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「AQUOS R10」はAIで半歩先の体験を、「AQUOS wish5」は幅広い世代に訴求 “深化”したシャープのスマホ戦略(1/3 ページ)

シャープは5月29日に「AQUOS R10」「AQUOS wish5」を発表。自社スマートフォンのフラグシップモデルとエントリーモデルだ。それぞれのコンセプトや特にアピールされた機能は何か。

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 シャープは5月29日、自社スマートフォンのフラグシップモデルの「AQUOS R10」と、エントリーモデルの「AQUOS wish5」を発表した。

 国内MNOでは、NTTドコモとソフトバンクが取り扱う。オープンマーケット向けモデルの価格(税込み)は、AQUOS R10の256GBモデルが10万円程度、同512GBモデルが11万円程度で、AQUOS wish5が3万円程度を予定する。


左がフラグシップモデルの「AQUOS R10」、右がエントリーモデルの「AQUOS wish5」

どちらもキャリア向けモデルとオープンマーケット向けモデルが存在する。発売時期はAQUOS R10が7月上旬、AQUOS wish5が6月下旬以降となっている

 製品発表会場には、企画・開発に関わった以下の4人が登壇し、製品のコンセプトや特徴を説明した。

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  • Co-COO 兼 スマートワークプレイスビジネスグループ長 小林繁氏
  • 通信事業本部 本部長 中江優晃氏
  • 通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長 川井健氏
  • 通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部課長 清水寛幸氏

左からシャープの清水寛幸氏、小林繁氏、中江優晃氏、川井健氏

AQUOS R10はAIで体験に磨きをかける シャープは何にこだわり開発したのか

「半歩先のモバイルUX」――これがシャープの目指すAI体験

 まずはAQUOS R10から見ていこう。AQUOS R10はシャープのAI戦略を反映した製品でもある。通信事業本部 本部長の中江優晃氏は「半歩先のモバイルUX(ユーザー体験)」の実現に向けてAI技術を積極的に活用していくと話す。ここでいう半歩先とは、「お客さまがAIの存在を意識することなく、自然にその恩恵を受けられる」状態を指す。

 例えばカメラに関しては、AIが自動で影を検知し、それを除去した写真を保存できる機能を追加。AIが通話中に出てきたキーワードやスケジュールを自動でメモし、内容をハイライトで表示する機能や、通話中に詐欺などの怪しい電話と感じた場合、その場で自動音声での応答に切り替えて自動で終話できる機能も新規追加した。


AQUOS R10はAIが通話中に出てきたキーワードやスケジュールを自動でメモし、内容をハイライトで表示する機能を搭載する

 他にも、動画撮影中に笑顔を検知して自動で写真を撮影する「AIライブシャッター」や、GoogleのAIアシスタント「Gemini」に対応している。


笑顔を検知すると自動でシャッターを切る「AIライブシャッター」や、GoogleのAIアシスタント「Gemini」に対応している

AQUOSだからこそ提供できる「価値」 R10では視聴体験における「リアリティー」を追求

 AQUOSだからこそ提供できる「価値」について、中江氏はモデル名の「R」の由来にもなった「リアリティー」という言葉を用いて、開発において特に重視したことを紹介した。

 「どんなシーンでも最高の没入感を得られるオーディオ・ビジュアル」と「目で見た感動を作品のクオリティーで納めるカメラ」の2点を重点的に強化したAQUOS R10は、「生で見るより生々しい」というコンセプトのもと、映像と音響の両面から没入感を徹底的に追求した。


「生で見るより生々しい」というコンセプトのもと、視聴体験を極めたAQUOS R10

 ディスプレイのピーク輝度は従来の2000ニトから3000ニトへと大幅に向上したことで、光の表現の幅が大きく広がったという。さらに、日が差し込む風景や夜景など、明るい部分と暗い部分の差が大きいシーンでも、リアルな階調表現が可能になり、細部まで鮮明に再現できる。


