“やまぬ転売”に終止符か 楽天ラクマが出品ルール改定予告、「健全な取引」推進
楽天グループは、12月22日にフリマアプリの「楽天ラクマ」において、利用規約およびルールの改定を行うことを発表した。この変更は2026年1月22日から適用される。今回の改定において最も注目すべき点は、出品に関する禁止事項の項目に新たな基準が設けられたことだ。楽天ラクマ側が健全な取引環境を確保することが困難であると判断した出品について、広範に制限をかけられる体制を整える。
「ルール改定に関する事前お知らせ」掲載 新たな規律の導入とその目的とは
楽天ラクマが提示した「ルール改定に関する事前お知らせ」によると、新設される項目は、安心安全な取引環境を確保するために不可欠な措置だという。具体的には、個別の商品名を挙げた禁止リストとは別に、運営側が不適切だと判断した出品を包括的に排除できる権限を持たせる内容だ。現時点において、この新項目に該当する特定の禁止商品は設定されていないが、楽天ラクマは2026年1月22日以降、市場の動向やトラブルの発生状況に応じて、対象となる商品が公式サイトのFAQなどを通じて順次案内する予定だ。
2025年12月現在は周知期間であり、新設される「健全な取引環境の確保が困難と判断される出品」という項目に該当する具体的な禁止商品はまだ存在しない。だが2026年1月22日の改定以降は、安心・安全な取引環境を維持するため、社会情勢や不適切な出品形態に合わせた運営による迅速な出品規制が可能となる仕組みだ
背景にある転売問題の深刻化 2025年は盗難品の流通も問題に
このルール改定の背景には、2025年に発生した数々の市場混乱が影響していると考えられる。特に注目を集めたのは、任天堂が発売した新型ゲーム機「Nintendo Switch 2」を巡る転売騒動だ。発売直後から深刻な供給不足に陥った結果、二次流通市場では定価を大幅に上回る価格での出品が相次いだ。本当に製品を必要としている一般の消費者の手に商品が行き渡らない事態が常態化し、各プラットフォームには厳しい批判の目が向けられた。楽天ラクマを含むフリマアプリ各社は、これまでも買い占めや高額転売に対して注意喚起を行ってきたが、抜本的な解決には至っておらず、今回のルール改定によって強い介入の根拠を得た形となる。
また、犯罪に起因する物品の流通も深刻な課題となった。その象徴的な事例が、モバイルバッテリーシェアリングサービスである「ChargeSPOT」の盗難バッテリー出品問題だ。何者かがレンタル機から不正に持ち出したバッテリーをフリマアプリで売却するケースが多発した。これを受け、フリマアプリの「メルカリ」は、サービスを運営するINFORICHと協力し、特定のモバイルバッテリーを禁止出品物に指定。当該出品を強制的に削除する措置を講じた。
転売に対する多角的な視点
一方で、転売行為そのものの是非についてはネット上でさまざまな議論が目立つ。実業家の堀江貴文氏は、自身の「X」アカウントにおいて、転売を肯定する立場を鮮明にしている。同氏は6月7日の投稿で、対価を支払ってでも商品を手に入れたいという需要がある以上、転売は経済活動の一環であると主張した。感情的な理由で取引を妨げるべきではないとし、ゲーム機本体の転売が法律に抵触しない点も指摘している。このような見解は、自由経済における需要と供給のバランスを重視する立場から一定の支持を得ている。しかし、プラットフォームを運営する企業としては、こうした経済的合理性と、ユーザー間の公平性や安全性の維持という相反する課題の間で、難しいかじ取りを迫られているのが実情だ。
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