「Xperia 10 VII」は予想以上に売れている 7万円台のミッドレンジに込めた価値は何か、ソニーに聞いた(1/3 ページ)
ソニーは10月9日に7万5千円前後の「Xperia 10 VII」を発売、即撮りボタンや新デザインを採用した。120Hz画面や最大4回のOS更新など基本性能を底上げし、長く安心して使える実用性重視の端末だ。大幅進化のコンセプトやボタン搭載の理由について、ソニーに詳細な話を聞いた。
ソニーが10月9日に発売した「Xperia 10 VII」は、市場想定価格7万5000円前後(ソニーストア価格は7万4800円)のミッドレンジスマートフォンだ。先代からデザインを刷新し、アウトカメラを水平配置に変更した他、シリーズ初となる物理キー「即撮りボタン」を搭載。撮りたい瞬間を逃さない速写性を実現した。
機能面では、メインカメラのセンサー大型化に加え、ディスプレイの120Hz駆動化、スピーカー音質の向上など基本性能を底上げした。さらに、最大4回のOS更新と6年間のセキュリティアップデートを保証し、バッテリーの長寿命化技術も盛り込むなど、長く安心して使える実用性を重視した「ミッドレンジの新定番」といえる一台に仕上がっている。
先代から大幅に進化したXperia 10 VIIはどのようなコンセプトで開発されたのか、そしてなぜ10シリーズとしては初めてシャッターボタンを搭載する判断に至ったのか。ソニーのグローバルセールス&マーケティング モバイルマーケティング部門 モバイルマーケティング部 統括部長の湯原真司氏と、共創戦略推進部門 モバイルコミュニケーションズ商品企画3課 統括課長の市野利幸氏の2人に話を聞いた。
共創戦略推進部門 モバイルコミュニケーションズ商品企画3課 統括課長 市野利幸氏(写真=左)と、グローバルセールス&マーケティング モバイルマーケティング部門 モバイルマーケティング部 統括部長 湯原真司氏(写真=右)
- 共創戦略推進部門 モバイルコミュニケーションズ商品企画3課 統括課長 市野利幸氏
- グローバルセールス&マーケティング モバイルマーケティング部門 モバイルマーケティング部 統括部長 湯原真司氏
ターゲットを「広げた」結果、能動的な理由からXperia 10 VIIを選ぶ人も
―― ターゲット層について教えてください。
湯原氏 明確に今回はターゲットを広げています。今までの10シリーズは、いわゆるベーシックな「性能のバランス」と「安心感(バッテリー持ちなど)」を求めるお客さまが中心でした。もちろんそこもしっかりターゲットにしつつ、さらに「広げよう」ということで、先ほどの撮影体験やディスプレイ、フロントスピーカーの進化で、コンテンツを視聴する体験において、もう一歩「オーディオビジュアルや撮影を楽しむ」価値を感じていただける方をターゲットに含めました。
実際に(数字としての)変化は見えています。これまでの10シリーズは、もともと10シリーズを使っていた方や、過去のXperia Aceシリーズを使っていた方がボリュームゾーンでした。しかし今回は、これまで5シリーズやXperia XZなど、かつてのハイエンド機種を使っていたお客さまも、「今回のXperia 10 VIIはいいな」と感じて購入いただく率が明確に増えています。
―― 2023年の「Xperia 5 V」以降、5シリーズの後継モデルが登場していないことも、(Xperia 10 VIIへの乗り換えに)影響しているのでしょうか。
湯原氏 あると思います。ただ、今回購入者アンケートをとってみて、非常に興味深い変化がはっきりと見えました。これまでの10シリーズにおける購入動機は、「動作が遅くなった」「バッテリーが劣化した」といった、「買い替えざるを得ない」という受動的な理由が約7割を占めていました。「新機種に興味がある」という理由は残り3割程度だったのです。
2023年の「Xperia 5 V」。この機種がXperia 10 VIIへの乗り換えに影響しているのかと質問したところ、湯原氏は「あると思う」としつつ、購入者アンケートで見えてきた変化について語った
しかし、今回のXperia 10 VIIに関しては、「この機種に興味を持ったから」という能動的な理由で購入された方が5割以上に急増しました。これまでの3割から5割へと明確に比率が上がっています。もちろん、従来の5シリーズユーザーの方もいらっしゃいますが、「5シリーズがないから仕方なく」ではなく、「この新機種なら自分にフィットするかもしれない」と、ポジティブに選んでいただけているのが現状です。
