「ドコモの銀行」で何が変わる? ドコモFG廣井社長に聞く「通信×金融」の攻勢とグループ戦略(1/3 ページ)
NTTドコモ・フィナンシャルグループが発足し金融事業の統合推進を開始した。廣井孝史社長へのインタビューを通じて新会社の設立背景や今後の成長戦略に迫る。ショップ活用や他社連携を通じグループ全体のシナジー拡大と成長を目指す。
7月1日に、ドコモ・フィナンシャルグループ(以下、ドコモFG)が発足した。同社はドコモ本体が手掛けていたdカードやd払いといった決済事業を引き継ぐとともに、これまでグループ入りしてきた金融、保険などの事業会社を束ねる金融持株会社としての役割も持つ。8月には、傘下の住信SBIネット銀行がドコモSMTBネット銀行に社名を変更。合わせてそのブランドを「ドコモの銀行」に改め、ドコモショップでの口座獲得にも乗り出す。
8月からは、カード、銀行、証券の連携も強化。dカードの引き落とし口座にドコモの銀行を指定し、dアカウントで連携すると、最大で2%の上乗せ還元を実施する。さらに、ドコモの銀行とマネックス証券の自動入金を設定して、dカードのスマホ決済を使うと、ここに1.5%の還元を上乗せする。ポイントを軸にしながら、獲得や利用促進を図っていくというわけだ。
そんなドコモFGを率いるのが、代表取締役社長に就任した廣井孝史氏だ。廣井氏はドコモで財務部長を務めた後、NTTの副社長としてCFO(最高財務責任者)を担当。その経歴を買われて、ドコモFGの社長に就任した。決済、金融戦略のフォーメーションがついに完成したドコモだが、廣井氏はどのようにドコモFGを運営していくのか。インタビューで同社の戦略や今後の展望を聞いた。
携帯電話の付加的なサービスから、金融事業で価値を生むフェーズに
―― 最初に、ドコモFGを設立した目的や狙いを教えてください。
廣井氏 何点かあります。1つ目が、金融事業が、NTTグループやドコモの中期経営戦略でグループ全体の業績を伸ばす際の大きな柱になっていることです。今までは、携帯電話にバンドルするための付加的なサービスでしたが、金融事業として価値を生まなければならない。そこを成長させるためという意味合いがあります。
もう1つは、マーケットの要請です。ソフトバンクさんや楽天さん、KDDIさんもそうですが、各オペレーター(通信事業者)が金融事業を再編しています。金融事業を統合して提供する競争に、フェーズが移ったということです。金利のある時代になり、サービスの展開もしやすくなりました。これがマーケットの要請です。
また、1つ目に関連したことですが、われわれが金融事業として価値を高めないと、ドコモにとってもバンドルする価値のないサービスになってしまう。利用者がどういう反応を示すかはこれからですが、われわれもd払いやdカードだけでいいのか。銀行や証券がついていることに価値が見いだされるようになると、モバイルだけでは厳しくなってしまう。そういうタイミングです。
―― ドコモ本体からスピンアウトする形で、dカードやd払いの事業を展開していますが、外に出たことでドコモ本体との連携が取りづらくなってしまうということはないでしょうか。
廣井氏 今のところ、そうなることは想定していません。もともとドコモでやっていた部隊がそのまま切り出されてきていますし、基本的なオペレーションも変えているわけではありません。規制上、必要なところは切り分けていますが、そこはあまり危惧していません。
―― ドコモFGが発足し、8月には住信SBIネット銀行がドコモSMTBネット銀行に社名を変更します。同時に、「ドコモの銀行」というブランドを打ち出してきたのは驚きました。個人的には分かりやすいと感じましたが、ネットでの反応を見ると厳しい意見も……。
廣井氏 (ネットは)チラ見しましたが、いろいろなご意見がありますね(苦笑)。われわれにはdカード、d払い、NISAとありますが、全てのサービスをクオリティー高く、統合的に提供できる能力があることをお示ししたい。ユーザーのニーズもどんどん移っていきます。そういった点では、ドコモの銀行という形で訴求できたのは意味があるんじゃないかと思っています。ドコモのサービスを使っていれば、銀行(のサービス)も享受できる(と分かる)からです。
過去の経緯も少し残っていますが、そういったことは流れでもあります。どこのグループもそうですが、サービスをフルセットで提供することは、競争のポイントになってくると思います。
いい意味でクセが強い特徴的な会社がそろっている
―― 逆に、証券はマネックス証券のままで、一体感があまりないような印象もあります。
廣井氏 事業の品ぞろえでいうと、ドコモSMTBネット銀行は50%(議決権比率)、ドコモ・ファイナンスは100%ですが、マネックス証券は49%でジョイントベンチャーを作っています。ジョイントの方法によって、少しずつ違いが出てくるのは仕方がないことだと思っています。代わりに、各業界におけるトップレベルの方々と、一緒に事業を推進することができます。
マネックス証券には300万口座、ドコモSMTBネット銀行に1000万口座あるのは大きい。これは、スクラッチから立ち上げているわけではないからです。ジョイントベンチャーの形でクオリティーの高いデジタル金融サービスを提供できるのはメリットが大きいので、急に名前を変えるのは得策ではない。そこの濃淡があっても構わないという考え方です。
ジョイントでは、相手も5割前後出資しているので、パートナーとしてコミットしてもらえます。そこが伸びなければ、彼らの出資価値を毀損(きそん)してしまう。信頼関係をビルドアップできていれば、何の問題もありません。
―― そういう意味だと、各社とも実績があり、濃いメンバーがそろっています。いい意味でクセが強い特徴的な会社がそろっているように見受けましたが、親会社として手綱を引く形になるのか、もっと違う形で運営していくことになるのかを教えてください。
廣井氏 手綱を引くという感じではないですね。皆さん、自分たちの会社を成長させたいというところは共通しています。どうやってドコモFGを成長させるかの方向感はあります。お互いにいいものを持っているので、シナジーを働かせれば、それぞれの事業が成長できることは見えています。ある程度、そこはアラインされている(認識がそろっている)気がします。
―― 目指している方向は同じということですね。
廣井氏 そもそも、自分たちだけで何かをやりたいのであれば、(ドコモFGに)入っていないですからね。そこは心配していません。
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