「ドコモの銀行」で何が変わる? ドコモFG廣井社長に聞く「通信×金融」の攻勢とグループ戦略(3/3 ページ)
NTTドコモ・フィナンシャルグループが発足し金融事業の統合推進を開始した。廣井孝史社長へのインタビューを通じて新会社の設立背景や今後の成長戦略に迫る。ショップ活用や他社連携を通じグループ全体のシナジー拡大と成長を目指す。
BaaSを活用することで、異業種の経済圏拡大に貢献できる
―― BaaS(Banking as a Service)以外の金融サービスも他企業に提供していく「スマートライフプラットフォーム」も発表されました。ここまで総合的にホワイトレーベルとして他社に機能提供しているところはないので、差別化になりそうですね。
廣井氏 BaaSはドコモSMTBネット銀行として提供しているところがありますが、お声がけしているところまで含めると数十社になります。ただ、ここは過去の営業の経緯(住信SBIネット銀行がドコモFG傘下になる前に提供していたサービスという意味合い)ですが、一緒になってからということだとタイミーさんがあります。われわれとしても、BaaSを提供すると、実質的に銀行口座が1つ増える形になるので、事業拡大につながります。
ドコモと緊密にやっていけばドコモ経済圏を形成できるかもしれませんが、モバイルユーザーだけがフロントになってしまうので、限界があります。一方で、タイミー経済圏のように、われわれ以外の法人の経済圏に機能を提供することで、そのお客さまが間接的にわれわれを使うことになります。dカードでもd払いでもいいのですが、サービスを使ってもらえれば収益のチャンスにもなりますし、提供した事業会社は事業を拡大でき、ユーザーもdポイントをもらえるなどのメリットが出てきます。
BaaSという考え方はすごくいい。それは、通信の世界でも同じことが起こっていたからです。もともと、光ファイバーはNTT東西が自社で売っていましたが、マーケットが伸びなくなった。そこで、敵に塩を送ってでもオープンにし、それを売ってもらうことで、マーケットが伸びました。NTT東西が販促費をかけなくてもどんどん売れますし、サービスを融合した形で使ってもらえる。こういった形で、卸として提供しながらマーケットを拡大するのは、1つのやり方だと思っています。
そういう意味だと、NTTグループは法人とのつながりや間口が広い。ドコモにはドコモビジネスがありますし、NTTデータやNTT東西もみんな法人営業をやっていて、日本中のほとんどの会社と接点があります。そういったところにアプローチできるオポチュニティは、すごく大きいですね。
―― 日本航空の「JAL NEOBANK」と「JALモバイル powered by ahamo」のように、ネットワークサービスを含めて提供するということも可能でしょうか。あれは、別々のタイミングでしたが。
廣井氏 できると思います。JALモバイル powered by ahamoも、JALさんの事業としてオファーできていますし、ロイヤリティーユーザーの囲い込みに使えるサービスが増えたのはいいことです。
dカードやd払いをホワイトレーベルで提供できる
―― BaaS以外にもさまざまなサービスがありますが、あの中から自由に選んで組み合わせるようなイメージなのでしょうか。
廣井氏 品ぞろえはご相談次第だと思っています。提供商品として今あるのはBaaSだけですが、dカードもホワイトレーベルで提供できます。dカードが発行体になり、それぞれの会社の名前を冠してもいいと思っています。競争は厳しくなってくるとは思いますが、やはりどれだけ充実したサービスを持っているかになってくるのではないでしょうか。
―― JALにはマイルがあるので、dポイントまでは必要ないと思います。ポイントはなしのような形も可能なのでしょうか。
廣井氏 独自のロイヤリティープログラムを持っているところには、違うアプローチになると思います。JALさんの場合、マイレージで囲い込んでその中の品ぞろえとしてバンキングや通信をやりたいということなので、そこにdポイントは売れませんから、単機能での提供になります。
ただ、そこまでのロイヤリティープログラムを持っている方は、あまりいません。そんなときにdポイントを使っていただければ、dポイントと金融をセットで(ユーザーに)売り込むことができます。dポイントが普及し、経済的な価値を生むようになったのは大きいですね。そうでないと、こんなポイントをもらってもしょうがないという反応になってしまいますから。
いろいろな展開の仕方があると思っています。例えば独自ポイントを展開しているスーパーが、d払いを使って「○○払い」をやりつつ、ポイントをdポイントにするといったことで、囲い込みにつながると考えています。
取材を終えて:金融サービスを磨いた上で、ドコモとの連携を見据える
自社でゼロから立ち上げた金融グループではないだけに、ドコモFGはドコモ色がやや薄め。通信との連携より、戦略として、まずは傘下の金融サービス同士を連携させていくことを重視している様子がうかがえた。ドコモの通信や料金とのシナジーを発揮するには、その次のステップになりそうだ。
金融、決済サービスの足並みがそろっている半面、通信の付加価値的なサービスに見えてしまう他社に対し、ドコモFG傘下の企業はそれぞれに特徴があり、規模も大きい。
各企業がバラバラで一体感がないようにも見えるが、それだけに、各社の施策がうまくかみ合ったときの化学反応が大きくなりそうな予感もある。特に、スマートライフプラットフォームは大きく伸びそうな印象も受けた。今後の展開にも、注目したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ドコモFGが仕掛ける「グループ連携」と「金融AI構想」 通信との融合でKDDIやソフトバンクに追い付けるか
NTTドコモは傘下の金融企業を束ねた「ドコモ・フィナンシャルグループ」を始動させ、決済や銀行などの事業を承継した。ドコモショップのリアルな接点を活用して金融事業を強化し、最大4.5%還元のグループ連携も開始する。先行する競合他社に対し、通信と金融の融合や法人向けプラットフォームの提供でキャッチアップを目指す。
新生「ドコモ・フィナンシャルグループ」本格始動 強みのドコモショップを生かし“やさしい金融”を訴求
NTTドコモ・フィナンシャルグループが7月9日、設立に関する記者会見を開催した。発表会では、従来の金融サービスにおいて課題となっていた難しい手続きや、身近に相談できる場所がない問題を解決する、生活者目線の「やさしい金融」への取り組みを紹介した。日常の決済を起点に各サービスがシームレスに連携し、安心でおトクな金融体験を強力に推進していく構想だ。
「ドコモの銀行」始動、個人向け銀行サービスを刷新 dカードやマネックス証券の利用で初年度最大4.5%還元も
ドコモ・フィナンシャルグループの連結子会社である住信SBIネット銀行は個人向け銀行サービスブランドを「ドコモの銀行」に刷新する。同時にdカードの利用やマネックス証券口座との連携によりdポイントがたまる新特典を順次提供する。ドコモグループの銀行サービスとして親しみやすく分かりやすい金融体験を目指す。
「d NEOBANK」は消滅して「ドコモの銀行」に、アプリアイコンも変更 住信SBIネット銀行の商号変更で
住信SBIネット銀行は、8月3日から個人向け銀行サービス名を「ドコモの銀行」に刷新する。サービス名の変更に伴い、「d NEOBANKアプリ」の名称は「ドコモの銀行 ドコモSMTBネット銀行アプリ」に変更され、アプリアイコンも変更となる。
なぜ「ドコモ銀行」じゃない? 「ドコモSMTBネット銀行」の名称に隠された通信と金融の“パワーバランス”
ドコモと三井住友信託銀行が住信SBIネット銀行を対等に経営する証として命名された。銀行法による名称規定や、BaaS事業の中立性維持が名称に影響を与えた。SBI証券ユーザーへの配慮や多角的なビジネス戦略の結果として生まれた最適解とは。
