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「世界初」ソフトバンクらが成層圏HAPSのリアルタイム追尾とレーザー測距に成功 光無線通信へ大きな一歩

ソフトバンクなど3者は成層圏通信プラットフォーム「HAPS」を地上から追尾してレーザー光で距離を測る実証に成功した。太平洋横断飛行や機上エッジコンピューティングの検証も合わせて行い通信遅延を大幅に低減した。2027年の商用サービス開始に向け国内拠点の整備や2030年の全国カバーを目指す。

 ソフトバンク、一橋大学、国立極地研究所の3者は9月17日、成層圏通信プラットフォーム「HAPS」(High Altitude Platform Station)を地上からリアルタイムに追尾し、レーザー光を用いて距離を測定するレーザー測距実証に世界で初めて成功したと発表した。


地上からHAPSをリアルタイム追尾しレーザー光で距離を測定する世界初の実証実験概要

 本実証は、HAPS用に開発したコーナーキューブ反射鏡「CCR」をSceyeの「LTA」(Lighter Than Air)型HAPSに搭載して実施した。地上側には一橋大学が設計した小型衛星レーザー測距装置「Omni-SLR」をベースにした可搬型装置を構築した。


成層圏のHAPS機体に搭載されたコーナーキューブ反射鏡CCRの実物

 8月22日に高知県の室戸岬沖を滞空する機体を観測して装置の調整を行い、8月23日から24日にかけて地上から機体を連続追尾しながらレーザー光を送信した。機体上のCCRからの反射光を地上で連続受信し、測距に成功した。

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高知県室戸市で実施されたHAPS追尾およびレーザー測距試験の構成

 実証では、上空の機体方向に有人航空機が存在する場合にレーザー送信を自動停止する安全プログラムを作動させた。

 各者の役割として、ソフトバンクが全体計画の策定や反射装置の製作および機体への搭載調整を担当した。一橋大学社会学研究科教授の大坪俊通氏と同全学共通教育センター助手の小林美穂子氏が可搬型装置の構築とソフトウェア製作を手掛けた。国立極地研究所地圏研究グループ助教の服部晃久氏がCCRの設計と機能検証およびデータ分析を担った。

次世代の光無線通信を実現するためのレーザー測距実証

 今回の実証の背景には、非地上系ネットワーク(NTN)サービスを発展させる、光無線通信がある。ソフトバンクは低軌道人工衛星とHAPS、地上間を高速な光無線通信で接続する「3次元通信ネットワーク」の技術開発を進めている。

 光無線通信は地球観測データの即時リレーや、インフラ未整備地域の接続、災害時の早期復旧、大陸間の低遅延バックボーンとしての活用が期待されている。2026年に実証衛星による宇宙と地上間の光無線通信試験を、2027年に衛星とHAPS間の双方向光無線通信試験を計画している。


衛星やHAPSと地上をシームレスにつなぐ3次元通信ネットワークの全体像

4者共同開発の小型衛星を2026年に打ち上げ予定の3次元通信ネットワーク実証

 光無線通信の実現には、指向性の高いレーザー光を移動体へ正確に照射し続ける高度な捕捉・追尾技術が不可欠となる。風の影響で複雑に位置が変化する成層圏の機体に対し、地上から高精度に光軸を合わせ続ける要素技術の確立が課題となっていた。

 レーザー測距実証の成功により、複雑に動くHAPSのリアルタイム追尾と大気中における光減衰のデータ取得が可能となった。これにより、将来HAPSに搭載する光無線通信装置の具体的な要件や仕様の検討を進める基盤が整った。

1万5000kmの太平洋横断飛行とエッジコンピューティング実証

 今回の実証は、ソフトバンクが実施した4G LTE相当の基地局による試験サービスの提供に合わせて行われた。Sceyeの機体は8月9日に米国ニューメキシコ州を出発し、13日間で1万5000km以上を飛行して8月23日に日本上空へ到達した。

