「Galaxy Z Fold8」の極薄ボディーを実現した新技術「Flex Titanium」開発秘話 一方でトレードオフの機能も(1/2 ページ)
サムスン電子は最新の折りたたみスマホ「Galaxy Z8」シリーズを発表し、開発背景に関するインタビューを実施した。ディスプレイに導入した「Flex Titanium」や新バッテリー技術により、圧倒的な薄型軽量化と耐久性の両立を実現している。一方で携帯性を最優先した結果、Sペン非対応やパンチホール型カメラの採用など機能のトレードオフも生じた。
折りたたみスマートフォンのパイオニアとして市場をけん引してきたサムスン電子。同社は2026年7月に、8世代目となる最新の「Galaxy Z」シリーズを発表した。ラインアップは「Galaxy Z Fold8」「Galaxy Z Fold8 Ultra」「Galaxy Z Flip8」の3機種だ。特にGalaxy Z Fold8は、開くとパスポートのような横長のディスプレイになる新しい形が注目を集めている。
このGalaxy Z8シリーズのディスプレイには、より薄く、耐久性を向上させる新技術「Flex Titanium(フレックスチタニウム)」を導入している。このFlex Titaniumを採用するにあたり、どのような工夫を施したのか。
開発を主導した、サムスン電子 副社長 兼 Core Component Technology Team Byung-Duk Yang(ヤン・ビョンドク)氏が来日して報道陣からのインタビューに応じた。
7世代の知見を集結させ「理想の折りたたみ」を追求
サムスン電子は初代「Galaxy Fold」の投入以来、より薄く、軽く、高耐久の折りたたみデバイスを目指して技術革新を重ねてきた。そのために、ディスプレイやヒンジ、バッテリー、放熱設計に至るまで世代ごとに改善を施している。
理想的な折りたたみ体験について、ヤン氏は「大画面の没入感」「薄型・軽量化」「妥協のない性能」の3つを挙げる。そして、これらを高次元で融合させることこそが最大の挑戦だったと振り返る。
「7世代にわたる技術革新を通じて明確になったのは、理想的な折りたたみは1つの形状だけでは定義できないということだ」
そこで、今回はは3つの異なるフォームファクターを用意した。創作と生産性を追求したフラグシップ「Galaxy Z Fold8 Ultra」、エンターテインメント体験に特化した「Galaxy Z Fold8」、そしてコンパクトに持ち運べる「Galaxy Z Flip8」だ。
ヤン氏は「折りたたみでは全ての構成部品が相互に密接につながっている。ディスプレイ構造は厚さ、ヒンジは耐久性と開閉感、バッテリー構造は放熱やフォームファクター全体に影響する」と語る。単に形状を変えるだけでなく、素材から内部構造に至るまで製品全体をシステムレベルで再設計したことが、今回の進化を支えている。
新製品のGalaxy Z Fold8 Ultra、Galaxy Z Fold8、Galaxy Z Flip8いずれも、ディスプレイ、ヒンジ、バッテリーなどで共通の技術を取り入れ、統一された完成度を目指した
Flex Titaniumがもたらした薄型化と耐久性
今回の技術革新において中核をなすのが、新たに開発されたFlex Titanium技術だ。ディスプレイパネルを保護しながら強度と耐久性を維持し、薄型化を実現するために生み出された。
数々の衝撃テストや信頼性検証を経て同社が選んだ素材が「チタン」だった。チタンは強度と構造的安定性に優れ、過酷な環境でも変形しにくい特性を持つ。しかし、固く強固なチタンを折りたたみに適した柔軟な形状へと加工することは、極めて困難な課題だった。
この課題に対し、サムスン電子は「チタンプレート」と「チタン合金フィルム」という2つの素材で解決を図った。
下部を支えるチタンプレートには、ウェットエッチングとレーザーカッティングを組み合わせたハイブリッド製造工程を採用。下部に微細なパターンや大きめの穴を設けることで柔軟な動きを可能にし、上部には安定感のある支持構造を採用した。
一方のチタン合金フィルムは、チタンにバナジウム、アルミニウム、クロムなどを加えた独自合金だ。超薄型加工と熱処理技術により、強度を保ちながら髪の毛の約3分の1(数マイクロメートル単位)という驚異的な薄さを実現した。
