ソフトバンクモバイル、7月25日から“プラチナ電波”対応へ
2.1GHz帯に比べて電波が通りやすい900MHz帯を獲得したソフトバンクモバイルが、7月25日から“プラチナ電波”に対応すると発表した。今夏以降の端末は、全機種900MHz対応となる。
「最大の弱点は電波が悪いということだった。10年前から認識し、8年前から訴訟するぐらい分かっていた。これさえあれば、という状況だったが、ついに念願が叶った」――。“プラチナバンド”とよばれる900MHz帯を総務省から割り当てられたソフトバンクモバイル 代表取締役社長の孫正義氏は、獲得の喜びをこう言い表した。
900MHz帯は、同社がこれまで利用してきた2.1GHz帯に比べて電波が通りやすく、ソフトバンクモバイルの弱点と言われてきた“つながりにくさ”の解消に大きな役割を果たす。孫氏は、総務省に提出した基地局開設スケジュールを前倒しして進めるとし、7月25日から900MHz帯への対応をスタートさせると発表した。
「総務省には、他社が計画しているより1.5倍〜2倍早い状況で設備投資するということで申請したが、それをさらに前倒しで行う。相当な前倒しで、つながる場所を一気に増やすと宣言する。1日も早く電波が悪い状況を解決すべく、垂直立ち上げで一気に広げていく覚悟」(孫氏)
2012年度までの2年間で1兆円としていた設備投資額は、900MHz帯の取得に伴い1000億円を積み増す。また、2013年度の設備投資額は4500億円とし、3年間で1兆5500億円とする計画だ。
対応端末は、当初はiPhone 4、iPhone 4S、iPad 2などのグローバル端末と、今月発売予定の「PANTONE 4 105SH」のみだが、今夏以降の端末は全機種を対応させるとした。ただ、これまで2.1GHz帯を使っていたiOS端末が900MHzを使うようになれば2.1GHz帯の混雑が解消されるため、既存端末も恩恵にあずかれると孫氏は説明している。
“どこでもつながるソフトバンク”をあたりまえに
ソフトバンクモバイルは、2年で1兆円を設備投資に回して、つながりやすさを向上させるとし、基地局の増設を急ピッチで進めてきた。基地局の数を2年間で6万5000から18万まで増やすとともにWi-Fiスポットの設置を進め、2.1GHz帯でも他キャリアに迫るつながりやすさを目指してきた。
他キャリアを上回る数の基地局を打って「いいわけぬきで、数の力でがんばってきた」(孫氏)結果、他キャリアと並ぶ接続率まで持ってきたものの、1顧客あたりの設備投資額は他キャリアに比べて多額なものとなるなど、結局のところ「事実として不平等な戦いになっていた」(孫氏)と孫氏は振り返る。
しかし、“プラチナバンド”という同じ武器を得た今、戦いは平等になったとし、「今まで不釣り合いだった“どこでもつながるソフトバンク”という言葉が当たり前になる状況に、何としても早く持って行きたい」(孫氏)と襟を正した。
大手3キャリアがプラチナバンドを持ったことで、さらなる競争の激化が予想される。孫氏は、さらなる通信速度の高速化や、ユニークで満足度の高い端末の提供、グループ各社のコンテンツやサービスとの連携などによる“トータルでの満足度の向上”で勝負したいと話している。
900MHz帯への対応、その効果は
900MHz帯が“プラチナバンド”といわれるゆえんは、電波が回り込みやすいという特性にある。ビルなどが多い場所でも間を回り込んで窓から電波が入るため、ビルの壁ではね返されてしまう2.1GHz帯に比べて、結果としてつながる場所が増えるわけだ。
より広いエリアをカバーできるのも特徴の1つだ。例えば2.1GHz帯の基地局を900MHz帯に対応させて電波を吹かせると、届くエリアが3倍になると孫氏。2.1GHzで空白地帯だったところにも900MHzなら届くため、つながり具合がよくなるという。
ビルや遮へい物が多い都心だけでなく、森林などが多い地方都市も900MHz帯の恩恵にあずかれる。森林の先に建物があるような場合、2.1GHz帯の電波は水分を含んだ樹木に吸収されて遮られるが、900MHz帯の電波は届くためエリアが広がるからだ。
これまで2.1GHzのみでサービスを展開してきたソフトバンクモバイルは、他キャリアより多く基地局を設置することで、エリア対策を行ってきた。孫氏は、その基地局を生かして「他キャリアに追いつき、追い越す」と意気込んだ。
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