SuicaとPASMOが共同でコード決済を提供するワケ 「teppay」が目指す“キャッシュレス疲れ”の解消(2/2 ページ)
JR東日本、パスモ、PASMO協議会は11月25日、2026年秋以降に新コード決済「teppay」を提供すると発表した。会見では名称の意図や開始時期、機能、利用者調査に基づく開発背景を説明した。teppayはモバイルSuicaとPASMOのアップデートとして実装され、新アプリ不要で利用できる。
コード決済サービスの共用化を決めた背景 利用者調査が示した「キャッシュレス疲れ」とは
両社が単独ではなく共同でコード決済サービスを提供する理由について、中川氏はキャッシュレス環境の変化を挙げる。SuicaとPASMOは2007年の相互利用開始以降、交通と電子マネー領域でキャッシュレス化を進めてきたが、ここ数年で決済手段が急増し、利用者の選択肢が増えた一方で操作や管理が複雑化したと説明した。この複雑化により、利用者の多くがキャッシュレスに対してストレスを抱えている実態が浮き彫りになったという。
首都圏の1都3県の1500人を対象としたインターネットアンケート調査では、約9割がキャッシュレスの多様化に伴う何らかの負担を感じているという結果が得られた。「使いこなせていない」「分散させたくない」「複数サービスを管理したくない」といった回答が多く、急速な普及が逆に抵抗感や不安を生んでいる傾向が明らかになった。さらに、3人に1人がキャッシュレス利用に踏み切れていない状況も確認され、利用者の8割が「なじみのあるブランドに決済をまとめたい」と回答した。
1都3県の1500人を対象とした調査では、約9割がキャッシュレスの多様化に伴う何らかの負担を感じている。「使いこなせていない」「分散させたくない」「複数サービスを管理したくない」との回答が多く、急速な普及が逆に抵抗感や不安を生んでいる傾向が明らかになった
SuicaとPASMOは、多くの人にとって初めてのキャッシュレス体験となる利用者が多く、調査では半数以上が両サービスを人生で初めて使ったキャッシュレス手段として挙げた。30代以下ではその割合が7割に達したとしている。長期にわたり通勤や買い物の場面で接点を持ち続けたことにより、利用者の8割以上が安心感と信頼を抱いているという調査結果が示された。
SuicaとPASMOは、多くの人にとって人生初のキャッシュレス体験となっている。調査では半数以上がこれらを初めて使った手段として挙げ、30代以下ではその割合が7割に達した。長い歴史を持つ両サービスが、世代を問わずキャッシュレス決済の「入り口」として機能し、広く親しまれてきた
機能を1つに束ね複数アプリの使い分け負担を軽減 teppayが目指すユーザー体験
こうした調査結果を踏まえ、両社は信頼性の高いブランドを軸に決済をまとめられる環境を構築し、ストレスの少ないキャッシュレス体験を提供することを目的にteppayを企画したそうだ。
では、なぜSuicaとPASMOというライバル関係にある2社が共同でコード決済を提供するのだろうか? パスモの町田武士社長は「提携に至った背景は大きく2点ある」という。1つ目にJR東日本が掲げる「お客さまのお困り事の解決」や「地域貢献」のコンセプトに強く共感したことを挙げた。これまでの交通領域と電子マネー領域で培ってきた関係を踏まえ、「一緒にストレスのないキャッシュレス社会を実現できると考えた」と説明した。
2つ目に、モバイルSuicaとモバイルPASMOに単独でコード決済を実装するのではなく、同じ仕様かつ同じ機能を提供することで分かりやすさと便利さをともに高められる点を示した。町田氏は、両者が長年相互利用を続けてきたからこそ得られた判断であり、「共通のプラットフォームを採用することで経済合理性も高くなる」と述べた。
モバイルSuicaとモバイルPASMOが個別にコード決済機能を実装せず、同一サービスを提供することで、分かりやすさと利便性を共に高める。町田氏は、長年の相互利用の実績に基づく判断だとし、「共通プラットフォームの採用で経済合理性も高まる」と述べた。両者が連携し、効率的かつ利用者本位のシステムを構築する意義を強調した形だ
連携による具体的な効果として期待されるのは、異なるアプリ間でteppay残高を送受信できることだ。町田氏は、「異なるアプリでの残高のやりとりは他のコード決済にはない大きな特徴」とし、ユーザーの利便性を大きく引き上げると強調した。
連携による最大の効果は、異なるアプリ間でteppay残高を送受信できることだ。町田氏はこれを「他のコード決済にはない大きな特徴」と位置付け、ユーザーの利便性を大きく引き上げると強調した。アプリの垣根を越えた送金機能が、サービスの独自性と競争力を支える鍵となる
さらに、地域限定バリュー「バリチケ(バリューチケット)」をSuica・PASMO双方のユーザーに配布できることで、より多くの地域で活用が広がる点を紹介した。PASMO沿線の地域限定チケットをSuicaユーザーに、JR沿線のものをPASMOユーザーに配布することで、沿線外居住者にもアプローチできるようになり、移動や消費が広がる。町田氏は「より広い範囲で、より多くのお客さまの移動やお買い物を創出することができる」と述べ、地域の関係人口増加や消費活性化への期待を示した。
地域限定「バリチケ」をSuica・PASMO双方へ配布できるため、活用の幅が広がる。互いの沿線チケットをクロスして届けることで、沿線外居住者への訴求が可能となり、移動や消費の拡大につながる。両サービスの連携が、地域をまたいだ新たな人の流れを生み出す
teppayの提供開始はモバイルSuicaが2026年秋以降、モバイルPASMOが2027年春となっている。JR東日本とパスモの両社は今後も詳細な利用方法や導入店舗などの情報を順次発表する予定だとしており、コード決済と交通領域を統合した形での利便性向上を目指す姿勢を強調した。SuicaとPASMOが培ってきた信頼を基盤に、決済を分散させず、負担を最小限に抑える仕組みとしてteppayの普及を図る方針を示した。
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