「メルカリモバイル」なぜ“最低限の機能”で開始? ギガを繰り越せない理由は? サービス責任者に聞く:MVNOに聞く(1/3 ページ)
フリマアプリ最大手のメルカリが、MVNOとしてモバイル事業に参入し、「メルカリモバイル」の提供を開始した。根底にあるのは「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というメルカリのミッション。3月に間に合わせるため、ミニマムな状態でサービスをスタートさせた。
フリマアプリ最大手のメルカリが、MVNOとしてモバイル事業に参入した。名前はメルカリモバイル。料金プランは2GBか20GBの2択のみと、他のMVNOと比べてシンプルで、当初はeSIMのみでのサービス提供になる。料金は2GBが990円(税込み、以下同)、20GBが2390円。MVNOらしく、大手キャリアのサブブランドと同程度か、やや安い水準に設定されている。
最もメルカリの特徴が出ているのは、余ったデータ容量を売買できるところだ。ユーザーは1GB単位で最低200円から、メルカリにデータ容量を出品可能。1GBあたりの最大額は500円となり、20GBをまとめて出品する場合には1万円までの価格をつけられる。これまでも、データ容量をプレゼントできるMVNOはあったが、それを売買につなげたのはメルカリならではで、他社との差別化も図れている。
一方で、MVNOとして見ると、やや料金水準は高めといえる。また、当初はeSIMのみのスタートで、物理SIMが発行できないため、契約のためのリテラシーが必要とされる。音声通話定額のオプションも用意されていない他、回線もドコモ一択。auは選択できない。他社が充実したサービスを提供している中、なぜ今、メルカリはMVNOに参入したのか。メルカリでMVNO事業の責任者を務める執行役員CEO Fintech兼MVNO事業責任者の永沢岳志氏に、その理由を聞いた。
メルカリを使っているからこそ、ギガを売るという感覚になる
―― MVNOを始めたのは、意外感もありました。なぜ回線を提供しようと思ったのでしょうか。
永沢氏 メルカリのミッションは、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というものです。メルカリはC2Cのフリマから始まり、B2CのメルカリShopsに広がり、その後、お金と人にも拡大しています。メルカリハロでは、時間やスキルが循環しています。暗号資産もやっていますが、物を売ることと買うことがいろいろなところに広がっています。このように循環させることで、あらゆる人の可能性を広げるのがメルカリのミッションです。
その中で、使っていただいているお客さまの可能性が広がるのは、他にどういうところがあるのかを議論してきました。デジタルアセットは暗号資産に始まり、直近だとNFTの売買も初めています。その1つの形として、データ通信の容量――ギガがあるという着想がメルカリモバイルになりました。
シンプルに単なるMVNOをやるだけではなく、メルカリらしさや、価値の循環をいかに加えられるかが新規事業としては大事になります。フィジビリティ(実現可能性)の確認をする中で、MVNEと組み、APIをたたいてあげることで、それはできそうだということが見えてきました。であれば、やってみようということで、事業を開始するに至りました。
―― povoのようにデータ容量を付与することで経済圏を広げるやり方はありましたし、これまでも購入はできましたが、ユーザーが売れるというのは初めてです。この仕組みによって、データ容量に資産価値が出てくるところは面白いと思いました。
永沢氏 ギガが余ったり、逆に足りなくなったりということはよくあると思っています。私も大容量プランを使っていますが、最後に余ってしまう。一方で、旅行に行くと最後に足りなくなって追加で料金を払うこともありました。ここに機会があると考えています。
“メルカリだから”がポイントで、普通のMVNOでも技術的には同じようなことはできると思います。ただ、メルカリには売るという行為をする人がいる。メルカリを使っているからこそ、ギガを売るという感覚になり、それにトライできる。また、ギガが売れるなら、これも売れるんじゃないかということで、他の物の売買につながっていきます。デジタルアセットの売買はどんどん増えていくので、そこにつなげていくのはメルカリらしさだと考えています。
