ニュース

“つながらない”声あふれる楽天モバイル、「WiFiスポット」でかつての“ソフトバンク戦法”を踏襲か

楽天モバイルは都心部などの通信不満を解消するため契約者向けに公衆Wi-Fiサービスの提供を開始した。これはかつてソフトバンクが導入して通信環境の危機を乗り越えた戦略と非常に似ている。通信品質をどこまで改善できるか注目される。

 6月19日、楽天モバイルは自社の対象プラン契約者向けに、公衆Wi-Fiサービス「楽天モバイルWiFiスポット」の提供を順次開始すると発表した。対象となるのは、「Rakuten最強プラン」「Rakuten最強U-NEXT」「Rakuten最強プラン(データタイプ)」の他、法人向け「音声+データプラン」「データ専用プラン」などの契約者だ。

 対応端末は、iOS 26.4以降のiPhoneおよび、公衆無線LANへの接続を簡略化する「Google Wi-Fi Provisioner」が搭載されたAndroid 11以降のAndroid製品だ。まずはデータ通信が混雑しやすい都心部の商業施設などからエリアの提供を開始していく方針だ。本サービスを利用して行ったデータ通信は、月々のデータ利用量には含まれないというメリットがあり、データ消費を気にせず利用できるのが特徴だ。


楽天モバイル

公衆Wi-Fiサービス「楽天モバイルWiFiスポット」

 19日時点における楽天モバイルWiFiスポットの提供エリアは次の通りだ。

advertisement
  • 群馬県
    • イオンモール太田
  • 千葉県
    • アトレ新浦安
    • イオンモール木更津
    • イオンモール幕張新都心 A棟
    • イオンモール幕張新都心 B棟
    • イオンモール幕張新都心 C棟
    • イオンモール幕張新都心 E棟
  • 東京都
    • アトレ吉祥寺
    • アトレ大井町
    • イオンモールむさし村山
  • 神奈川県
    • アトレ川崎

 なお、これらの提供スポットは予告なく変更になる場合がある他、提供スポット内であっても、設置エリア外の場所ではWi-Fiの電波が届かない場合があるという。


提供エリア

楽天モバイルが公衆Wi-Fiサービスを提供する背景

 楽天モバイルが公衆Wi-Fiサービスを提供する背景には、動画視聴やSNS利用の急速な拡大に伴うトラフィックの急増がある。楽天モバイルによると、ユーザー1カ月あたりの平均データ利用量は直近3年で2倍以上に跳ね上がっているという。


楽天モバイルが公衆Wi-Fiサービスを提供する背景

 しかし、それ以上に無視できない理由が、SNSなどにあふれるユーザーからの通信環境に対する悲痛な叫びだ。X(旧Twitter)では、「楽天モバイルは駅の中でいきなり圏外になる」「地下鉄ではほぼ圏外」といった、地下や建物内でのつながりにくさを訴える声が連日のように投稿されている。また、「バーコード決済すらまともに開かないときがある」と、日常的な買い物にすら支障を来している現状がうかがえる。

 さらに、「楽天モバイル単体だとつながらないレベル多数。auが今のところ最強かもしれない」との声もあり、KDDIによるローミングサービスの順次終了が、ユーザーの「つながらない」不満に拍車を掛けている状況だ。事実、KDDIと楽天モバイルが結んでいるローミング協定は2026年9月に期限を迎える予定であり、KDDI側も自社網の混雑を避けるため、対象エリアでのローミング提供を順次終了させている。中には移動時の接続の不安定さを指摘するユーザーもいる。

 こうした通信不満を緩和し、ローミング完全終了に向けた「事前対策」の切り札として打ち出されたのが、今回の公衆無線LANサービスだろう。

 そもそも公衆無線LANとは、駅や店舗など人が集まる狭い範囲(数m~数十m)を局所的にカバーする無線インターネット接続サービスであり、高速かつ大容量のデータ通信が行える特徴を持つ。スマートフォンの普及によって大容量の通信データが飛び交い、携帯電話回線網がひっぱくする中で、トラフィックをWi-Fi回線へと逃がして負荷を分散させるデータオフロードは、通信速度の低下やパケ詰まりを防ぐための極めて有効な手段とされている。

 都心部の商業施設などから導入が始まる今回のサービスも、まさにこのデータオフロードによって、ローミング終了に伴う局所的な不満を和らげる応急処置として期待できそうだ。

かつてのソフトバンクの手法を踏襲か

 実は、こうした「局所的な通信不満を公衆無線LANの集中展開でカバーする」というアプローチは、過去にソフトバンクが取った打開策と共通点が多い。スマートフォン利用が急拡大した2010年代前半、同社もまたデータ通信量の爆発的な増加に直面し、ユーザーが解約する最大の要因が「電波の悪さ」となっていた。

 この事態を乗り切るため、同社は基地局の整備と同時に自社のWi-Fiスポットの設置を急ピッチで進め、2012年春には約25万カ所にまで提供範囲を広げた。その際、アクセスポイントまでの通信経路(エントランス回線)に無線設備を用いるなどの独自の手法でエリアを急速に拡張し、都市部での通信負荷をWi-Fiに逃がすことで難局を乗り越えた経緯がある。

 さらに2012年3月、ソフトバンクは屋内や障害物の多い場所でも電波が届きやすい「900MHz帯(いわゆるプラチナバンド)」の割り当てを受け、同年7月25日に商用サービスを開始した。当時のトップであった孫正義社長は、「最大の弱点は電波が悪いということだった。10年前から認識し、8年前から訴訟するぐらい分かっていた。これさえあれば、という状況だったが、ついに念願が叶った」と手応えを示していた。


ソフトバンク(当時はソフトバンクモバイル)がプラチナバンドを獲得した当時の様子

 楽天モバイルも、「電波が悪い」「屋内でつながらない」という激しい批判の矢面に立ちながらも、2023年10月23日にようやく自社へのプラチナバンド(700MHz帯)割り当てを獲得し、2024年6月27日に商用サービスを開始している。今回の楽天モバイルWiFiスポットの展開は、まさにかつてのソフトバンクの手法を踏襲しているように見える。

 特定の混雑エリアにおける補助的なインフラで都市部の不満を抑え込みつつ、プラチナバンドの展開と楽天モバイルWiFiスポットによって「つながらない」という汚名を完全に返上できるのか――楽天モバイルユーザーの今後の反応が気になるところだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.