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スマホの「モバイル運転免許証」を活用した実証実験 車が店舗に到着→即サービスを受けられる世界に?(3/3 ページ)

トヨタ・コニック・アルファは、スマートフォンと車、店舗などが連携する「クルマウォレット」の実証実験を公開した。将来的に運転免許証がスマートフォンに搭載されるモバイル運転免許証を見据えたもの。実際の車にUWB、Bluetooth LE(BLE)を搭載してスマートフォンと連携させ、さらに店舗側にはUWBやGPSを使って情報を取得し、さまざまなサービスを提供する。

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サービス提供は未定も、クルマウォレットがもたらす新たな体験に期待

 こうした体験を実現するためには、運転者の特定が重要となる。車のデータが誰のものか分からない以上、「車にデータを残さない」ことを想定したと同社。レンタカーやカーシェア、また、今後の自動運転の普及で「車を所有しない」時代になってくると、車内に本人データを残さない手法が必要になると判断した。

 そこで、スマートフォンとの連携を想定。「運転席にあるスマートフォン」を特定するためにUWBを利用。複数のUWBアンテナを使って、UWB搭載スマートフォンの位置を測距する。UWBは正確な位置と距離、方向を測位できるため、運転席と助手席の違いも判別できる。


市販のUWB/BLEの基板を利用して実証

フロントガラスに貼り付けた基板。アンテナが外を向いていて、これは車外とのデータ送受信に使われる

車内には運転席側、助手席側にも内向き、外向きそれぞれ基板があり、ルームミラー上部にも設置されている

運転席側のセンターピラーにも設置。これは外側を向いている

助手席側のセンターピラーには内向き、外向きの基板が設置されてる

窓ガラスから電波が外に通るような配置になっている。車両が電波を遮るため、実際にはこのUWBアンテナの配置も今後の課題になるだろう

 このとき、運転手とスマートフォンの持ち主が異なる可能性もある。例えば助手席に座る人のスマートフォンを運転席に置いておく、というような使い方もできてしまう。そうした課題を抽出することも、今回の実証の目的だ。

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 UWBは、既にデジタルキーで採用されている他、JCBがUWBとBLEを使った決済体験のデモンストレーションである「近づいてチェック」の実験を行っており、自動車や決済の分野でUWBの利用が進んできている。スマートフォン側は、iPhoneやPixel、Galaxyといった一部のハイエンド機種にとどまっているが、一定の採用がある。まだ、iOSのAirTagのように、なくし物を探すといった用途に限られているが、UWBの性質上、位置の測定に有利なため、今後の幅広い活用が期待されているところだ。

 そうした背景もあって、トヨタ・コニック・アルファでは、UWBとBLEの組み合わせで位置とデータの送受信を行うことで、「クルマウォレット」がどのような体験を実現できるか実証を行った。


今までレストランを利用しようとすると、店について名前を書いて順番待ちをして、空いた席に案内されて、メニューを見て、オーダーをして、それから調理が始まり、提供される、という流れだった

今回の実証では、あらかじめ席を予約してオーダーをしており、近づいたら調理を開始するので、到着すればすぐに席に案内されてすぐに料理が出てくる、といった体験を想定する

 ちなみに、今回のトヨタ・コニック・アルファの実証では、このJCBとも協働しているイマーゴが参加し、ハードウェアやソフトウェアの設計、開発を行っている。

 あくまで概念実証という位置付けで、同社自体が何らかのサービス開発などを想定したものではない。今回の実証では市販のUWB/BLEの基板を外付けしており、実際には車体に組み込まれることが必要になるとみられる。

 さらにモバイル運転免許証の普及も必要になってくる。店舗側にもUWBを含めたシステムの導入が必要になるため、この概念が実現するとしても数年先になるというのが同社の想定だ。


同社はこれまで、デジタル・アイデンティティーに関する調査研究を行っており、特定の技術というよりも、モビリティ分野における新たな体験の創出やビジネスの創造を目指す

 現在、欧州ではデジタルアイデンティティーウォレットの仕組みが構築されており、国際的な連携も必要になってくるだろう。トヨタ・コニック・アルファ側としては、特定の技術に依存するのではなく、UWBが実際にどこまで活用できるのか、それとも他の技術で代替できるのか、ユーザー体験として最適な仕組みは何か、といった検討を継続する他、こうした取り組みに賛同する事業者などを広げていきたい考え。


実証実験が行われた九州大学伊都キャンパス。単一のキャンパスでは国内最大規模という広大な敷地面積を誇る
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