 高知県室戸市周辺の上空で指定エリアの半径最小5km以内にとどまる位置保持性能を示した。地上スマートフォンとの通信試験では、動画視聴やビデオ通話、118番緊急通報、緊急速報メールシステムが安定して動作したという。


飛行の様子を捉えたSceyeのLTA型HAPS機体

米国ニューメキシコ州から日本上空まで1万5000km以上を太平洋横断飛行したルート

 さらに、機体上にモバイルコアとWebサーバを搭載するエッジコンピューティングの検証も世界で初めて実施した。データ処理を機体上で完結させ、往復平均応答時間68ミリ秒を記録。地上クラウドを経由する場合と比べて通信遅延を40%以上低減したという。


HAPS機上に処理サーバを搭載し通信遅延を40パーセント以上低減した技術検証

HAPSとエッジコンピューティングの組み合わせによる将来のユースケース像

国内拠点と運用のロードマップ

 ソフトバンクは将来の事業化や運用に向けた具体策も明らかにした。

 2027年からの商用サービス開始初期における機体の発着拠点について、ソフトバンク技術統括プロダクトR&D本部ユビキタスネットワーク企画統括部統括部長の上村征幸氏は「来年(2027年)の商用のタイミングではハンガー(機体格納庫)の設置は難しいが、約2年後には日本国内に設置して日本から打ち上げ、日本で滞空させたい」と語った。国内ハンガーの完成までは米国から機体を飛行させて日本上空で滞空させる。

 上村氏は「今回は日本の管轄エリアでは7日間ぐらいだったが、来年はそこを数カ月、日本上空に滞空させ、災害発生時には通信インフラ復旧のためにかけつける運用をしたい」と述べた。広域災害への対応を見据え、将来的な国内ハンガーの複数箇所設置も視野に入れる。

 カバーエリアの拡大に関して、上村氏は「単純に緯度だけで決まらないところがあり、日照時間や季節が影響する。来年は本州の北の端の青森県あたりまで飛ばし、翌年には北海道へと広げていく」と説明した。

 冬期の日照時間減少や強いジェット気流の影響を克服し、365日日本全国をフルカバーする体制の確立は2030年頃を目指す。


国内商用化や3次元通信ネットワーク構築に向けた今後の展開ロードマップ

周波数戦略とスタンドアロン型コアによる災害対策

 ソフトバンクは通信スペックや周波数利用の詳細も明らかにした。

 地上とHAPSを結ぶフィーダーリンクの周波数は、今回の試験では80GHz帯の「Eバンド」を使用したが、商用運用では38GHz帯および39GHz帯の周波数を使った装置へ移行する。地上スマートフォンと通信するサービスリンクには、制度上の商用周波数となる2.1GHz帯(バンド1)を採用する。

 光無線通信の伝送速度について、ソフトバンク技術統括プロダクトR&D本部ユビキタスネットワーク企画統括部次世代NTN開発部部長の藤野矩之氏は「次回以降に実際に通信する場合は、少なくとも10Gbps程度を実現しながら、ニーズや状況に応じて拡大していく」と説明した。

 災害時の対応も重要だ。上村氏はHAPSの主目的が倒壊した地上基地局の代替であり、地上のコアネットワークが稼働していることを前提とする旨を述べた。

 その上で上村氏は「HAPSの中に基地局だけでなくコア設備もソフトウェアで搭載した。おおもとの商用コアネットワークがダウンした場合でも、単体で機能するスタンドアロン型のネットワークを構築した上で、エッジコンピューティングを仕込んだ」と明かし、地上インフラ途絶時への備えを示した。

 成層圏環境での機体への影響について上村氏は「回収した機体への影響や過酷な環境に置かれた影響をこれから見ていくため、ハードウェアなどの課題はこれから見えてくる」と語り、分析を通じて改良を進める考えを示した。

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