モバイルSuicaでやってはいけないこと トラブルを防ぐ7つの心得
スマートフォン1台で電車に乗れて、コンビニや自販機での支払いもできる。だが、その利便性の裏には「思わぬ落とし穴」も潜んでいる。モバイルSuicaを使ううえで注意すべき「やってはいけないこと」を7つの観点から紹介する
スマートフォン1台で電車に乗れて、コンビニや自販機での支払いもできる。モバイルSuicaは日常生活に欠かせない存在として、すっかり定着した。だが、その利便性の裏には「思わぬ落とし穴」も潜んでいる。ちょっとした不注意が、通勤中や旅行先でのトラブルにつながるケースもある。
この記事では、6月15日に掲載したカード型ではなく、モバイルSuicaを使う上で注意すべき「やってはいけないこと」を7つの観点から紹介する。
機種変更時にSuicaを移行せず初期化してしまう
古いスマートフォンから新しいスマートフォンへ乗り換える際、モバイルSuicaの扱いには注意が必要だ。特にAndroidでは、旧端末でSuicaを「サーバに退避」しておかないと、新しい端末でSuicaを利用できなくなる。Android端末では、おサイフケータイアプリに同一Googleアカウントでログインすることで再設定可能だ。ただし、旧端末でおサイフケータイアプリとの連携を済ませていない場合、再発行を行ってもSuicaの再設定ができないため、払いもどし(退会)を検討する必要がある。
【訂正:7月19日14時33分】初出時に「スマートフォンの故障や紛失などを理由にサーバ退避ができない場合は、払いもどし(退会)と新規発行(会員登録)が必要だ」と記載しておりましたが、内容が不正確でした。お詫びして訂正いたします
iPhoneでも、同様の仕組みとなっており、「Wallet」アプリからSuicaを削除し、iCloudからサインアウトする手順が必要になる。
サーバに退避の操作により、Suicaの情報がサーバに保存され、新しい端末で利用できるようになる。この作業を忘れてしまうと、残高や定期情報を含めたSuicaの再発行に手間がかかり、サポートセンターとのやりとりが必要になる場合もある。「クラウド時代だから、何もせずに引き継がれて当然」と思い込まず、公式サイトの手順を確認しながら確実に操作するようにしたい。
JR東日本のモバイルSuicaのWebサイトでは、「モバイルSuicaを設定した端末を変更・交換する場合、または修理に出される場合等は、端末や通信事業者等の手続きをする前に、必ずモバイルSuicaの機種変更操作を行い、データを退避してください」と案内している。画像は「端末の変更」より引用
複数端末で同じSuicaを使おうとする
「スマホは2台持ち」「タブレットにも入れておきたい」――そんな使い方をしている人もいるだろう。しかし、モバイルSuicaは1枚のSuicaにつき、1台の端末でしか使えない。AndroidであれiPhoneであれ、同じSuica IDを複数の端末で共有することはできない仕組みだ。
例えば、片方の端末でSuicaを使ったあと、もう一方でも使おうとしてエラーが出たり、チャージした残高が表示されなくなったりすることがある。最悪の場合、Suicaがロックされてしまい、利用停止になる可能性もある。端末を複数使っていても、Suicaは一貫して「1台に1枚」の原則を守るべきだ。
バッテリーが切れた状態で改札に向かう
モバイルSuicaの利用には、基本的にスマートフォンの電源が必要となる。端末の電源が落ちていれば、改札機との通信ができず、入出場処理ができない。だが一方で、「バッテリーがゼロでも通れることがある」という話を聞いたことがある人もいるだろう。
実際、一部のAndroid端末では、電源が切れた後でも「おサイフケータイ」の機能がしばらく動作する設計になっており、バッテリーに微量な電力が残っていれば、改札の読み取りに反応することがある。だがこれは保証された動作ではなく、完全に放電していたり、繰り返し使用しているとすぐに利用できなくなる。
iPhoneでは、2018年のiPhone XSシリーズ以降の機種に「予備電力機能付きエクスプレスカード」が搭載されており、電源が切れる直前にiOSが処理を移行することで、最長5時間は改札を通過できる。ただし、手動で電源をオフにした場合や、古い機種(iPhone 7~X)ではこの機能は使えない。
2018年のiPhone XSシリーズ以降の機種には、「予備電力機能付きエクスプレスカード」が搭載されている。予備電力の機能を使うことで、電源が切れた後でも改札を通過できる。画像はAppleのNewsroomより引用
