楽天モバイルが「漁夫の利」を得る構図も? 決算で見えた現状と今後の課題(1/2 ページ)
楽天グループは8月8日、2025年第2四半期の決算を発表した。懸案の楽天モバイルは、EBITDAが前年同期比191億円改善の56億円まで拡大し、黒字幅が広がった。楽天モバイルの料金値上げは考えておらず、楽天市場を含めて、グループ全体の利益で判断する考えだ。
楽天グループは8月8日、2025年第2四半期の決算を発表した。
売上収益は前年同期比11%増の5963億6900万円、営業利益は271億6500万円改善の66億1000万円で増収増益だった。Non-GAAP営業利益は前年同期の118億円の赤字から201億円の黒字へと319億円改善し、「第2四半期においては2019年度以来の黒字化」と三木谷浩史会長兼社長はアピール。その背景には、「データとAIの活用による各種オペレーションの効率化」があるという。
EBITDA(利払い前・税引前・減価償却費前利益)も同364億円増の1032億円となり、第2四半期としては過去最高を達成した。三木谷社長は、全セグメントでの増収を含めて好調な決算だと強調する。
上期累計としては、売上収益は同10.3%増となったものの、営業利益は66億1000万円の赤字。Non-GAAP営業利益は197億5100万円となり、同175億2200万円の改善となった。
通期黒字化へ順調な進展の楽天モバイル
懸案の楽天モバイルは、EBITDAが同191億円改善の56億円まで拡大。前四半期で黒字化したが、その黒字幅がさらに広がり、2025年通期のEBITDA黒字化に向けて順調に進捗している。
契約数も7月7日に900万回線を突破。8月8日時点では910万回線を超えているそうで、1000万回線突破に向けて下期は純増ペースを加速させていきたい考え。1000万回線に関して三木谷社長は「なんとか達成したいと思い、さまざまな戦略を取っている。特に地方との結び付きを強化していきたい」との戦略を示す。
モバイルセグメントの売上収益は同18.1%増の1121億円、Non-GAAP営業利益は同169億円改善の370億円の赤字。EBITDAは216億円改善の96億円となった。楽天モバイルに加えて楽天シンフォニーも成長したことで改善が進んだ。
楽天モバイル単体では、売上収益が同33.5%増の910億円、Non-GAAP営業利益が同139億円改善の390億円の赤字となった。
第2四半期での契約回線数は897万回線で、前四半期から39.3万回線が増加した。解約率は1.40%となり、前四半期が春商戦で上昇していた解約率が落ち着き、正常化してきているという。特に6月は解約率が1.26%まで下落し、「一部キャリアの料金改定の影響」(三木谷社長)もあって、改善したという。
ARPU(ユーザー1人あたりの平均収入)は同40円増の2861円。MNOサービス売上は同26.9%増の510億6800万円まで増加した。
2025年1〜3月開通ユーザーの平均データ利用量は1日1.21GBに
楽天エコシステムを含めたARPUは増加したが、エコシステムARPUは減少。これはエコシステムの新規利用者やライトユーザーの新規契約が増加したことによって減少したためと分析。契約後1年を経過したユーザーに限るとエコシステムARPUも増加していることから、解約率の低下でユーザー定着することで上昇すると見込む。
ARPU増につながる平均データ利用量は1日平均で1.04GBになった。2025年1〜3月に開通したユーザーは平均より高く、1日平均1.21GBの利用量になっている。こうしたユーザーの定着によって今後のARPU成長を期待する。
ユーザーの定着を促進するため、年内に1万局以上の基地局を増設してネットワークを改善するとしているが、7月までに2930局を設置。下期に向けてペースアップして、12月には1万局を超える基地局を展開する。これによって通信品質を向上させ、契約獲得と解約率低下を強化していく。
10月からはU-NEXTとのセットプランである「Rakuten 最強U-NEXT」を提供する。段階制ではないため、ARPUのさらなる増加につながるものと期待する。
楽天エコシステムとの連携では、楽天カードのプレミアムカード、ブラックカード会員に対してそれぞれ5GB、10GBのデータ容量をプレゼント。ロイヤリティーの高いユーザーの利用促進を図る。
法人契約も拡大しており、6月末の段階で2万社を突破して2万1796社まで拡大した。コストパフォーマンスなどの評価が高く、さらに介護・ホテル・飲食店・小売・医療向けのDXサービスのパッケージと組み合わせてさらなる拡大を図る。
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