海外eSIMの「トリファ」が急成長を遂げたワケ 体験に基づくサービス設計、海外キャリアと直接連携も強みに(4/4 ページ)
レンタルWi-Fiに代わる海外での通信手段として、eSIMを提供する事業者が増えている。国内ではトリファが急成長しており、7月にはテレビCMも開始した。ライバルも多い中、どのような戦略でeSIMサービスを提供していくのか、代表取締役の嘉名雅俊氏に話を聞いた。
国内MVNOとの提携も前向きに考えている
―― 逆に、MVNOと提携して販売してもらうというような考えはありますか。海外ローミングに対応していないので、相性はいいと思います。
嘉名氏 前向きに考えていますし、実はMVNOに引き合いもいただいています。弊社ともしても、ぜひ何か形にできればと考えています。
―― 海外進出もしているというのが驚きました。国内発の事業者でそういった動きをしているところがあまりありません。
嘉名氏 海外旅行にeSIMを使うというのは、グローバル規模で起きているパラダイムシフトです。まだまだ会社として大きいわけではありませんが、そこには取り組んでいます。サービスとしてチューニングしているのは台湾、韓国、香港で、これら3つは言語と決済の両方が対応しています。台湾には実際に人が行き、マーケティングもしています。
―― 日本から直接サービスは提供できそうですが、人が現地に行くと効果があるのでしょうか。
嘉名氏 台湾の人たちは、そもそもレンタルWi-Fiを使わないので、弊社としての打ち出し方やメッセージングは日本と変わってきます。そういうことを現地に行き、台湾の人にヒアリングして、何がピンとくるかをちゃんとやらなければ、そもそも立ち上げられなかったと思います。
取材を終えて:海外eSIMの掘り起こしに成功、体験に基づくサービス設計も効果的
日本からトリファのような事業者が出てきて、それが伸びているのには驚きもあった。世界各国を見渡しても海外eSIM事業者はスタートアップが多いものの、陸続きのアジアや欧州とは異なり、日本では“SIMを入れ替える”という文化自体があまり定着していないからだ。SIMロックが原則禁止になったのも、2021年のことでそこからまだ4年もたっていない。
一方で、レンタルWi-Fiがここまで普及していることを踏まえると、掘り起こせるニーズは確実にある。料金が安く、専用機器も不要で使い勝手もいいからだ。その掘り起こしに成功したのが、トリファだったといえる。インタビューでの話を聞いていると、嘉名氏の経験に基づいたサービスの作り込みに、成功の秘訣(ひけつ)があるように感じた。海外旅行好きで現地SIMまで買っていた同氏の経験は、ペインポイントをつぶすのに役に立っていることが分かる。
保険などのサービスまで一緒に購入できるスーパーアプリ化を志向しているのも、同社のユニークなところだ。確かに、eSIMと海外旅行保険を同じアプリから購入できれば、利便性が高い。ここでは一例として保険が挙げられていたが、同じような商材は他にもあるはずだ。海外のeSIM事業者でここまでできているところは少ないため、日本に上陸する“黒船”に対する差別化にもなりそうだと感じた。
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