―― となると、Xperia 10 VIIのどういった点にひかれて購入されているのでしょうか。
湯原氏 データを見ていると、デザインが支持されていることが分かりました。画面比率が19.5:9に変わったことによるフィット感や、ルックスの良さが評価されています。機能面では、即撮りボタン、カメラの画質向上、フロントステレオスピーカーによる音質が購入時の重視点として上位に挙がっています。
「Xperia 10 VIIは予想以上にはっきりと売れている」――ソニーの手応え
―― 例年(2024年)夏頃に発表されていた10シリーズですが、今回は秋になりました。あえてこの時期にずらした理由はあるのでしょうか。
湯原氏 まず発売時期についてですが、Xperiaは毎年決まった時期に出すと決めているわけではなく、モデルごとにそのときのビジネス状況、お客さまの市場状況、買い替えサイクルなどを総合的に判断して決定しています。われわれのマーケティングの視点から、販売の最大化という観点でどこが良いかを議論しており、2025年の10シリーズに関しては、9月発表、10月発売というタイミングがビジネスの最大化にとってベストだろうと総合的に判断しました。
例年は夏頃に発表されてきたXperia 10シリーズを、今回は秋にずらした理由について話す湯原氏。Xperiaは毎年固定の時期に発売すると決めているわけではなく、モデルごとにビジネス状況や市場動向、買い替えサイクルなどを総合的に判断して時期を決定しているという
―― 発売から1カ月ほどたっていますが、現在の売れ行きはいかがですか。
湯原氏 10月までのデータで申し上げますと、10月9日の発売から約1カ月間で、予想以上にはっきりと売れています。初動としては極めて良いスタートを切っています。ソニーストアでも一部在庫切れでお届けにお時間をいただいてしまっている状況で、ご迷惑をおかけしていますが、非常に好調に推移しています。
―― 通信キャリアのオンラインショップや中古販売店などの在庫を見ても、入荷してもすぐ売り切れてしまう状況が続いています。例年の「10」シリーズと比べても売れ行きが良いという感覚ですか。
湯原氏 正直に申し上げますと、その通りです。予想以上に売れている状況です。
―― 価格についてですが、7~8万円台という設定はミッドレンジとしてはやや高めに感じます。3~4万円台の端末も増える中で、価格差分の価値はどこにあるとお考えですか。
市野氏 10シリーズとしては、お客さまに「安心して買っていただく」「安心して使っていただく」という、日常的な使い心地を担保することを目指しています。
具体的には、「安心して使っていただける」点としてSnapdragonの6シリーズと同等のパフォーマンスの高いSnapdragon 6 Gen 3を採用していますし、特に日常的な用途でストレスなく使っていただくために、アプリの容量肥大化も踏まえて8GBのメモリを搭載しました。SoCだけでなく総合的なパフォーマンスを担保しています。
「長く使っていただく」点として、バッテリーが長持ちすることに加え、バッテリーが劣化しにくい(3年たっても劣化しにくい技術)こと、さらにOSのバージョンアップ回数を増やし(従来比で増加)、セキュリティサポート期間も延ばしています。これらにより、安心して長く使っていただけることが、お客さまの需要に応えていると考えており、実際に購入された方の評価も高いです。
「日常的な使い勝手」については、10シリーズの強みである「軽さ」「持ちやすさ」「片手でも使いやすい」という点は先代から継承しています。
また、撮影体験については、ミッドレンジのお客さまですと「暗いところでうまく撮れない」「撮ったつもりが失敗していた」といったベーシックな悩みが多いです。そこで今回、一番よく使う広角のセンサーを大型化したのに加え、「即撮りボタン」を搭載しました。パッと思い立ったときにすぐ撮れる体験を、スペックだけでなくセットでご提案することで、日常的に安心して使っていただける点にこだわっています。
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