2006年、車は“ナイトライダー”への一歩を踏み出す
「未来の車はナイトライダーになる」という発想から、ゼンリンデータコムは、対話型のエージェントナビを開発。今年の秋にはまず、PCと携帯電話向けにエージェント機能を搭載する予定だ。
主人公マイケル・ナイトと、人工知能搭載の愛車「ナイト2000」が力を合わせて事件を解決する「ナイトライダー」。1982年〜1986年にかけて放映された米国のテレビドラマだ。
これにインスパイアされたのが、ゼンリンデータコムの林秀美社長。「未来の車はナイトライダーになる」という考えのもと、ユーザーとの対話から情報を提供するスタイルのエージェントキャラクターを開発、マスコミを集めた場で開発成果を披露した。
その“ナイト2000”のゼンリンデータコム版、第一号となったのは、「サツキ・メイ・リン」。身長158センチ体重42キロ、チャームポイントは目元、ウインクという21歳で、初めてユーザーの前に姿を見せたのは、「第37回東京モーターショー2003のデモだった。
“サツキ・メイ・リン”嬢。名前の由来は、開発の佳境が5月だったことから「サツキ・メイ」、「リン」は社長の名前(林)の音読みとゼンリンから取ったという。音声認識とシナリオ対話を採用していることから、辞書やシナリオの肥大化を防ぐため、“1ジャンルに1エージェント”という形での提供を予定している。サツキはラーメン情報の検索を得意とするエージェント。ラーメン検索を開始するとレースクイーンの衣装からチャイナドレス姿に変身する
ユーザーの趣味趣向や行動計画、行動パターンに基づいた情報を蓄積し、その時々に応じた最適な情報を会話形式で提供する──そんな使命を帯びた“サツキ・メイ・リン型エージェント”をゼンリンは、2006年を目処にカーナビと連携させたい考え。それに先駆けて今年秋にもPCや携帯電話向けに展開する計画だ。「カーナビだけではなく、ハードディスクレコーダーやホームサーバなどでもキーボードを使わずに情報を引き出せる」(ゼンリンデータコムの林社長)と話すなど、将来は同じエージェント機能をさまざまなデバイスで使えるようにするという。
サツキのシステム構成。ユーザーが話した言葉は音声認識エンジンで認識、会話そのものはエージェントエンジンが制御してどんな検索条件なのかを取得する。条件をリコメンドエンジンに送って、データベース(たとえばラーメン情報など)から適した条件のデータを引き出し、地図とともに表示。ユーザーには音声で情報を伝える。エージェントとの会話は現段階ではシナリオによる対話方式。ただ複雑なコンテンツで会話の枝葉が多くなると、何万通りものシナリオが必要になって開発効率に影響することから、時期を見て人工知能を取り入れる予定
ゼンリンがエージェントに担わせたいのは、「複数のステップを踏んで検索するところで検索ターンを減らし、最適な情報を見つける」という作業。携帯版では、例えばグルメ情報を検索する際にエージェントキャラクターが出てきて「青山で個室がある焼き鳥屋」と伝えれば情報が出てくるような機能を想定している。「ある検索の段階を一気にエージェントがコントロールするようなこと。こうした機能の便利さはPCでもケータイでも変わらない。基本的に携帯版とPC版は同じサービスだと考えてもらっていい」(林社長)
これに、“移動している”という携帯ならではの利用シーンを意識した機能をプラスアルファとして加えるという。
今後は“地図”にプラスアルファされるものが重要に
現在、ゼンリンデータコムの収益の柱となっているのは、PC向けのネットワーク型地図情報サービス「its-mo Navi」「its-mo Guide」と携帯電話向け地図情報サービスの「ゼンリン携帯マップ」。これまでは地図の見やすさや使いやすさが開発の主眼に置かれていたが、地図のクオリティがあるレベルまで達した時には、その上にどんなサービスが載っているかが問われると林社長。「例えば10年後を考えたとき、どこでどんな楽しいイベントをやっているのか、どの店がおいしいのか──といった情報にこそお金は払うけれど、付属的な地図にはお金を払いたくないのではないか」
ゼンリンではインフラとしての地図の上に、どんな情報を載せているか、どんなインタフェースでユーザーに最適な情報を提供するかに力を入れる方針。その一つが“サツキ・メイ・リン”のようなエージェントサービスというわけだ。
またエージェントを介して集まったデータベースもビジネスに生かしたい考え。「エージェント経由で、例えば同じ味噌ラーメンでも、どの店が人気なのか、このラーメンが好きな人は、どんな行動パターンなのか──といったデータをとれる。個人のプロファイルがなくても、ユーザーがどんな時に何をしたのか、何を要求したのかという情報は、次のビジネスシーズで生かせる」
情報を持つさまざまな企業と提携して、地図というインフラにさまざまな情報が集まるようにしていく──まずはそれをPCや携帯電話といった既存サービスで展開し、カーナビやエージェントサービスユーザーのニーズをつかむというのがゼンリンデータコムの今年の目標。「この1〜2年が(他社と差をつける)勝負」になると林社長は見ている。
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