アドビが「Creative Cloud」を2026年版にアップデート 主力アプリに新しいAI機能/AIモデルを実装:Adobe MAX 2025
アドビのサブスクリプションサービス「Adobe Creative Cloud」が2026年版にアップデートする。この記事では、その概要をお伝えする。
アドビは10月28日、有料サブスクリプションサービス「Adobe Creative Cloud(Adobe CC)」を2026年版にアップデートした。有効なサブスクリプション契約をしているユーザーは、無償でアプリを最新版にバージョンアップできる。
この記事では、Adobe CCを構成する主要なアプリ/サービスのアップデート内容を紹介する。なお、一部の機能は全ユーザーを対象とするパブリックβ(ベータ)、または希望者に順次提供するプライベートβ提供となり、一部はβ版アプリを通して提供される(βアプリは製品版アプリと共存可能)。
Adobe Firefly:Image Modelの新バージョンのテストを開始
アドビの生成AI「Adobe Firefly」では、Web版のトップ画面が刷新される他、以下の機能が実装される。いずれも商用利用可能だ。
- 画像生成用モデルとして「Firefly Image Model 5」が登場(プレビュー版)
- 最大で2K解像度(約400万画素)の画像生成が可能
- 「画像を編集」の実装(パブリックβ版)
- 自然言語(プロンプト)で画像の編集が可能
- 「サウンドトラックの生成」の実装(パブリックβ)
- 音楽の「雰囲気」と「スタイル」をプロンプトで指定するとそれに合ったトラックを生成
- アップロードした動画を参考にプロンプトの提案を受けることも可能
- 生成したトラックを合成した動画のダウンロードすることも可能
- トラックの「エネルギー」や「テンポ」は3段階から指示可能
- 最大300秒(5分)のトラックを作成可(消費クレジットは長さに応じて変動)
- 「音声を生成」の実装(パブリックβ)
- 入力したテキストを読ませることが可能
- 日本語を含む20カ国語に対応
- 声質はテンプレートから選択可能
- 「動画を編集」(プライベートβ)
- タイムラインベースのAIを使ってアップロードした動画を編集可能
- 新たなパートナーモデルの追加
Illustrator:ユーザーリクエストに応えたパフォーマンスアップを実施
ベクターベースのグラフィックスデザインツール「Illustrator」では、ユーザーからのリクエストに応える形での機能改善が行われている。主な機能改善/新機能は以下の通りだ。
- フォントメニューのアップデート
- フォントを自分で用途/目的別にグルーピングできる「ライブラリ」を新規実装
- Adobe Fonts収載のフォントをアプリ内で探せる「もっと探す」を新規実装
- フォント自体の読み込みパフォーマンスも改善
- 「ベクターを生成」に新モデルを追加
- より高品質な「Firefly Vector 4」を選択可能に
- 「幾何学ガイド」の新設
- 「スマートガイド」の一種として実装(デフォルトで表示される)
- その名の通り、幾何学模様を作る際に位置合わせなどの支援をしてくれる
- 「グラデーション」と「カラー」の機能向上
- 従来のグラデーション(クラシック)に加えて「知覚的」を追加
- 従来と比べると中間色の濁りを減らしている
- グラデーションのプリセットの
- 従来のグラデーション(クラシック)に加えて「知覚的」を追加
- 「アートボード」の機能向上
- 「ターンテーブル」の実装(βアプリのみ)
- 作ったベクター映像を上下/左右に“回転”させる機能
- 生成AIを活用
Photoshop:AIを使ったアップスケール機能を新規実装
画像レタッチアプリ「Photoshop」では、以下の新機能の実装とアップデートが行われる。
- 「調和」の実装
- オブジェクト/人物と背景を合成する際にAIがサポート
- 合成プロセスの大部分を自動で行ってくれるので、ユーザーは微調整するだけでOK
- 「生成アップスケール」の実装
- 解像度の低い画像を最大4K解像度にまでアップスケール可能
- 自社の「Firefly Upscaler」の他、Topaz Labsのモデル(Gigapixel/Bloom)を選択可
- 「生成塗りつぶし」でパートナーモデルを利用可能に
- 「Google Gemini 2.5 Nano Banana」「Black Forest Labs FLUX.1 Kontext Pro」などに対応
- 自社の「Firefly Image Model」を利用した際の品質も向上
- 「色調補正パネル」の刷新
- オンデバイスでの「被写体を選択」「背景を削除」のパフォーマンス向上
- アプリ内で「Adobe Stock」の画像を取り入れ可能に
- Android版アプリの新規提供
Lightroom:パフォーマンスの向上と機能改善が中心
写真の編集/現像を行う「Adobe Lightroom」では、以下の新機能の実装とアップデートが行われる。
- 「クイックアクション」の機能追加
- 「傷補正」の実装(モバイル版/Web版)
- 「風景」で雪を識別可能に(Classicを含む全バージョン)
- 「生成AI削除」の機能改善(Classicを含む全バージョン)
- 影の認識に対応することで、削除の精度を改善
- 「アシスト選別」の実装(アーリーアクセス扱い:デスクトップ版/Classic)
- 写真の選別をAIベースで高速化
- センサーやレンズのゴミを自動検出/除去(デスクトップ版/Classic)
- Adobe Camera RAWにも実装
Premiere:AIベースのマスクをβ実装
動画編集アプリ「Adobe Premiere」は、以下の通り新機能のβ実装がメインとなる。
- マスク機能を改善(いずれもパブリックβ)
- 「オブジェクトマスク」は背景削除やトランジションを生成AIベースで実施
- 「長方形/楕円(だえん)/ペンマスク」は既存のエンジンを刷新し高速化
- 「高速ベクターマスク」はトラッキング速度の向上/双方向トラッキング/3D遠近法トラッキングを実現するために実装
- 「メディアインテリジェンス」で音楽検索と類似検索が可能に(11月実装予定)
- 「Frame.io V4」「Adobe Stock」のパネルを実装(11月実装予定)
なお、iPhone版アプリでは近日中にYouTubeとの連携機能も実装される。主にショート動画(YouTube Shorts)の作成を想定したもので、素早くコンテンツを作れるようになるという。
Adobe Express:AIアシスタントをβ実装
メディア作成アプリ「Adobe Express」では、デスクトップ版に「AIアシスタント」という機能がβ実装される。これは編集ツールに生成AIを組み込んだもので、プロンプトを使った編集が可能になる。
ただし、本機能はプレミアム(有料)プランのユーザーで、かつデスクトップ版を英語で利用している場合にのみ試用できる。日本語への対応は近日中に行われる予定だ。
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