いずれにしても、「ギリギリまでスマホを使っていたら電源が切れた」「慌ててモバイルバッテリーを探した」という状況は避けたい。外出前にはバッテリー残量を確認し、必要ならモバイルバッテリーを携帯しておこう。
チャージや定期の有効期限を確認せず改札で詰まる
カード型のSuicaと違い、モバイルSuicaは物理的な存在がないため、残高や有効期限の「見える化」が難しい。その結果、改札を通る直前に「残高不足です」「定期券が切れています」と通知されて、足止めを食らうこともある。
オートチャージを設定している人でも安心はできない。例えば、Suica/PASMOエリア外の自動改札機、バスやタクシーの利用ではオートチャージは行えない。Suica/PASMOエリア内であっても、新幹線自動改札機や、他の鉄道事業者とJR東日本の連絡用改札機、簡易Suica改札機ではオートチャージされない。定期の更新もアラートを見逃せば期限切れとなる。
SuicaアプリやGoogleウォレット、Apple Payのアプリなどで、定期的に残高と期限を確認する習慣を持っておくと安心だ。
iPhoneは「エクスプレスカード」の設定を忘れずに
iPhoneでは「エクスプレスカード」に使用するSuicaを指定しておくと、画面ロック中でもiPhoneを改札にかざすだけで通過できる。この設定をしていないと、改札通過時にロック解除が必要になるので、忘れずに設定しておきたい。Androidでも、モバイルSuicaアプリで「定期券有効期間外のSF利用」設定を有効にすることで、定期券の期限が切れた後でも、Suicaの残高を使って改札の通過が可能になる。
エクスプレスカードの設定は、「設定」→「ウォレットとApple Pay」→「エクスプレスカード」から行える。エクスプレスカードに設定できるのは1つのSuicaのみ。複数のSuicaをApple Payで利用している場合は注意したい
朝のラッシュ時に改札で立ち止まると、後ろの人にも迷惑が掛かってしまう。改札前で慌てないためにも、一度自分の端末で設定を確認しておくと安心だ。
半年以上使わずに放置して利用停止になる
Suicaを複数使い分けている人や、久しぶりに予備の端末を使おうとした人が直面しやすいのが「長期間未使用による利用停止」だ。モバイルSuicaは、6カ月以上使わない状態が続くと、自動的に利用が停止される仕組みになっている。残高があっても、改札や店舗での利用はできなくなる。
この場合、Suicaにチャージするか、駅員に「長期間使っていなかった」と申告すれば再開できる。だが、出先で突然使えないことに気づいては遅い。複数のSuicaを登録している場合は、全ての残高や履歴を確認しておくとよいだろう。
OSアップデート中に改札を利用しようとする
想定外のトラブルとして増えているのが「OSアップデートの影響」でSuicaが使えなくなるケースだ。特に自動アップデートをオンにしていると、駅構内にいるタイミングでアップデートが始まり、再起動や設定の初期化が行われている間、改札を通れなくなってしまう可能性がある。
これはiOSでもAndroidでも同様で、Suica以外の支払いアプリや交通系ICカードにも影響する場合がある。端末が使えない数分間、改札を出ることもできず、駅員に対応を依頼するしかない。
そのリスクを避けるためには、OSの自動更新はオフにしておき、アップデートは帰宅後や出発前など、安定した通信環境と余裕のある時間帯に行うのが望ましい。
OSアップデート中は改札を通過できない。そのため、あらかじめ自動アップデートをオフにしておくことをおすすめする。画像は「スマホのバッテリー切れでもSuicaで改札通過できる? iPhoneで検証してみた」という記事より引用
モバイルSuica、思わぬトラブルの引き金になりうることも
モバイルSuicaは、日々の移動や買い物を支えてくれる便利なツールだが、その反面、スマートフォンという“母体”が抱えるリスクとも無縁ではない。機種変更、電池残量、設定の見落とし――そのどれもが思わぬトラブルの引き金になりうる。
今回紹介した「やってはいけないこと」は、いずれも回避できるものばかりだ。日常的にモバイルSuicaを使っている人こそ、一度立ち止まって自分の設定や使い方を見直してみてはいかがだろうか。ちょっとした工夫と予防で、快適な“スマホ交通生活”を続けることができるはずだ。
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