インタビュー

IIJmioで10~25GBが「1年で3倍」に急増した理由 フルMVNOは音声よりも「マルチキャリア化」を重視MVNOに聞く(3/3 ページ)

MVNOの主戦場が低容量から中大容量へ移行し、IIJmioでは10GB以上の契約比率が1年前の約3倍に急増した。15GBプランの値下げによってプランのアップグレードを狙う。フルMVNO事業では音声サービスよりマルチキャリア化を優先し、IoT市場を見据えた次世代SIMの開発に注力する。

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フルMVNO音声サービスは未定も、ドコモとKDDIのマルチキャリア化は視野に

―― フルMVNOのイメージが強い一方で、音声フルMVNOへの参入表明をするMVNOも出てきています。音声フルMVNOに対しては、どのようなお考えなのかを改めて教えてください。

矢吹氏 フルMVNOという事業体が増えていなかったので、何をするにも推進力がなかったのですが、こういった形でMVNO業界が発展していくのはいいことというのが総論です。一方で、競争環境という意味だと、音声でどういったものが出てくるのかは興味がありますし、楽しみでもあります。

 想像するに、国内ではかけ放題プランを安くできたり、mineoさんだと固定回線と組み合わせたサービスができたりするのかもしれません。電話番号を使った新しい認証サービスも作れるかもしれない。ただ、技術的には面白そうですが、サービス的にどういうものが作れるのかがまだ想像しづらいというのが実態です。

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 海外用サービスは音声込みでローミングできるものが作れるので、そこは非常に強いのですが、費用対効果を考えたときにどこまでどういったものが作れるのかは見守っていきたいというスタンスです。

―― IIJとしては、どちらかと言うと、データ通信のフルMVNOにKDDI回線を追加する方が優先順位は高いのでしょうか。

矢吹氏 電波の問題もありますし、ここにきて、接続料の差もだいぶなくなってきました。KDDI回線も1つの選択肢と広げていきたい。われわれのサービスは、マルチキャリアであることが1つの軸です。ライトMVNOはマルチキャリア化していますが、フルMVNOでは1社(ドコモ)しかできていない。その良さは、もっと強めていきたいと考えています。

―― 最終的には、1つのSIMでドコモとKDDI、両方のネットワークに接続するものを狙っているのでしょうか。

矢吹氏 そこまで狙いたいと考えています。実際には、キャリア側からどういう情報を受け取れるのかという技術的な課題はありますが、そこはクリアしたいと思っています。今でも、「マルチプロファイルSIM2.0」で、1つのSIMで2つのキャリアを選べるというようなものはやっていますが、それをもっとライトな感じで、誰でもそういったものを選べるような形は作っていきたいですね。

 例えば、IoTだと端末をバーッとばらまきますが、ばらまいた後にここだとこのキャリアが入る、こっちは入らないとなり、その都度回線を変えるとなるとものすごいコストになってしまいます。事前に電波調査をするのもコストになるので、だったら2つのプロファイルを入れて、生きている方だけ使おうというのはあると思っています。


IoT機器を主なターゲットとして稼働しているフルMVNO。柔軟なプラン設計や回線の休止・再開が可能なことがメリットだ

通信機器内のソフトウェアにSIM機能を実装する「SoftSIM」では、マルチキャリア対応を開始した

―― やはりIoTはユースケースになると思いますが、ギガプランでもそういったものを選びたいユーザーはいるかもしれません。

矢吹氏 人間だと、基本料金の部分は二重にコストがかかってしまうので難しいかもしれませんが……。ただ、二重になるのは基本料金のところで、ギガのところは(接続した方の帯域しか使わないので、帯域で課金されている分のコストはどちらか一方になって)抑えられるかもしれません。

―― 現在は構想段階だと思いますが、いつごろまでにやりたいといった希望はありますか。

矢吹氏 なるべく早くとは思いつつも、まだ具体的な計画まではできていない段階です。今はまだ微妙なタイミングで、ベンダーなどいろいろなところに話を聞くと、「SGP.32」(IoT向けの標準仕様。遠隔でプロファイルを導入、切り替え可能にするもの)の(本格的な)普及が27年後半ぐらいからになります。

 今やってしまうのか、SGP.32の普及期に合わせてやるのかは、リターンがだいぶ変わってきます。作るのに時間はかかるので、がんばって早くするというのはありますが、どういうタイミングでどうリリースしていくのか、細かな実装の仕方については今、議論をしているところです。

―― IoT端末の普及時期を見越して、そこをターゲットにしていくということですね。

矢吹氏 そうなると思います。言い方は難しいのですが、ライトMVNOで済んでしまうことをわざわざフルMVNOでやる必要はありません。キャリアもいいメニューを出しているので、それでカバーできないことをやるというのがフルMVNOのスタンスです。音声フルMVNOに若干距離を置いているのも、そういったスタンスからです。

取材を終えて:中容量の値下げでARPU向上の好循環

 中大容量プランの値下げを行ったIIJmioだが、獲得が増えるとの同時に小容量からの移行が進むことで、ARPUは増加しているとのこと。その主戦場を、徐々に中容量帯に移している状況もうかがえた。大手キャリアのサブブランドやオンライン専用プランほどの容量は必要ない一方で、低容量プランだと容量が足りないユーザーにうまくアプローチできているようだ。

 フルMVNOの先駆者ともいえるIIJだが、業界動向として注目される音声フルMVNOとはやや距離を置いていることもうかがえた。どちらかといえば、フルMVNOはマルチキャリア化を優先しているのが同社のスタンスといえる。矢吹氏の発言からは、主にIoT向けとして構想していることが分かる。一方で、最近ではキャリアごとの通信品質に差がついているだけに、ギガプランのデータeSIMとしても需要があるかもしれない。今後の展開に期待したい。

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