「メルカリモバイル」なぜ“最低限の機能”で開始? ギガを繰り越せない理由は? サービス責任者に聞く:MVNOに聞く(3/3 ページ)
フリマアプリ最大手のメルカリが、MVNOとしてモバイル事業に参入し、「メルカリモバイル」の提供を開始した。根底にあるのは「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というメルカリのミッション。3月に間に合わせるため、ミニマムな状態でサービスをスタートさせた。
ギガを繰り越せないのは「概念をシンプルにしたかったから」
―― MVNOはあまりもうからないと言われることもありますが、メルカリモバイルは単体でもしっかり利益を出していく方針でしょうか。
永沢氏 そうです。単体でも十分採算を取れると判断して参入しています。他のMVNOを見ると、本業があって、そのロイヤリティー向上装置として使っているようなところもありますし、実際そういう要素もありますが、それがあるからこの事業は赤字でもいいとは考えていません。
―― メルカードや、先日発表されたメルカードゴールドとの連携は何か考えられていますか。
永沢氏 MVPだったので、やりたいけどやっていないことがたくさんあります。ただ、カードを使っている方への還元率を上げるというのは、言い方は悪いですがいくらでもやれることです。どういうパターンが分かりやすく、便利でおトクなのかを決めてやっていきたいですね。
―― 仕様面では、今後の予定にもデータ容量の繰り越しが入っていませんでした。これは、あまり考えていないのでしょうか。
永沢氏 繰り越しをなくしたのは、概念をシンプルにしたかったからです。繰り越せて、かつギガの売り買いができるとなると、想像するのが難しくなってしまいます。「ここで買ったギガは翌月まで使えるの?」というように、思考のスパンが長くなってしまう。変数が増えてしまうので、分かりやすいパターンということで全て当月中にしました。
価格交渉やコメントの機能はあえて入れず
―― 最低価格がメルカリの出品と違って200円ですが、これは何か理由があったのでしょうか。
永沢氏 お求めやすい価格にしたかったというところと、まずやってみるにあたって、適切な価格を見てみたかったというのが(理由として)あります。また、MVNEからの仕入れ価格もあるので、そのあたりのバランスも見ています。
―― 逆に、最低1円のような形にすると、市場が崩壊しそうですね。
永沢氏 そういうこともありえると思っています。1円にすると、20GBプランで余った分を月末に1円で売り出すこともありうるので、価格が崩壊します。それはそれで1つの市場の形という考え方もありますが、いろいろなシミュレーションをする中で200円にしました。メルカリは最低300円で、そこに合わせる案もありましたが、あちらは配送料もあるので。
―― コメントができないのも、通常のフリマとの違いです。これはなぜでしょうか。
永沢氏 なしにしました。ギガは、誰のものを買っても一緒だからです。そのため、評価やコメントは一切なしにしました。ここには議論もありましたが、これまでの売買のトランザクションについた評価と、ギガを売買した評価は、同じ件数でも意味が違ってきます。ギガについては、シンプルに売り買いするところから始めることにしました。
事前に実施したユーザーインタビューでも、サクッと売り買いできた方がいいという声がありました。メルカリのいいところとして、価格交渉できるところはありますが、逆にそれを面倒だと感じている人もいます。「このギガを10円値下げできますか」というのは何か違うんじゃないかということで、ギガに関してはなしにしました。
―― 目標回線数のようなものはありますか。
永沢氏 (対外的に)言っているものはありません。ただ、目標として早期に黒字化できるようにしたいとは思っています。黒字化できる回線数はあるので、そこに向けてやっていきます。
―― 実際に始めてみて、反響はいかがでしたか。
永沢氏 まず出したというところですが、ニュース性が高かったので、多くの方に知っていただけたのはよかったと思います。一方で、eSIMを使うところにまずハードルがあります。回線は、おそらく考え始めてから実際に意思決定するまでの検討期間が長い商材なので、これからも継続的にコミュニケーションをしていきます。ギガの売買がどうなのかというところが伝われば、広がりも変わります。これから、そのあたりを強化していきたいと考えています。
取材を終えて:「最低限の機能」からどう進化するのか注目
メルカリのような上位レイヤーのサービス事業者がMVNOに参入するケースは過去にもあったが、いずれも、ゼロレーティングやポイントなどでの連携にとどまっていた。これに対し、データ容量をユーザーの資産と見なし、デジタルコンテンツのように売買できるようにしたのが、メルカリモバイルの新しさだ。メルカリモバイルがより深くメルカリの特徴を生かしたサービスを組み込んできた点は、評価できるポイントといえる。
現状では、契約後にしか売買の様子が見えないため、サービスの面白さやお得感などを伝えるには、メルカリユーザー全体に分かる形にすることが必要になる。ただ、容量と価格という数字だけで価値が決定してしまうのは少々味気ない。永沢氏が語っていたように、そこに画像なり何らかのストーリーなりをつけられると、より目指している姿に近づけるのでは……と感じた。インタビューでも語られていたように、メルカリモバイルは最低限の機能からサービスを始めているため、今後の進化にも注目しておきたい。
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