「iPhone 16e」全方位レビュー、iPhone 16 Proと比較して分かった“真の実力” Apple好きほど選べない?(2/4 ページ)
「iPhone 16e」は、6.1型ディスプレイにApple Intelligenceに対応するA18チップ、2倍撮影にも対応した4800万画素カメラ搭載や長時間動作に対応しながらも、一括価格では9万9800円からと現行のiPhoneでは一番低価格なモデルだ。
処理性能はハイエンド級、AI処理はiPhone 16 Proと同等
iPhone 16eは、iPhoneとしては低価格帯モデルながらも最新の「A18」シリーズのプロセッサを搭載している。ただ、同じA18シリーズでも16 ProはA18 ProでGPUが6コア、16のA18は5コア、16eのA18は4コアと差別化されている。メモリ容量はAI機能のApple Intelligence対応を考慮してか、いずれもiPhoneとしては大容量の8GBだ。16eの動作は当然ながら快適で、近年の高画質ゲームもおおむね快適にプレイできる。
処理性能の検証にはiPhone 16eと、現在の最上位モデルiPhone 16 Pro、前世代モデルだがAI対応のiPhone 15 Pro、iPhone SE(第3世代)を用意した。まずは総合ベンチマークのAnTuTu Benchmarkと、CPUとGPUテストのGeekbench 16、ゲームなどの3Dグラフィックを想定した3D Markの結果をまとめて見ていこう。
結果、iPhone 16eの性能は16 Proより1~3割ほど低いものの、1モデル前の最上位機種である15 Proとは同等に近い処理性能を持つことが分かる。iPhoneの中では高性能といっていいだろう。AnTuTuのスコアがやや低めなのは、MEMのストレージのリード・ライトに関する数値が大きく影響している。ベンチマーク側の問題か、低コスト化のために従来モデルと差別化した可能性もあるだろう。
iPhone SE(第3世代)と比べると、CPUやGPUの処理性能はおよそ1.3~1.5倍高速だ。GPUは世代の差もあり、レイトレーシング対応テストの3D Mark Solar Bayでは2倍近い性能となっている。なお、日常の操作では処理性能に加えて、メモリ容量の増加が快適さの改善に大きく寄与しているという印象を受けた。
AI対応機能を快適に動かすための、NPUに関するベンチマークも行った。16eと16 Proが同等の性能で、以前のiPhoneを大きく引き離すスコアを記録した。特に、AI処理で多く利用される半精度浮動小数点(Half Precision)と量子化(Quantized)のスコアが大きく伸びている。今後利用が増えるApple Intelligenceのオンデバイス処理に関しては、16シリーズなら比較的快適に利用できそうだ。
なお、AI機能のApple Intelligenceは本体を米国の英語設定にしないと利用できなかったが、4月1日から提供されているiOS 18.4にアップデートすることで、日本語でも利用できる。Siriの会話やアプリ連携、通知の優先度の強化や、画像生成、一部の被写体を消すなどの画像編集、テキスト要約や書き換えなどを提供する。ただ、文書生成や高度な機能はChatGPTを利用することも多い。
Apple Intelligenceには複雑な処理をAppleのクラウドで行う仕組みもあるが、Appleとしてもできる限り端末のNPUによるオンデバイス処理や、外部のChatGPTで完結して欲しいという考えもあるのだろう。
ロングバッテリー&iPhone 16 Pro越えの27~30W急速充電に対応
AppleがiPhone 16eの特徴として大きく挙げているのが、「並外れたバッテリー駆動時間」だ。実際、16eのバッテリーの持ちはスペック値でも6.1型前後のiPhoneの中では16 Proと並んで長く持つと記載されている。AppleはiPhoneのバッテリーの仕様を詳細には公開していないが、この点について検証してみた。
まず、16eと16 Proの普段の利用を想定したバッテリー持ちのテストを行った。両モデルにドコモのSIMを入れて10時間外出し、持ち歩く途中でSNS、動画再生、ブラウザ、ゲーム、マップ、カメラについて同じ操作を行った。両モデルともバッテリー劣化を示す最大容量は100%で、16 Proの常時画面表示はオフにしている。
