉄道クーポン:施設の利用や商品購入の特典として、鉄道運賃を割り引く
さらにその後、2035年度までにはバリューもセンターサーバ管理に移行する計画だ。バリューをICチップに記録することを前提としてきたSuicaにとって、最大のアーキテクチャ変更となる。
バリューをセンターサーバ管理に移行することで、以下のサービスを実現する予定だという。
- ウォークスルー改札
- 改札機を使わずに、駅の「構内」と「構外」を識別して入出場処理を実施
- 位置情報による改札
- そもそも改札のない駅(無人駅など)において、位置情報に基づいて改札を実施
- 結果的に、SuicaをJR東日本の全駅で利用可能に
- 後払い
- 運賃を使った分だけ後から請求
- クレジットカードまたは銀行口座との事前ひも付けが必要
後払いが可能になることで、チャージすることなくSuicaを利用できるようになる。
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