コラム

「駅で逆上し、列車遅延に」──“撮り鉄”の危険行為に広がる懸念 JR東日本が注意喚起(2/2 ページ)

人気の列車や珍しい車両を一目見て記録しようとする「撮り鉄」による迷惑行為が目立つ。近年は一眼レフを持たず、スマホで高画質撮影しSNSや動画サイトに即時アップロードできる。スマホ撮影からトラブルにつながる行為が目立つようになった。

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何をすると鉄道営業法に違反する可能性があるのか?

 列車の撮影目的であっても、停車場や線路内に無断で立ち入った場合には、鉄道営業法に違反する可能性がある(鉄道営業法第37条)。駅係員や乗務員の制止を無視して線路に立ち入り、列車の運行に遅延や運休を生じさせた場合も違反の可能性がある。国土交通省もWebサイトで「法的に認められていない線路横断箇所に立入ることは、列車との衝突の恐れがあり、いかなる理由であったとしても踏切道以外で線路を横断する行為は危険です。また、当該立入りは鉄道営業法第37条の違反となる可能性があります」と明示している。


国土交通省はWebサイトにて、踏切以外の場所で線路を横断する行為は、理由の如何に関わらず列車衝突の恐れがあり極めて危険だと明示している。また当該立ち入りは鉄道営業法第37条の違反となる可能性もあり、安全面のみならず法的な観点からも強い警告を発している(出典:国土交通省)

JR東日本が注意喚起──やってはいけないこと7選はコレだ

 ネット上に上がっている危険行為の報告は、鉄道会社としても認識しており、実際にイラスト付きの注意喚起文の公開にまで至っている。JR東日本では、次のような内容をWebサイトで紹介している。

 今般、駅のホームにおいて無断で他のお客さまを撮影し周囲のお客さまにご迷惑をかける行為や、沿線での撮影において線路内に立ち入り列車が非常停車するなど、当社施設内等での撮影においてさまざまな事象が発生しております。

 これらは大変危険を伴う行為であり、周囲のお客さまや沿線の方々のご迷惑となるほか、列車の運行や係員の安全確保など業務の妨げになる場合もございます。また、線路内や立ち入り禁止区域など、鉄道用地に正当な理由なく立ち入る行為は、鉄道営業法等の定めにより違反すると罰則が科されます。

 みなさまの安全確保のためにも、下記の行為はおやめいただきますようお願い申し上げます。

1.線路内や立ち入り禁止区域など、鉄道用地に正当な理由なく立ち入る行為

2.当社施設内および列車内において、無断で他のお客さまや係員を撮影・録音する行為

3.ホーム柵やホームドア、ホーム上の点字ブロックから外側に乗り出して撮影する行為

4.点字ブロックでの立ち止まりや荷物を置いて撮影する行為

5.ホーム上で三脚や脚立・踏み台等を使用して撮影する行為

6.フラッシュや照明を使用して運行中の列車を撮影する行為

7.撮影の際に、大きな声を出して騒ぐような行為

 上記のほか、安全確保のため、係員が撮影についての制限や注意をする場合がございますので、係員の指示に従っていただくようお願いいたします。

 また、特に悪質と判断される際には、撮影・録音行為を中止いただき、法的措置をとらせていただく場合もございます。


JR東日本は、駅ホームでの無断撮影による迷惑行為や、沿線での線路内立ち入りによる列車の非常停止など、施設内での撮影トラブルが増えていると訴える。これらは危険な上、運行や係員の業務を妨げ、周囲に迷惑をかける。線路内などへの無断立ち入りは鉄道営業法等に違反し、罰則が科される(出典:JR東日本の「当社施設内等における撮影マナーに関するお願い」というページ)

JR東日本ではWebサイトにて、線路内や立ち入り禁止区域といった鉄道用地へ正当な理由なく立ち入る行為をしてはいけないと案内している。また、当社施設内および列車内において、無断で他のお客さまや係員を撮影・録音することも禁じている。さらに撮影時の禁止事項として、ホーム柵やホームドア、点字ブロックから外側に乗り出して撮影する行為や、点字ブロック上で立ち止まったり荷物を置いたりして撮影する行為も行ってはいけないとしている。その他、ホーム上で三脚や脚立・踏み台等を使用すること、運行中の列車にフラッシュや照明を使用して撮影すること、そして撮影の際に大きな声を出して騒ぐような行為も禁止している(出典:JR東日本の「当社施設内等における撮影マナーに関するお願い」というページ)

 「どうせ電車は来ないだろう」といった油断は重大事項に直結しかねない。JR東日本の注意喚起は、単なる迷惑行為の列挙にとどまらず、実際に何をすればどうなるのかを示すことで、利用者に危険認識を促す効果を持っている。

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たとえ趣味の範囲であっても……危ない 鉄道撮影文化の現実と課題

 鉄道撮影文化は、鉄道会社も利用者も認識しうる活動として長い歴史を持っていることに加え、鉄道ファンの存在を象徴する行為ともいえる。しかし、SNSやネット上の意見から分かるように、撮影行為が安全面や他者への迷惑に直結する場合も多い。

 ホームや構内での身を乗り出した撮影、踏切外での線路横断などは、たとえ趣味の範囲であっても周囲の安全を損なうリスクが高く、注意喚起や規制が必要だと指摘されている。鉄道ファンの活動自体を完全否定することではないが、迷惑行為についてネット上への書き込みが目立っている。実際に注意だけでは済まされない事例もあることから、良識のある行動が求められている。

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