「Adobe Creative Cloud」が2023年版に コラボレーションを意識した機能強化も:Adobe MAX 2022
ハイブリッドイベント「Adobe MAX 2022」の開催に合わせて、Adobeがサブスクリプションサービス「Adobe Creative Cloud」のメジャーアップデートを実施する。テーマは「速さ」と「使いやすさ&スーパーパワー」だという。
Adobeは10月18日(日本時間)、有料サブスクリプションサービス「Adobe Creative Cloud(Adobe CC)」を2023年版にアップデートした。有効なサブスクリプション契約をしているユーザーは、無償でアプリを最新版にバージョンアップできる。
この記事では、Adobe CCを構成する主要なアプリのアップデート内容を紹介する。
2023年版のAdobe CCでは「速さ」と「使いやすさ&スーパーパワー」の2点を重点に置いて機能強化をしたという。スーパーパワーは「Adobe Sensei(AdobeのAI技術)」によってもたらされるものだという
Photoshop
静止画のレタッチツール「Adobe Photoshop」では、デスクトップ版(Windows版/macOS版)、iPad版、Web版(一部の国/地域でβ提供中)においてアップデートが行われる。デスクトップ版とiPad版の主なアップデート内容は以下の通りだ。
デスクトップ版
- 「オブジェクト選択」ツールの精度と品質の向上
- 複雑なオブジェクトや領域(空、建物、水、床材、地面など)を認識可能に
- 「領域の削除と塗りつぶし」の操作を簡素化
- 「コンテンツに応じた塗りつぶし」において不要なオブジェクトをクリックした後、Shiftキーを押しながらDeleteキーを押すと自動的に塗りつぶしを実行してくれる
- Illustratorのテキストをコピー&ペーストする機能の追加
- 編集可能なテキストを属性を保持したままコピー&ペースト可能
- ニューラルフィルターの強化と新フィルター追加
- 予告されていた「写真修復」フィルターを本実装
- 「レビュー用に共有」のβ実装
- アプリ内で他者に編集中のコンテンツ(ファイル)のプレビューを共有可能
- 共有先にはURL(リンク)を送付するだけでOK
- 「ガイド」の機能強化
- 「コンテンツ認証機能」のβ実装
- コンテンツの帰属情報をファイルに埋め込むことが可能に
- 改変/加工履歴の追跡も可能
- 「Adobe Stock」のアセットにもコンテンツクレデンシャルが付与される
- 「Adobe Substance」のマテリアルの読み込みを正式サポート
- 3Dマテリアルも読み込み可能
なお「レビュー用に共有」は、ベクターグラフィックツール「Illustrator」のデスクトップ版にもβ実装される。
iPad版
iPad版に実装される主な新機能は、デスクトップ版では既に利用できる。
- 「背景を除去」の実装
- 画像の一番目立つオブジェクトをタップするだけで残りの背景を除去可能
- 「コンテンツに応じた塗りつぶし」の実装
- 塗りつぶしたい(隠したい)部分を選択して実行するだけでOK
- 「自動トーン補正」「自動コントラスト」「自動カラー補正」の実装
- 人物写真における「被写体を選択」の強化
Lightroom/Lightroom Classic
写真の管理/現像ツール「Adobe Lightroom」(Windows/macOS版、Android版、iOS版、iPadOS版)と「Adobe Lightroom Classic」(Windows/macOS版)では、主に以下の機能改善/追加が行われる。
新しい「マスクツール」の実装
LightroomのWindows/macOS版とLightroom Classicには、AIベースの「マスクツール」として新たに「人物の選択」「オブジェクトを選択」「背景を選択」が追加される。
「人物の選択」では、写真に写っている個人やグループを検出できる。人物の全体だけでなく、特定の身体パーツを選択することも可能だ。
「オブジェクトを選択」ではその名の通り、加工を行いたいオブジェクト(要素)の選択を手伝ってくれる。使い方は簡単で、ブラシ選択ツールでオブジェクト周辺をペイントするか、矩形選択ツールで加工したいオブジェクトの周辺を囲むだけでよい。
「背景を選択」ではその名の通り、背景のマスクを直接生成できる。従来は「被写体のマスクを作成→反転」という手順で背景のマスクを生成していたが、新バージョンでは反転作業抜きで直接背景をマスク指定できるようになる。
「アダプティブプリセット」のサポート拡大と追加
LightroomのWindows/macOS版とLightroom Classicでは、6月のアップデートで「アダプティブプリセット」が新規実装された。
今回のメジャーアップデートではLightroomのiOS版とiPadOS版でもアダプティブプリセットを利用できるようになった他、ポートレート(人物)用のプリセットが追加される。
iOS版とiPadOS版のLightroomでもアダプティブプリセットを利用可能になった。既に対応しているWindows/macOS版とLightroom Classicを含めて、ポートレート用のアダプティブプリセットも追加されている
マスク機能の改善
LightroomのWindows/macOS版では、ローカル調整に適用されるマスクの強度を調整する「マスク量スライダー」が実装される。
Android版ではマスク機能を利用できる端末が限定されていたが(※1)、今回のアップデートで全ての端末で「被写体を選択」「空を選択」のマスクを作成できるようになった。これはサーバによる処理サポートが導入されたことによる。
(※1)メインメモリが6GB以上の端末で正式サポート。メインメモリが4GB以上6GB未満の端末では「テクノロジープレビュー」として利用可能
「コンテンツに応じた削除」の実装
全てのLightroomとLightroom Classicに新規実装される「コンテンツに応じた削除」は、写真の修復や不要な部分の除去を自動的に行う機能だ。基本的な仕組みはPhotoshopに実装されている「コンテンツに応じた塗りつぶし」と同様である。
その他の更新
その他、アプリごとに以下の新機能や機能改善が行われる。
- Windows/macOS版Lightroom
- 編集しながら「比較表示ビュー」を行う機能の追加
- GPUアクセラレーションの適用
- Lightroom Classic
- ワークスペースのカスタマイズに対応(左右パネルの入れ替えもOK)
- スマートフォンやタブレットからデータ読み込みの高速化(Windows版のみ)
Premiere Pro
ビデオ編集アプリ「Premiere Pro」では、以下の機能変更が行われる。
- 「レガシータイトル」の完全廃止
- 大半は「エッセンシャルグラフィックスパネル」で代替可能
- モーショングラフィックス・テンプレートの強化
- 動作パフォーマンスの改善(最大2倍の高速化)
- エッセンシャルグラフィックスパネルと連携可能に
- 「アライメントコントロール」の柔軟化
- 「ARRI ALEXA 35」のサポート
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