「冷やし中華なんてこれだけで……」 なぜミツカンはSNSで炎上したのか 味の素“冷凍ギョーザ”の成功事例との差は(2/2 ページ)
ミツカンのポストはなぜ炎上し、謝罪に至ったのでしょうか。振り返ってみます。
Xの論争に参加したわけではないことを表明したが……
謝罪文でミツカンは「夏季休暇の時期に合わせて投稿を企画していたものでした」と説明し、Xの論争に参加したわけではないことを表明しています。
しかし、タイミングとしては、悪手でした。冷やし中華もそうめん同様、イメージよりも作る側の負担が大きい献立です。やはりたっぷりのお湯で麺をゆでなければならず、さらに薄焼き卵を焼いて、きゅうりやハムを細かい千切りにし、トマトを添えるなどの手間が必要です。
こうした手間は、家族の健康のためにバランスよく栄養を取ってもらいたいという主婦の思いの表れです。しかし「具はいらない」と投稿したことで、その手間を食品メーカーが不要だと切り捨てたようにも捉えられます。仕事と家事に奮闘する主婦の苦労を無下にされたと感じた人が多かったのでしょう。
ポストが炎上した2日後の8月15日、ミツカンは謝罪を行い、投稿を削除しました。しかし、謝罪や削除をしたことで、「具材を作ることは不要な努力だと発言した」ことを認めた格好にもなっています。
また、ミツカンは炎上した投稿を行った翌日である14日、具材がたっぷり乗った冷やし中華のレシピを掲載していました。スケジュール通りに公式アカウントを運営しているのだと思いますが、タイミングとしては失敗です。
タイミングを誤った炎上事例としては、ウォルト・ディズニー・ジャパンの公式アカウントが2015年8月10日にXに投稿した、「なんでもない日おめでとう。」(原文ママ)があります(参考記事)。
これは、ディズニー映画「不思議の国のアリス」で使われている楽曲の歌詞の一部なのですが、投稿された8月9日は長崎に原爆が投下された日であったことから、配慮が足りないと炎上し、ウォルト・ディズニー・ジャパンは謝罪しました。
ミツカンの8月14日の投稿は大きな炎上にはなりませんでしたが、リプライには「具なしでいいのでは?」などの意見が多数書き込まれています。炎上したポストを削除したにもかかわらず、こちらのポストに批判コメントが残ってしまいました。
Xではジェンダーについての話題が燃えやすいことも要因です。今回の論争は特に性別を限定するものではないのですが、一般的に料理を担当するのが女性であることから、ジェンダー論にも結び付きました。
なお、女性ユーザーが多いThreadsでもこのテーマは投稿されていましたが、「なぜ炎上?」「なぜ女性蔑視の話に?」といった反応が多く見られます。Xの特色も大きく影響したのだと思われます。
SNSの発言は顧客をイメージすることが重要
家庭料理に関する論争といえば、味の素冷凍食品のX公式アカウント(@ff_ajinomoto)の投稿が話題になったことを思い出します。
2020年8月、ある主婦が冷凍ギョーザを焼いて出したところ、夫に「手抜きだ」と言われたと投稿しました。この投稿に対して、味の素冷凍食品の公式アカウントは「冷凍餃子を使うことは『手抜き』ではなく、手“間”抜きですよ!」(原文ママ)と即座に返信し、お母さんの手間を工場という大きな台所が代わるので、お子さんと触れ合うなど、家族の時間を作ってほしいと訴えました。
この投稿は絶賛され、メディアに取り上げられるなどの大反響を呼びました。その後、味の素冷凍食品はこの投稿に関連した動画を作成し、工場で丁寧にギョーザが作られる様子を公開しています。
企業の公式アカウント運営は炎上リスクがあるとはいえ、味の素冷凍食品のようにブランドのイメージ向上につながる例も多数あります。
今回のミツカンも、家庭料理に使われる食品を数多く販売しており、公式アカウントには44万を超えるフォロワーがレシピなどの投稿を楽しみにしています。
夏休みのさなか、家族のために料理を作っている人達がどんな気持ちなのかを推し量り、寄り添った投稿をすべきであったと思います。そして、炎上後の対応は正しかったのかも含めて、検討していく必要がありそうです。
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