検証した結果、16eは42%減少し、16 Proは48%減少した。普段使いでは16eの方がバッテリー持ちはややいいようだ。
次に屋内のWi-Fi環境にて、YouTubeのライブ配信を10時間再生した場合のバッテリーの減少を計測した。明るさは50%、フルHD画質だ。結果、バッテリー残量は16eが42%、16 Proが40%となった。スペック表の、動画再生では16 Proの方がややバッテリー持ちがいいという表記が裏付けられた格好だ。16 Proは常時点灯対応もあり、より省電力のディスプレイパネルを搭載しているのかもしれない。
まとめると、普段使いでは16eのバッテリー持ちは同サイズのiPhoneの中でトップクラスなのは確かだ。ちなみに、フル充電時に必要な供給電力を16eと16 Proで計測して比較したところ、16eは16 Proの約1.13倍必要だった。推測にはなるが、16eはバッテリーの容量自体がやや大きいのだろう。
充電についてだが、iPhone 16eはUSB PD充電器で最大27~30Wの電力供給に対応していることを確認できた。これまでの16 Proを含む6.1型前後のモデルは最大20W前後だったので大きい変化だ。これから充電器を購入するなら、小型化が進むUSB PD 30W以上の充電器を選んだ方がいいだろう。
USB PDかつ30W以上対応の充電器を利用すると、バッテリー容量がおおよそ0~50%までの間は30~27Wで充電できた。なお、USB Type-C端子の通信はUSB2(480Mbps)に対応で、映像出力には対応していない
実際の充電時間はUSB PD 30W以上の充電器を利用すると50%まで25分、80%まで50分、100%まで90分だった。ちなみに、16 Proの場合は50%まで28分、80%まで58分、100%まで109分かかる。
関連記事
「iPhone 16e」実機レビュー カメラや処理性能、独自モデム「Apple C1」による通信品質はどうか
iPhone 16eは、iPhone SE(第3世代)の後継モデルと呼べる存在だが、iPhone 16のファミリーとして登場。これまでiPhone SEシリーズの特徴だったホームボタンを廃している一方で、処理能力の高さは受け継がれている。実際の使い勝手を確かめるべく、発売に先立って試用できた実機をレビューしていきたい。「iPhone 16e」と「iPhone SE」の使い勝手を実機で比較 サイズや画面の見やすさはどう違う?
6.1型の有機ELディスプレイを搭載した「iPhone 16e」。ホームボタンと指紋認証のTouch ID、4.7型の液晶ディスプレイを搭載した「iPhone SE(第2世代)」。実機を用意し、使い勝手を比較した。「iPhone 16e」にまつわる7つの謎 「e」の意味は? LTE対応バンドはなぜ減った? Appleキーパーソンに聞く
最新「iPhone 16e」について、Apple ワールドワイドiPhoneプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのカイアン・ドランス氏にお話を聞いた。iPhone 16eのeに込められた意味や、カラーバリエーションが2色の理由は? 初の自社開発モデム「C1」についても聞いた。「iPhone 16e」と「iPhone 16」は意外と違いが多い 外観やスペックの差をチェック
iPhone 16eは廉価版iPhoneではなく、iPhone 16シリーズの1機種という扱いになっています。そこで、iPhone 16eとiPhone 16の違いをまとめます。ディスプレイやカメラ機能、MagSagfe非対応など違いは意外とあります。「iPhone 16e」は何が変わった? 「iPhone SE(第3世代)」とスペックを比較する
iPhone 16eがiPhone SE(第3世代)から何が変化、進化したのかをまとめる。最も大きな変化は、初代SEから継承していたホームボタンがなくなったこと。ディスプレイ、カメラ、プロセッサの性能も底上げされている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.