「メルカリモバイル」なぜ“最低限の機能”で開始? ギガを繰り越せない理由は? サービス責任者に聞く:MVNOに聞く(2/3 ページ)
フリマアプリ最大手のメルカリが、MVNOとしてモバイル事業に参入し、「メルカリモバイル」の提供を開始した。根底にあるのは「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というメルカリのミッション。3月に間に合わせるため、ミニマムな状態でサービスをスタートさせた。
ギガを出品して「もうけよう」とする人も出てくる?
―― ユーザーの中には、一獲千金ではないですが、これでもうけようと考えている人もいそうです。
永沢氏 想定としてはあり得ることだと思っています。1GBを200円で全部売れば、3600円になります。そういったことがあっても、面白いと思っています。そのようなニュースが出れば、供給がいっぱいあるということで、2GBプランの人が増える可能性もありますし、そんなに売れるなら、ということで20GBプランも増えてくるかもしれません。経済学的な需要と供給の動きが出てくるはずで、そういったもので話題も作りながらやっていけるのは面白いところだと考えています。
実際、メルカリにも、こんなものをこんな値段で買うのかということがたくさんありますが、そこが面白い。また、今だと誰からギガを買っても同じですが、好きな画像に変えられたり、NFTにできたりすることで、自分の1GBは他とは違うという見せ方ができるようにするアイデアもあります。ものを売り買いする楽しさのところに行ければ面白いというビジョンはあります。ただ、まずは出してみないと分からないところもあるので、最もミニマムな形で出し、反応を見ながらやっていくことにしました。
―― 一方で、2GBと20GBの価格設定が一般的なMVNOと比べるとやや高いようにも見えました。価格競争的なことは、あまり考えていないのでしょうか。
永沢氏 メルカリというブランドと言ってしまうとあれですが、メルカリにはお客さまがすでにいます。既存のMVNOは安さで勝負しているところがありますが、少なくとも最初はそこで勝負する必要はないのではないかと考えました。ものを売ってギガを買ったり、余ったギガを売って他で使ったりできるからです。メルカリの中で回っている価値やお金とすぐに交換できて使えるところに価値があるので、安さだけを求めるのであれば他の会社を使っていただいた方がいい。ギガをアセットの1つとして考えていただけるのではないかということで始めています。
ただし、価格はMNOのフルプライスのプランと比べると競争力があります。まずはそういったところで選んでもらえるといいなということで設定しました。実際には、MNOを使っている方はまだまだ多い。われわれも調べてみましたが、メルカリを使っている方の中にもMNOユーザーが多くいます。そういった方にまず使ってみてもらいたいですね。
需要期の3月に合わせてミニマムでサービスを開始した
―― 現状だと、どちらのプランを選ぶ人が多いのでしょうか。
永沢氏 数は言えませんが、基本的には想定通りでした。今後、例えば物理SIMを始めたら、届く層も変わってきます。eSIMを使う人はかなりリテラシーが高めで、そういう人はギガをたくさん使う傾向があると思っています。ですから、今の層が想定しているお客さまの全体を表しているかというと、そうではないと考えています。
―― オンラインのサービスを手掛けるメルカリだからこそ、eSIMとは相性がいいと思いましたが、確かにSIMを挿すだけと比べるとハードルは高いですよね。
永沢氏 世の中でもeSIMにしているのは、10〜20%ぐらいではないでしょうか。メルカリ社内でも、まだ使っていない人もいます。現段階では物理SIMが必要という判断です。
―― 物理SIMや音声定額オプションがこれからなど、かなりサービスインを急いだ印象を受けました。これはなぜでしょうか。
永沢氏 3月は需要期ということもあり、ここに間に合わせることを目指してきたのが1つあります。また、メルカリは会社として「Back to Startup」というスローガンを掲げています。会社のバリューに、「Go Bold(大胆にやろう)」というのがありますが、最近はそこに「Move Fast(早く動く)」というバリューも加えています。スタートアップは、まずものを出し、そこからクイックに学んで変更を加えます。そのプロセスが速いのが、スタートアップがスタートアップたるゆえんです。
メルカリモバイルに話を移すと、ギガの売買は必要でしたが、物理SIMや回線の種類が豊富ということはリリースにあたってマストかというと、そうではありませんでした。eSIMの方が早くスタートできるということで、まずはそちらから出したということです。実際、もとの計画だともっとローンチは遅かったのですが、ここには正解がないと思っています。
僕らはまずやってみる。やってみたことで、初速から分かったこともあります。当初のリリース予定だった数カ月後だったら、この学びがどうなっていたか。次に作るものや、フォーカスすべきものは決めることができました。
―― サービスインしてみて、やっぱりこれは予定に入れない方がよかったなというものはありましたか。
永沢氏 全て、あった方がいいものでした。ただ、出してみて、こっちの方が大事そうというような感覚は持てたので、今、データを取っているところです。価格には、いろいろなご意見をいただいています。ギガの売買については、メルカリのユーザーならこういうことを分かってくれるのではと思いまし、分かってくれる人もいましたが、リテラシー次第なところもあります。われわれが何を言っているのか、伝わらないケースもありました。
また、今は契約しないと(売買されている)ギガが見えません。契約する前から見えた方が、自分でも売り買いできるかもと分かる。そのあたりは機能として考えていますし、初速を受けてロードマップの組み替えも議論しています。
―― 確かに今だと、メルカリアプリを開いてもメルカリモバイルがあることが分からないですね。自分も検索で探してしまいました。
永沢氏 MVP(Minimum Viable Product、必要最小限のプロダクト)にこだわった結果、リンク1つでスタートしました。メルカリの中へのインテグレートは、これからになります。僕がやっていたメルカードも、クレジットカードをまず出し、そこからいろいろなところにインテグレートする形でした。やれることは、ものすごくたくさんある。どこまで行ってもやり切った感は出てこないでしょう。ただ、契約前から見えるのは大事で、検索結果の画面については最初にやるべきことだと思っています。メルカリのお客さまが最初にやるのは、検索ですからね。
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