インタビュー

Y!mobileの新料金プランは「捉え方次第で値下げ」「楽天モバイルとUQ mobileを強く意識」 キーパーソンを直撃(3/3 ページ)

ソフトバンクがY!mobile向け新料金プラン「シンプル3」を9月25日から提供する。ユーザーメリットとしては、Sプランのデータ容量が1GB増えている他、海外でのデータローミングも(26年夏以降)2GBまで無料になる。割引後の金額が大きく変わらないのであれば、あえて新料金プランを投入する必要があったのか。ソフトバンクの専務執行役員、寺尾洋幸氏に聞いた。

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秋に向けて店頭で“eSIMのトレーニング”を積んでいる

―― スタッフからの提案という意味だと、先週、ソフトバンクショップで機種変更した際にかなり強くeSIMを勧められました。今、eSIMを推進しているのでしょうか。

寺尾氏 練習をしているところです。皆さん、eSIMは初めてなことが多いので、すごく練習をしておかなければいけません。物理SIMとは違ったオペレーションになるので、その練習をしているところです。

―― 9月にeSIMが盛り上がりそうですが。

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寺尾氏 最初はLINEMOで何年かやって、ようやく形になってきました。ただ、正直もうひと工夫が必要です。iPhone間のeSIMクイック転送はものすごく簡単になりましたし、Pixelも動き始めていますが、課題になっているのがOS間の移行で、ここに対応するにはまだ少し時間がかかりそうです(※iOS 26およびAndroid 16は、OSをまたいだeSIM転送機能を搭載しているが、キャリアの対応が必要になる)。

 秋の段階ではまだ誰もできていないので、再発行の手続きを踏んでもらわなければなりません。そこが仕組み的な課題として残ります。ただ、それができるようになれば、物理SIMを移動させるのと同じような感覚になるのではないでしょうか。この秋に向け、お店でもeSIMのトレーニングをだいぶ積んできました。

海外データ通信の無料が「2GB」の理由 短期留学にも耐えられる?

―― ローミングを2GB無料にしました。他社も無料はやっていますが、そんなにニーズがあるのでしょうか。

寺尾氏 大体の日本人は海外に行くと言っても1年に1回程度で、すごく(ニーズが)あるかというと、年1回レベルです。ただ、いざ行ったときにどれを選ぶかがすごく難しい。何とか入れたいとずっとやってきて、ようやく入れられたので個人的には満足しています。

 今回は2GBで切りましたが、コスト的なことを考えるとY!mobileは(海外あんしん定額の24時間を無料したと仮定すると)5日から7日ぶんまでが限度です。ただ、それだと短期留学のような使い方に耐えられません。短期留学に行った子どもに、「自分でSIMを買ってこい」というのも、これまた難しい。「なんとかのWi-Fi」もありますが、これまた難しいですし、お金もかかります。

 逆に、アメリカのような国だと、どこにでもWi-Fiがあるので、2GBで連絡やチケットの購入なども済んでしまいます。もっと使いたいなら、(ソフトバンクなど)他のブランドもありますが、ミニマムなことができるのは2GBです。2GBになるまでの間は、海外あんしん定額の7日間でやっていますが、そのトラフィックを見て足りないようであれば、「5GBにして100円ください」となるかもしれません。フレームができれば、あとは料金体系の中でいろいろできるようになります。


海外ローミングは2GBまで無料になる

―― 他社は15日で切っていますが、短期留学狙いなのでしょうか。

寺尾氏 どうして15日で切っているのかは分かりませんが、ルール的には、他国に常駐して使うようなサービスは売るなというのはあります。そのコストやバランスを見ています。

―― アメリカ放題は常駐できてしまいますが(笑)。

寺尾氏 あれは相手側の事業者と協定を結んでいます。あれがあるので、絶対にダメということではないと思いますが、2GBで切っておけばむちゃくちゃなことは起こりません。2GBだとYouTubeを見たりすると一瞬でなくなってしまいますが、そういうものはWi-Fiで見てください。日本よりいいネットワークはまずないので、Wi-Fiでという割り切りです。

取材を終えて:競争力を維持しながら経済圏を意識した新料金に

 Y!mobileのシンプル3は、割引後の料金を据え置きにしつつ、割引の比重を高めることで、PayPayカード(ゴールド)との連動性をより強くした。寺尾氏の発言からは、他社との競争環境を踏まえて通信料は維持しつつ、経済圏で稼ぐことを意識した料金設計であることがうかがえた。ユーザーが選択しやすいよう、無料のローミングやPayPayの決済回数に応じたデータ容量の加算などの特典も用意されている。

 低容量プランを軒並み改定してしまった他社とは異なり、解約抑止の施策を入れ、獲得に強いプランSの勢いを削がないようにしたと捉えることもできる。一方で、固定回線やクレジットカードの役割が大きくなると、ユーザーが気軽に契約しづらくなるのも事実だ。これまでのような新規契約のペースを維持できるかどうかには、注目しておきたい。

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