楽天モバイルが「漁夫の利」を得る構図も? 決算で見えた現状と今後の課題(2/2 ページ)
楽天グループは8月8日、2025年第2四半期の決算を発表した。懸案の楽天モバイルは、EBITDAが前年同期比191億円改善の56億円まで拡大し、黒字幅が広がった。楽天モバイルの料金値上げは考えておらず、楽天市場を含めて、グループ全体の利益で判断する考えだ。
楽天銀行と楽天ペイメントがフィンテック領域の収益をけん引
フィンテックセグメントでは、売上収益が同14.8%増の2327億円、Non-GAAP営業利益が同12.2%増の434億円まで拡大した。楽天カードの取扱高拡大、楽天銀行の金利収益増加が奏功。楽天銀行と楽天ペイメントが特にセグメント収益をけん引した。
主要KPIでは、楽天カードのショッピング取扱高は同10.2%増の6.5兆円、楽天銀行の口座数は同7.5%増の1707万口座、預金残高は同7.1%増の11.7兆円、楽天証券口座数は同10.9%増の1256万口座、NISA口座数は同18.2%増の653万口座など、順調に拡大した。預かり資産も39.6兆円に達して40兆円も目前となっている。
懸案の楽天証券のセキュリティでは、5月末までに2段階認証などの設定を追加して対策が完了。「その後被害は出ていない」(同)という。
楽天カード、楽天銀行、楽天ペイメントのいずれも順調に拡大。特に楽天ペイはユーザー数、取扱高ともに拡大し、Non-GAAP営業利益は18億円となり、黒字幅を拡大させた。
「ポイント狙い」のユーザーをどう定着させるか
ソフトバンクの宮川潤一社長が楽天モバイルの動きを気にしている通り、料金値上げに動くNTTドコモ、KDDIに対し、楽天モバイルは値上げを否定。三木谷社長は「値段は総合的な判断をしながら考えていく。今のところは、(値上げは)考えていない」と話す。
もともと楽天グループ内のエコシステム利益を重視する方針を占めている三木谷社長は、トータルでの収益性を重視している。楽天市場を含めて、グループ全体の利益で判断する考えだ。
他社の値上げの動きに対して移行するユーザーもいて、「言い方は悪いが、ポイント狙いみたいなユーザーも現状としてある」(同)という状況ながら、“敵失”という状況になっている様子。「漁夫の利」と宮川社長が気にしていた状況だが、楽天モバイルとしては移行したユーザーをいかに定着させるかが課題となるだろう。
その点でネットワークの改善は急務で、さらにU-NEXTとのセットプランへの期待度の高さも伺える。単純な契約数拡大ではコストも増大するため、三木谷社長も「先行費用として増大するマーケティング費用がなければ大幅に黒字化できるが、もう少し(契約数を)伸ばしたい」と三木谷社長は話し、まずは1000万契約を実現させる。その上で「EBITDAの通期の黒字化は確実にできる」と強調し、AIを活用するなど効率化も促進していく考えだ。
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