また、本体の薄型化に伴い「端末が開けにくくなった」というユーザーの声に応え、ヒンジやマグネットの磁力、ディスプレイの張力を繊細に調整。端部に微細な溝を刻むことで、スリムな形状を維持したままスムーズに開閉できるようにした。
こうした内部構造の進化により、Galaxy Z Fold8 Ultraは折りたたみスマホとして世界最薄の厚さ4.1mm(開いたとき)を達成。Galaxy Z Fold8も201gというサムスンのFold史上最軽量の重量を実現している。
薄型化とトレードオフにしない バッテリーと急速充電の進化
デバイスの薄型化を進める上で、最大の壁となるのがバッテリーのスペースだ。サムスン電子は長い駆動時間と急速充電を両立しつつ、安全性と耐久性を妥協しない方針を掲げる。
Galaxy Z Fold8 Ultraでは、内部のディスプレイモジュール厚を10%削減して空間を捻出し、薄型ボディーに5000mAhの大容量バッテリーを搭載することに成功した。
エネルギー密度を高めるため、負極材には新たにシリコンカーボンを導入。さらに、膨張を抑える薄型カーボンコーティング、高電圧下でも構造を維持するドーピング技術、セルの安定性を保つ添加剤の適用など、セルシステム全体に精密なチューニングを施している。ヤン氏は「バッテリーシステム全体を再設計する難易度の高い開発だった」と振り返る。
充電性能においては、Galaxy Z Fold8/Fold8 Ultraは、同社のFoldシリーズとして初となる「45W超急速充電」に対応した。発熱を効果的に制御しながら充電速度を向上させ、バッテリー容量が15%増加しながらも、薄くて軽いボディーを実現した。
「完成したシステム全体は、実際の使用環境を想定した100種類以上の信頼性テストを通じて徹底的に検証している。単にテストに合格するだけでなく、ユーザーが日常で使う環境でどう動作するかが最も重要だ」(ヤン氏)
関連記事
スマホで久しぶりにワクワクさせられた「Galaxy Z Fold8」のカタチ パスポートサイズで完全に恋に落ちた
サムスン電子の新型フォルダブルスマホ「Galaxy Z Fold8」に触れてみた。実機を手にしてみたところ、かつてないワクワク感に包まれる結果に。横長フォルダブル「Galaxy Z Fold8」が“カワイイ”と評判? サムスン電子に聞く手応えと価格高騰のリアル
サムスン電子は、横長画面のFold8を追加したフォルダブル3機種を発売し、初速販売を前作比1.2倍に伸ばした。実店舗でのタッチポイントを2.6倍に増やす一方、メモリ高騰などで価格上昇が続く。同社は残価設定ローンや分割払いなど、購入障壁を下げる施策を重視しつつ、さらなる普及拡大を目指している。サムスンが「Galaxy Z Fold8」で横長折りたたみを投入する理由 AIの進化にもマッチ、“iPhone包囲網”も万全か
サムスン電子は新製品発表イベント「Galaxy Unpacked」でフォルダブルスマホの最新ラインアップを発表した。標準モデル「Galaxy Z Fold8」は開くと4:3の横長画面になり、AI機能やUIの最適化が図られている。背景には、AIの浸透に伴うデバイス多様化に加え、折りたたみiPhoneの登場を見据えた対抗策がありそうだ。パスポート型の折りたたみ「Galaxy Z Fold8」を速攻チェック 使い方を変える形状だが“なくなった機能”も
サムスン電子が発表した新たな折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold8」は、画面比率が大きく変わった。従来よりも横長になっており、閉じたときの縦横比率は16:10、開くと3:4の横長になる。コンテンツ視聴時の作法が変わるが、置いたまま使用する「フレックスモード」には非対応となった。「Galaxy Z Fold8 Ultra」は弱点を着実に改善 「Galaxy Z Flip8」は“閉じたまま操作”を拡張 実機で解説
従来型のフォールドタイプの「Galaxy Z Fold8 Ultra」は最上位モデルに昇格した。開いたときの厚さが、0.1mm削減され、本体を開きやすくする工夫も設けた。「Galaxy Z Flip8」はより薄く軽くなり、閉じたまま標準でアプリを操作できるようになった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.