インタビュー

20万円超のXperiaを「買い」に変えた3週間 ソニーが「モニタープログラム」を実施した理由

ソニーは「Xperia 1 VIII」の発売前に、公式アプリの最上位会員であるプラチナランクユーザー43人を対象とした初の体験型施策「Xperia新製品 モニタープログラム」を実施した。参加者は約3週間にわたり実機を日常環境で使い倒した上で開発陣との座談会に臨み、製品満足度97%・購入意向72%という高い成果を記録した。スペック訴求にとどまらず、ロイヤルカスタマーとの直接対話を通じて製品の持つリアルな体験価値を提示し、ブランドの「共創」を深める新たなマーケティング戦略としての意義を示した。

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 発売前の最新スマートフォン「Xperia 1 VIII」を日常生活の中で約3週間試用し、開発陣へ直接意見を届ける「Xperia新製品 モニタープログラム」が実施された。公式アプリ「Xperia Lounge」内でマイルをためた最上位のプラチナランク会員を対象に募集し、約300人の応募から倍率約7倍の選考を経て43人が参加した。単なる先行貸し出しにとどまらず、東京と大阪のソニーストアで開催した任命式と活動報告会、日常での体験を組み合わせた点が特徴だ。


「Xperia 1 VIII」

任命状(提供元:ソニー広報)

任命式の様子(提供元:ソニー広報)

スペックだけでは表せないリアルな声をいち早く届けたかった

 20万円を超える価格設定となるフラグシップ機において、スペック表の数字だけでは伝わらないリアルな使い心地や価値を届ける明確な狙いがあった。

 施策を実施した背景について、Global Sales & Marketing イメージングコミュニケーションマーケティング部門 マーケティング部 MC2課統括課長の小川由理子氏は、以下の通り話す。

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 「発表直後はどうしてもメーカーからのスペックや新機能といった情報に偏りがちです。スペックだけでは表せない日常生活で実際に使ってみてどうだったかというリアルな声を、全国のファンの皆さまやユーザーの方々にお届けしたいという思いがあり、できるだけ早いタイミングで実施することが今回の肝でした」

 同氏はリピーターの多いブランド特性を踏まえ、新製品の発表直後からファンと対話を重ねて製品価値を共に高めていく共創の重要性を強調した。

 Xperia Loungeの最上位であるプラチナランク会員を対象にした理由について、同氏は次のように話す。

「発売前のフラグシップ機を長期間にわたって貸し出すモニタープログラムは、ソニーとしては初めての試みであり、ご招待できる人数が約40人(最終的に43人)と限定的でした。そのため、まずはブランドを長年支えている最上位のロイヤルカスタマーをお呼びしたいと考えたのが直接の理由です」

 「Xperia Loungeを日常的に利用してマイルをためてくださっている熱心なファンに対し、これまで十分な特典を用意できていなかったという背景もあり、市場の誰よりも早く新製品を日常生活で使い倒してもらうという特別な体験を提供したいという思いがありました」

 「Xperiaを熟知しているロイヤルカスタマーに事前に使ってもらうことで、開発陣と膝を突き合わせた質の高いフィードバックや改善点を得ると同時に、そのリアルな声を一般の購入検討者へ届けることで、高価格帯に対する納得感や安心感につなげる共創の狙いがありました」

参加者の製品満足度は97% 7割が購入に前向きな姿勢

 ソニーストア銀座とソニーストア大阪で実施した任命式には当選者43人全員が参加し、参加率は100%を記録した。開発者から使い方のレクチャーを受けた参加者は自身のSIMカードを挿入し、約3週間にわたって日常生活で端末を使い倒した。その後の活動報告会では、手書きのメモや手紙を持参した参加者が5つのグループに分かれ、商品企画やカメラ、オーディオ、ディスプレイ、バッテリー、マーケティングの各開発担当者と活発な意見交換を行った。

 約3週間の試用をへた集計調査では、製品に対する満足度が97%に達した。

 「もともと購入予定だったが確信に変わったという方や、買い替える予定はなかったが、3週間使ったら買わざるを得なくなったという方も多くいらっしゃいました。SIMを挿して日常と同じ環境で使い倒していただいたことが、非常に大きかったと考えています」(同氏)

 購入意向に関するアンケート結果では、全体の28%が「購入したい」、44%が「購入を検討したい」と回答し、合計で72%が肯定的な姿勢を示した。手持ちの従来機と比較することで、画質や使い勝手の進化を明確に実感できる仕組みが機能した格好だ。


モニタープログラム参加者アンケート集計結果(n=43)(出典:ソニー広報note)

カメラ機能の進化とユーザーから寄せられたリアルな声

 ハードウェアとソフトウェアの両面で進化を遂げたカメラ機能への評価も高かった。「AIカメラアシスタント」を活用して写真を1枚提出する課題を設定したところ、普段カメラになじみのなかった参加者からも撮影頻度が増えて楽しくなったという声が相次いだそうだ。


AIがシーンを認識して、シチュエーションに合わせて表現力のある画作りを提案する新機能「AIカメラアシスタント」

 また、従来モデルからの変更点や日常使いにおける実用面でも多様な感想が集まったという。

 「発表を見たときはデザインの変更が気になったが、実際に触ってみると画質もよく、指の滑り込みもなく、手触りもとてもいいと好評でした。また、望遠カメラについても超広角から望遠までフルサイズ並みになり、旅行で撮影したら全然違ったと実感してもらえました。さらに、日常使いならではの意見として人混みでのイヤフォンの途切れにくさが向上した、明らかに途切れが減り、音質もよくなったという声もいただきました」(同氏)

 一方で、「座談会の時間や3週間の貸し出し期間の延長を求める声の他、3.5mmオーディオジャックの継続搭載や、ソニーらしくもっととがった商品を出してほしいという要望、さらには過去のタブレット端末の復活」といったコアファンならではの意見も出たと同氏は明かす。

 参加者の年齢層は40代と50代が中心で、Xperia 5やXperia 10などのシリーズを3年以上長く愛用するユーザーが多く含まれていた。大画面化やサイズ感に対してもポジティブな反応が得られたという。


ユーザーとメーカーの中の人が接点を持てる座談会の様子(提供元:ソニー広報)

大阪会場における集合写真(提供元:ソニー広報)

東京会場における集合写真(提供元:ソニー広報)

取材を終えて:「日常での体験価値」を訴求することが重要

 今回の取材を通して分かったのは、高価格化が進むXperia 1 VIIIにおいて、単なるスペック数値の訴求だけでは伝えきれない「日常使いにおけるリアルな体験価値」をユーザー自身に体感してもらうことの重要性だ。

 発売前の端末を約3週間使い込んでもらい、開発者と直接熱い対話を交わす「共創」の機会を設けたことで、ユーザーの懸念や不安が「価格に対する納得感」と製品への強い愛着へと変化した。ファンとともに製品とブランドの未来を育んでいくこの取り組みは、今後のスマートフォン市場における新たな顧客エンゲージメントの模範を示すものとなったといえる。

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