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「耳をふさがないイヤフォン」でやってはいけないこと5選 迷惑行為や交通違反になるリスクを解説

オープンイヤー型イヤフォンは、耳をふさがずに音を聴ける構造から、ながら聴きや運動時の安全性確保などに役立つアイテムとして、一部のメーカーが注力している。一方で、その特性ゆえに、誤った使い方をすると周囲への迷惑になったり、利用者自身にとってデメリットになる。オープンイヤーイヤフォンを使ううえで避けるべき行動や注意点について整理する。

 オープンイヤー型イヤフォンは、耳をふさがずに音を聴ける構造から、ながら聴きや運動時の安全性確保などに役立つアイテムとして、一部のメーカーが注力している。一方で、その特性ゆえに、誤った使い方をすると周囲への迷惑になったり、利用者自身にとってデメリットになる。この記事では、オープンイヤーイヤフォンを使ううえで避けるべき行動や注意点について整理する。


オープンイヤーイヤフォン「nwm DOTS」。音漏れを最小限にとどめる技術などを搭載したイヤフォンだ。手掛けたのはNTT子会社で音響関連事業を行うNTTソノリティだ

耳をふさがない構造のオーディオ製品としては、イヤフォンタイプ「HUAWEI FreeClip」(写真=右)などの他にメガネ型の製品も存在する。例えば、「HUAWEI Eyewear 2」(写真=左)がそれに当たる。画像はベストバイ記事より引用

1点目:周囲が静かな場所で音量を上げすぎると迷惑に

 オープンイヤーイヤフォンは、空気の振動を外耳道から鼓膜に伝える空気伝導と、骨を振動させることで音を内耳に届ける骨伝導の2種類に分かれる。一方で、耳をふさがない構造ゆえに、どうしても音漏れが発生しやすい。図書館や電車内など静かな環境で使用する場合、音量を上げすぎると周囲に大きな迷惑をかける。特に満員電車では、すぐ隣の人に音が筒抜けになるケースもある。オープンイヤーは「自分だけが聴こえている」つもりになりがちだが、密閉型に比べて音が漏れやすいことを忘れてはならない。

 公共の場では、音量を控えめにするか、状況によってはオープンイヤーイヤフォンを外す判断も必要だ。最近は音漏れの少ない構造をうたう製品もあるが、完全に無音というわけではない。使用時は「音漏れしていないか」を客観的に確認する意識を持ちたい。

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2点目:自転車や自動車の運転中に使用するのはNG

 オープンイヤーイヤフォンは外音を遮らないというメリットがある。そのため、運転中に使用していいと誤解されるだろうが、イヤフォンの着用により発生した事故は「安全運転の義務違反」と見なされる可能性が高い。例えば、道路交通法第70条にはイヤフォンの直接的な記述はないが、イヤフォンにより周囲の音(緊急車両のサイレンなど)が聞こえにくくなることで、運転に必要な情報の収集が妨げられ、ハンドルやブレーキの確実な操作、あるいは周囲の状況に応じた適切な運転ができなくなるためだ。

 大阪府道路交通規則第13条には、「警音器、緊急自動車のサイレン、警察官の指示等安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような音量で、カーオーディオ、ヘッドホンステレオ等を使用して音楽等を聴きながら車両を運転しないこと」と明記されており、周囲の安全に関わる音や声が聞こえないほどの音量で、カーオーディオやイヤフォンなどを使用して運転することを禁じている。


大阪府では、周囲の安全に関わる音や声が聞こえないほどの音量で、カーオーディオやイヤフォンなどを使用して運転することを禁じている。画像は大阪府道路交通規則より引用

 仮に直接的な規定がなくても、イヤフォンが事故原因の一因となれば過失と判断される可能性は十分にある。オープンイヤーイヤフォンは耳をふさがないことから、これに該当しないと思われるだろうが、トラブルになった際に一般的なイヤフォンと同等と扱われ、「オープンイヤーイヤフォンが事故原因ではない」と証明ができなければ法令違反に問われるリスクがある。トラブルを避けて安全運転を徹底するためにも、運転中のイヤフォン使用は避けるべきだ。

3点目:誤った装着方法では破損や紛失につながる

 オープンイヤーイヤフォンは、耳に引っ掛けたり、こめかみに当てたりする独特の装着方法が採用されている製品が多い。そのため、正しい位置に装着しないと、動作中にズレたり落下したりしやすくなる。特にランニングや通勤中の利用では、段差や振動によってイヤフォンが落下し、破損や紛失につながることもある。

 また、無理な角度で装着するとイヤフォン自体のフレームに負荷がかかり、経年劣化を早めてしまうおそれもある。購入後に取扱説明書やメーカーの装着ガイドを確認し、自分の耳や頭の形に合った装着方法を習得することが重要だ。購入前の検討段階においても、正しい使い方を知っておく方がいい。さらに、普段から軽く頭を振って落ちないかをチェックする習慣をつけると、予期せぬトラブルを防ぎやすくなる。

4点目:大音量での長時間使用は避けるべき

 オープンイヤーイヤフォンは耳をふさがないため、聴覚へのダメージが少ないと思われがちだが、実際にはそうとは限らない。音を耳に届ける仕組みは耳をふさぐタイプのイヤフォンと同じであり、長時間の大音量再生は聴力に悪影響を与える可能性があり、難聴や耳鳴りの原因になりうる。

 特にオープンイヤーイヤフォンは音楽だけでなく、周囲の音も拾ってしまうため、周囲の騒音にかき消されないようにと音量を上げてしまいがちだが、その積み重ねが聴覚へのリスクを高める。1時間使用したら10分休憩を取る、音量は最大の60%未満に抑えるなど、利用者自身での工夫が必要だ。

5点目:着けっぱなしでの会話・接客は避けたい

 オープンイヤーイヤフォンは外音が聞こえるとはいえ、イヤフォンを装着したまま他人と会話したり、店員とやりとりするのは相手に失礼な印象を与える可能性がある。オープンイヤーイヤフォンの特性を理解していない人からすれば、オープンイヤーであろうとなかろうとイヤフォンであることに変わりはないため、「話をきちんと聞いていない」「集中していない」と思われる可能性がある。特にビジネスシーンや接客の場ではマナーとして外すのが望ましい。

耳をふさがない恩恵を受けられる一方で、使う側の「配慮」と「責任」が求められる

 このように、オープンイヤーイヤフォンは音楽や通話を快適に楽しみながらも、周囲の状況を把握できるというメリットがある。ただし、その利便性の裏には、使う側の「配慮」と「責任」が求められる。音漏れや安全性、マナー面に目を向け、状況に応じて使い分ける姿勢が必要だ。また、製品の特性を理解せずに使うと、イヤフォンそのものを落として紛失したり、思わぬ形で壊してしまったりする。単に「耳をふさがないから大丈夫」と安易に考えず、シーンに応じた正しい使い方を心掛けたい。

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