ピーク輝度が3000ニトのAQUOS R10は旧モデルのディスプレイと比べて明るい。屋外での視認性を担保できそうだ

 通常の動画コンテンツもAQUOS独自の「バーチャルHDR」によって明るく鮮やかに表示される。これは再生中の動画だけをスマートに明るく制御するため、「まぶしさを抑えながらも鮮やかさを際立たせる」としている。

 高輝度になったことでバッテリー消費も多くなるはずだが、清水氏は「明るいシーンは限定的であるというふうに考えている」と前置きした上で、「(他モデルと)比較すると電流への影響はあるといわざるを得ないが、動画再生時間全体に対する影響は大きくならないと考えている」と釈明している。

 リアルな映像体験をさらに引き立てるため、「音響設計にも徹底的にこだわった」と中江氏は続ける。ハイエンドモデル「AQUOS R9 pro」の技術を継承し、スピーカーユニットそのものを新規開発したフルメタルボックスのスピーカーを採用した。

 パワフルで立体感のあるサウンドを実現し、自宅でも最高のライブ感を味わえるという。短時間ながらデモ機で音源を試聴したところ、「低域がR9よりも太くなっている」印象を受けた。

 また、寝室や周囲に人がいる場所など、小さい音量で視聴したい場面でも、音域ごとに音量を賢く制御するAQUOS独自の新技術を搭載。耳の特性上、聞こえにくくなる低域や高域も賢く制御することで、「小音量でもクリアな音質を保てる」という。


AQUOS R9とR10の実機でデモ音源を再生して聞き比べると、R10は低域が大きくなったように感じた

R10ではフルメタルボックスのスピーカーを採用した。手のひらに収まるスピーカーは振動板などが収まっている

 これらの視聴体験を支える「パフォーマンスも進化している」と中江氏は続ける。AQUOS R10では、熱伝導率の高い銅を板状の熱拡散装置であるベイパーチャンバーに接着することで、CPUの熱を効率的にベイパーチャンバーへと流動させる。これにより、ゲームや動画撮影など負荷の大きい場面でも、長時間にわたり滑らかな描写の持続が見込める。


ベイパーチャンバーに熱伝導率の高い銅を接着し、CPUの熱を効率的にベイパーチャンバーへと流動させるAQUOS R10の構造

目で見た感動を作品クオリティーで残すカメラ 動画撮影時にも被写体追尾が可能に

 AQUOS R10のカメラは、R9から引き続きライカ(Leica)が監修しており、見たままの感動をそのままのクオリティーで写真に残せることにこだわった。画質エンジン「ProPix pro」による画像処理により、「ナチュラルで味わいのある1枚」を撮影できるという。


AQUOS R10の背面。アウトカメラはR9から引き続きライカ(Leica)が監修している

 標準カメラには、低ノイズを実現する新センサーを採用し、暗所でも細部まで美しく描写できるようになった。さらに、R9 proで培ったAI技術を継承し、より高精度な撮影が可能だという。光源を判定するという14chスペクトルセンサーを搭載し、光の色味を大幅に細分化して測定し、AQUOS独自のAIで処理することで、屋内などの複数の光源がある難しいシーンでも「色味を正確に再現できる」としている。


光源を判定するという14chスペクトルセンサーを搭載したAQUOS R10

14chスペクトルセンサーは肉眼では分かりにくいほど小さい部品。画像は指を差してもらったところ。米粒くらいの大きさだった

 AIの合成処理も強化ポイントで、AIを活用することで、従来以上の情報量で合成処理を行えるようになり、ズーム撮影やHDR撮影などでのディテール感が大幅に向上。これらにより、「これまで以上に見たままのリアルな一枚を収めることができる」という。

 また、R9は静止画撮影時の被写体追尾に対応していたが、R10では動画撮影時にも被写体追尾が可能に。ユーザーがタッチしてフォーカスする仕様のため、特定の被写体に限られるわけではない。さらにDolby Visionへの対応により、「映画のような鮮やかさで、動画を撮影・保存できる」としている。

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