海外eSIMの「トリファ」が急成長を遂げたワケ 体験に基づくサービス設計、海外キャリアと直接連携も強みに(2/4 ページ)
レンタルWi-Fiに代わる海外での通信手段として、eSIMを提供する事業者が増えている。国内ではトリファが急成長しており、7月にはテレビCMも開始した。ライバルも多い中、どのような戦略でeSIMサービスを提供していくのか、代表取締役の嘉名雅俊氏に話を聞いた。
トリファを始めた当初はeSIMと言うかどうかも迷った
―― そこから一気に売り上げが伸びてきましたが、2年15倍というのはかなりの急成長だと思います。その要因はどう見ていますか。
嘉名氏 初期のころは、今ほどの規模ではありませんでした。ブレークスルーできたのは、スタートアップとして資金調達ができ、きちんとマーケティングに予算を投下できたからです。直近では、インフルエンサーに使っていただいたことも強みになっています。実際に動画の中で使っていただき、「速度はこれぐらい出ている」ということを紹介していただけているので、ユーザーの皆さんにも安心して使ってもらえます。もう1点あるとすればリファラル(推薦)で、友達を紹介してもらって広がるバイラルの獲得チャネルは一般に比べると多いと思います。
―― データでは、利用国の75%がアジア圏でしたが、これはユーザーに若い人が多いからなのでしょうか。
嘉名氏 はい。アジアの方が頻繁に行く方が多いですからね。その辺が影響しています。
―― eSIMなどの最新技術にあまりなじみがなかった人も使っているように見受けられましたが、そういった層に向けて何か工夫したことはありますか。
嘉名氏 今はeSIMアプリと言っていますが、トリファを始めた当初はeSIMと言うかどうかも迷いました。受け入れられるかどうか、心配だったからです。いろいろな検証をした結果、ユーザー層の中にもeSIMを分かっている方はいますし、そこまで分かってなくてもポチポチ画面をタップしてければ使えるという文脈で理解して使っている方もいることが分かりました。「海外でeSIMを使ったら便利」と言っている人がeSIMのことをきちんと理解しているかといえば、そうではないと思います。とはいえ、eSIMならWi-Fiがなくても使えて、料金はリーズナブルというベネフィットは感じていただけています。
海外の通信事業者と直接連携していることの強みも
―― 発表会では、設定方法のページを画像として保存できる機能が上白石さんに紹介されていました。あれはいいですね。海外に着いて、通信できないと困りますが、通信がないと設定方法のページも見られないので。
嘉名氏 僕自身も海外旅行が好きなので、ユーザーの気持ちは分かります。もともと現地でSIMを買ったり、事前にAmazonでSIMを買ったりしていましたから、つながらないときのパニックぶりもよく分かります(笑)。発表会では上白石さんが画像を保存して確認できるとおっしゃっていましたが、実は通信環境がないところでもアプリを開けばインタラクションがある形で設定は確認できます。
―― 他にはどんな工夫がありますか。
嘉名氏 いくつもありますが、代表的なのはeSIMをチェックする機能です。アプリを入れて、ボタンを押すだけでeSIM対応かどうかを勝手にチェックしてくれます。僕自身が海外に行くときに欲しいと思っていたのは、データ容量の残量がきちんと見えたり、足りないときにチャージした方がいいと教えてくれたりする機能です。1GBを使った後、そのまま無制限プランに切り替えられるなど、僕がこういう機能が欲しいなというものは皆さんも欲しいだろうということで入れています。
―― eSIM事業者によっては、eSIMを入れ直さなければいけなかったりするので、ワンタッチで切り替えられるのは便利ですね。
嘉名氏 ここは海外の通信事業者と直接連携している強みになります。ある種、eSIM事業者は乱立していますが、出来合いのパッケージを卸してもらっているところと、弊社のようにシステムをつないでプランをカスタマイズしているところでは、できることが違います。
―― バックアップ回線を用意しているのも、その1つでしょうか。
嘉名氏 メイン回線で通信障害が起ったりした場合でも、カスタマーサポートが24時間対応していて、代わりの回線を付与するオペレーションをしています。ただし、今は自動ではなく、新しいeSIMを付与する形になっています。
―― そこまでやってくれる事業者は、あまりないような気がします。
嘉名氏 海外の事業者が多い中で、日本人がサポートするのはコスパが悪いですからね。ただ、通信がつながらないときと、Amazonや楽天で商品を買ってキャンセルしたようなときでは、サポートに対する期待値がまったく違います。1分でも1秒でも早く返事が欲しいですからね。日本人が即レスするというのは、最初から力を入れていたところです。
昨今、特に気を付けているのはAIです。カスタマーサポートをAIにする事業者はeSIM事業者に限らずたくさんいて、人に話を聞いてもらったと思っていたら実はAIだったというのが“あるある”になっています。有人サポートに切り替わったら、もう一度最初から説明しなければならない。事業戦略上、確定したわけではありませんが、あまりそういう体験は届けたくないと思っています。ですから、ユーザーの問い合わせ内容から弊社のサポートが原因を特定するためにAIを使うというオペレーションを組んでいます。
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