2GBと20GBの2プランを用意した理由
―― サービス開始から半月ほどですが、実際の売買状況はいかがでしょうか。
永沢氏 具体的な数字は言えませんが、想定とそんなに変わらない動きをしています。契約していただけると、メルカリの画面のような形で、どのギガがいくらで、何GB売れているかが分かります。1GBで200円もありますし、5GBで500円、10GBで800円というものもあります。出品されてからの購買率を見ていますが、そこはメルカリのフリマと似たような形に推移しています。供給がないわけではないし、需要が多すぎるというわけでもなく、どちらかに偏っていることはありません。
―― まだ月末を迎えていませんが(※取材は3月に実施)、繰り越しがないので、月末だと供給側が安くするということもありそうですね。
永沢氏 逆に、月末だと需要が高まる可能性もありますが、ここは正直やってみないと分からないですね。需給のバランスを決定づける要因は、大きく2つあると思っています。今は2GBと20GBの2つでやっているので、このプラン構成と価格が1つ。あとは、1GBあたりの最低取引金額があります。若干実験的ですが、ここを動かして満足度を高めていくことが大事だと思っています。
―― 料金プランが2GBと20GBの2つというのは、かなり極端な設定だと思いますが、これも売買を踏まえてのことなのでしょうか。
永沢氏 いったんエクストリームな形に振ってみました。これは余る、これだと足りないという人がいたときに、(売買を)使ってもらうことで需要に合った形になる。プランを増やすのはいくらでもできますからね。
また、メルカリとして、シンプルにものを作って分かりやすくしようとしました。料金プランがたくさんあって、どれにするか迷うことがないようにしたかった。お客さまの中には、自分が何GB使っているのかを知らない方も結構います。そのあたりをサポートするようなLP(ランディングページ)を作ることも進めています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「メルカリモバイル」を契約して“ギガの売買”にチャレンジしてみた お得度や通信速度も検証
メルカリモバイルは、データ通信量や請求額をメルカリのアプリ上で管理できる点に加え、特にデータ容量(ギガ)が売買できる点が話題になりました。筆者も早速契約し、通信速度の検証や、実際にギガを売買してみました。通常のメルカリとは異なるフローであることが分かりました。
メルカリがMVNO事業に参入したワケ 売買したギガは「繰り越せない」が、ニーズを満たせると判断
メルカリが3月4日、MVNO事業に新規参入し、「メルカリモバイル」の提供を開始した。メルカリモバイルは、フリマアプリのメルカリで誰でも簡単に申し込みを完結でき、データ容量をメルカリのように出品、購入できる機能が大きな特徴。同日開催の記者発表会場には、メルカリ 執行役員CEO Fintech 兼 新規事業責任者 永沢岳志氏が登壇し、新サービスの概要やMVNO事業への参入意図を語った。
メルカリが格安SIM「メルカリモバイル」提供 余ったギガをメルカリで売買、月額990円から
メルカリがMVNO事業に参入し、モバイル通信サービス「メルカリモバイル」を3月4日から提供する。「メルカリ」アプリから申し込め、毎月のデータ通信量や支払いはメルカリから管理できる。データ容量(ギガ)が余っている人と足りない人をマッチングさせ、データ容量を個人間で売買できる機能を用意する。
メルカリモバイル、20GBプラン契約で最大1万2000ポイントプレゼント 5月6日まで
メルカリは、モバイルサービス「メルカリモバイル」で20GBプランを初めて契約したユーザーを対象に最大1万2000ポイントを付与するキャンペーンを開始。申し込み期間は5月6日、契約完了期間は5月31日まで。
「メルカード ゴールド」提供 街の買い物で最大2%還元、利用限度枠が最大300万円に
メルペイが、新たなクレジットカード「メルカード ゴールド」を3月17日から提供する。「メルカード」の特徴をベースに、利用限度枠やポイント還元、付帯サービスなどを拡充した。年間200万円を利用すると1%のボーナスポイントが追加され、メルカリ以外での買い物が最大2%還元になる。


