海外eSIMの「トリファ」が急成長を遂げたワケ 体験に基づくサービス設計、海外キャリアと直接連携も強みに(3/4 ページ)
レンタルWi-Fiに代わる海外での通信手段として、eSIMを提供する事業者が増えている。国内ではトリファが急成長しており、7月にはテレビCMも開始した。ライバルも多い中、どのような戦略でeSIMサービスを提供していくのか、代表取締役の嘉名雅俊氏に話を聞いた。
大手キャリアの海外ローミング強化とは「すみ分けができる」
―― ここ1、2カ月の間に、大手キャリアが海外ローミングの無料化を打ち出しました。海外eSIMの強力なライバルになりそうですが、これについてはいかがでしょうか。
嘉名氏 僕らとしては、すみ分けや共存になっていくと思っています。ローミングが(無料で)セットされる料金プランはありますが、auを除いて無制限はまだありません。構造的に出しづらいのだと思いますが、そういうところは弊社を利用することでカバーできます。また、期限も15日間などに限定されているので、長期間使い続けようと思ったら一度帰国する必要もあります。楽天モバイルのように無料は2GBまでというところもあるので、それ以降でトリファを使っていただくこともできます。お客さま自身がいいとこ取りをしながら使っているのは、われわれも確認しています。
―― 確かに、プランも限定されていますし、容量制限もあります。そういう意味だと、より大容量を使う人が増えているのでしょうか。
嘉名氏 弊社が見ている限りでは、昨年(2024年)に比べて(ユーザーが購入する)容量が大きくなっています。ライト層も入ってきていますが、それを踏まえても明らかに使用量が増えています。
―― 海外だと、普段よりスマホを使うことも多いですからね。
嘉名氏 国ごとの事情もあります。例えばトリファであれば、中国でもLINEが使えます。ホテルに着いてもWi-Fiにつなげるより、トリファでつないだ方が快適になります。また、欧州圏でもホテルのWi-Fiよりスピードが出ているから使っているということもあります。
―― それも海外旅行の“あるある”ですね。とはいえ、無制限というのは海外eSIMの中では珍しいと思います。制限はないのでしょうか。
嘉名氏 少なくとも、弊社側での制限はかけていません。どこの通信事業者もサーキットブレークのような仕組み(公平性制御のため、一定容量使うとかかる制限)がありますが、そこに引っ掛かっても裏側で調整したり、別のSIMを用意したりというオペレーションを組んでいます。
―― そこは現地のMNOから直接仕入れているからこそのところですね。
嘉名氏 はい。条件自体は教えてもらえませんが、通信会社とのSLA(Service Level Agreement=サービス品質の合意)は結んでいます。
―― 国によって事情が違うので、なかなか調達が難しそうですが、どうされているのでしょうか。
嘉名氏 基本的にはそういうパッケージの座組にしています。もちろん、国ごとに仕入れ原価は違いますが、あまりにも料金が違うとユーザーに不便なので、コストを吸収する国とそうでない国はわれわれのインナーで決めて提供しています。
SIMと海外旅行保険は同じタイミングで準備している人が多い
―― トリファは通信にとどまらず、海外に関するサービスを広げていくつもりと伺いました。通信の“次”は何を考えているのでしょうか。
嘉名氏 事業として仕込み初めているものはいくつかあります。リリースの順番は前後するかもしれませんが、事業として比較的ライトに始めやすいものには、海外旅行保険などがあります。海外におけるペイメント(決済)にもまだ改善の余地はありますが、ファイナンスになってくると資金も必要(なので時間がかかる)です。そういったスケジュールでやっていくことを考えています。
―― 確かに、渡航前にeSIMと一緒に海外旅行保険に入れたら便利ですね。自分も、その2つはまとめて渡航前にラウンジで買っています。
嘉名氏 ユーザーが海外旅行に行く前にそれぞれ何をしているかを調査すると、意外とSIMと保険は同じタイミングなんです。大体皆さんどちらも1日前から3日前ぐらいに買われているので、一緒に販売することのベネフィットを感じていただけると思います。
―― ただ、保険もそうですし、決済も許認可が必要です。
嘉名氏 ステップバイステップで考えています。フェーズを分けて事業を進められればと考えています。保険も、われわれが単独で保険会社を立ち上げるというより、大きな保険会社と提携したいですね。エンジニアっぽい言い方ですが、僕らも車輪の再発明をしたいのではなく、シームレスな体験を届けたい。ですから、既にあるものはいろいろな会社と協力しながらお届けできればと考えています。
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