災害時に他キャリアの回線を使える「JAPANローミング」4月開始 利用者の注意点は? 各社共倒れにならない?(1/2 ページ)
NTTドコモなど携帯電話事業者5社は大規模災害や通信障害時に他社のネットワークへ一時的に接続できるサービスを4月1日から開始すると発表した。これまでの代替手段では不十分だった通信の確保を目的としている。フルローミング方式と緊急通報のみ方式の2種類を用意し非常時における通信環境を支える。
NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯5社は3月18日、大規模災害や通信障害が発生した際に、他社の4Gネットワークを利用して通信を維持する「JAPANローミング」を4月1日に開始すると発表した。利用料金はかからず、申し込みも不要だ。
携帯5社は、これまでも非常時における通信代替手段として、固定電話や公衆電話の他、「00000JAPAN」などの無料Wi-Fiサービスの利用を呼びかけてきたが、それらの代替手段がユーザーの近くにない場合の通信手段の確保が課題となっていた。電気通信事業者協会企画部長の吉川智之氏は「事業者間で協力して国民生活や経済活動のために非常時の通信を支えていくという目標のため、各社間の利害を超えて目的を共有し連携できる場を作ることができた」とサービス提供の意義を述べた。
「フルローミング方式」と「緊急通報のみ方式」の2方式 発動条件は?
ドコモ災害対策室長の尾崎康征氏は発動条件について、「大規模災害や通信障害により復旧に時間を要する場合に提供する」と説明した。被害状況などに応じて、フルローミング方式と緊急通報のみ方式の2種類を携帯5社が協議した上で決定し適用する。提供期間について尾崎氏は「通常のネットワーク復旧までは提供する」と明言した。
フルローミング方式では最大300kbpsのデータ通信と音声通話、SMSを利用できる。一方、緊急通報のみ方式は、110番や119番、118番といった警察や消防、海上保安庁への発信のみが可能となり、通報機関からの折り返し電話を受けることはできない。緊急通報のみ方式を利用して警察や消防に発信した場合の制約事項として、「自身の電話番号を伝えられない、位置情報が取得できないといったことが想定される」(尾崎氏)ため、緊急通報時にユーザー自身が現在の位置情報などを通報機関に口頭で伝える必要がある。
利用できる端末は? 操作手順は提供方式によって異なる
JAPANローミングを利用できる端末について、各社は「2026年春以降に発売された機種は順次対応予定」とし、それ以外の端末の対応状況については、各社のWebサイトを確認するよう呼びかけている。端末のOSやソフトウェアが最新のバージョンでないと利用できない場合があるという。
利用のための操作手順は提供方式によって異なる。フルローミング方式が提供されている場合、スマートフォンの設定が自動になっていれば自動的に他社のネットワークへ接続する。ただしAndroid端末でデータ通信を利用するにはデータローミング設定をオンにする必要がある。この設定をオンにしたまま海外に渡航すると予期せぬ通信料が発生する恐れがあるので、必要ないときはオフにしておくといい。
手動選択の際には「JPN-ROAM D」や「JPN-ROAM K」など「JPN-ROAM」が含まれる名称、または特定の5桁の数字列(44010など)を選択する必要がある。緊急通報のみ方式を利用する場合も同様に、ユーザーが設定画面から手動でネットワークを選択しなければならない。自動選択をオフにし、契約事業者以外のネットワークを選ぶ必要がある。
ソフトバンク災害対策室室長の杉本篤史氏は「緊急通報のみ方式においては操作をしていただく必要がある」と説明した。フルローミング方式とは異なり、緊急通報のみ方式では他社ネットワークに自動で接続されず、画面上は「圏外」と表示される。圏外の状態から確実に通報を行うためには、ユーザー自身が手動で他社ネットワークを選択(指定)しておく必要があるためだ。なお、設定後は画面に圏外と表示されていても緊急通報は可能となる。
MVNOユーザーもJAPANローミングを利用できるが、データ通信の利用については一部のMVNOに限られるという。
提供エリアは市区町村単位で細かく設定 各社「共倒れ」にならないか懸念も
提供エリアは市区町村単位で細かく設定する方針だ。KDDIエンジニアリング企画部長の小坂啓輔氏は「局地的な災害などで、市区町村単位で影響が発生している際の救済を想定して市区町村単位を設定している」と説明した。また、記者から「災害時の停電が長引くと基地局のバッテリーが枯渇し、通信できないエリアが徐々に拡大していくのではないか」と問われると、ソフトバンク災害対策室室長の杉本篤史氏は「確かに台風や地震などで広域で停電が起きた場合に、バッテリーが枯渇して通信できないエリアが広がっていくということはある」と回答した。
その上で杉本氏は、状況の変化に応じて「日々ローミングのエリアが変わっていく想定」であると述べ、「各事業者間で現状のエリアの支障状況を共有し合い、提供するエリアを事業者間連携して協議しながらどこを開放していくか調整していく」と、柔軟に対応する方針を語った。なお、刻一刻と変化する提供エリアの最新情報は、各社のWebサイトで随時告知するという。
一方、「1社だけ電波が生き残っていた場合、通信が集中してしまわないか」とトラフィックに関する懸念が問われると、ドコモの尾崎氏は「1社でも残っていればこのJAPANローミングで救うことができるというのはおっしゃる通り」とした上で、「救える分だけ救うというのが趣旨である」と説明した。救済活動によって自社ユーザーを巻き込んで通信障害を引き起こす「共倒れ」を防ぐため、各社の設備容量を鑑みて提供有無を判断する。
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