3Gサービス開始で欧州勢力図は変わるのか:欧州携帯市場の勢力図(2)
Vodafoneグループに、通信オペレータ各社がアライアンスで対抗するという構図が生まれている欧州携帯市場。3Gサービスの開始で、その勢力図は変化するのだろうか。
欧州の携帯市場について、現状と今後の動向を探る企画「欧州携帯市場の勢力図」。第1回では、欧州各国でデータ通信サービス「Vodafone live!」を展開するVodafoneグループに、通信オペレータ各社がアライアンスで対抗する動きがあることを紹介した(5月19日の記事参照)。
こうした欧州の動向を、どう見たらいいのだろうか。「規模をめぐる戦い」と話すのは、英国の調査会社Ovumのアナリスト、ニール・アンダーセン氏だ。技術力や経済力を備えた大手オペレータの優勢は今後さらに強くなると言い、今後も多少の変動はあれど、シェアの順位は簡単には変動しないという見方だ。ちなみに、英、仏、ベルギーなどで導入されたナンバーポータビリティも、各社のシェアにはほとんど影響を与えていない。
アンダーセン氏が今後の成長を占うキーワードとして挙げるのは、“既存顧客をいかにして引き止めるか”。例えば新規参入組の3G専業オペレータHutchisonは、徹底的な低価格戦略を展開。2003年のクリスマス商戦以降、着実に成果を上げている。
またカメラ付き携帯電話が普及期に入った今、“どんなMMS(マルチメディア・メッセージング・サービス)を提供すればユーザーをつなぎ止められるのか”も、鍵になりそうだ。その点では、「最大手Vodafoneの評価が高い」とアンダーセン氏。「特に英国において、顧客ケアの向上やネットワークなど技術面の改善が見られる」と言う。
端末メーカーとキャリアが手を組むことで可能になる、端末とサービスのセット化は“日本式成功パターン”ともいえる方式。欧州では端末ベンダー主導で市場が発展してきた経緯から、端末ベンダーはこの方式に乗り気ではないが、Vodafoneはこれに準じた方式で成功を収めている。
同社はアジア系端末メーカーと連携を図り、「Vodafone live!」対応端末としてアジアメーカーのものも多数投入。シャープ製端末の人気が人気を博しているのは有名な話だ。3Gの第一号機にも韓Samsung製のものを採用している。
またOrangeもキャリアのロゴ入り端末を提供中で、さらに増やす意向。オペレーターによる端末のブランド化も、今後の重要な鍵を握りそうだ。
欧州3Gサービスの現状
次に、3Gがオペレータの勢力図に与える影響を見てみよう。
欧州で3Gサービスが導入されたのは2003年3月。ドコモが資本参加している香港のHutchison 3 UKが、英国でまず開始し、以降Hutchisonは、伊、スウェーデンなどで3Gを展開している。
昨年まで3Gサービスの導入については静観してきた主要欧州系オペレータ各社だが、2004年に入ると2月にVodafoneが、データ通信カード「Vodafone Mobile Connect 3G/GPRS PC Card」で3Gサービス参入を発表。その後、T-Mobileもデータ通信カードを使った3G参入計画を発表するなど、欧州3Gはビジネスユーザー向けのデータ通信カードで幕を開けた。
5月にはVodafoneが、一部市場でコンシューマー向け3G向けポータルサービス「Vodafone live! with 3G」の提供を開始(端末はSamsungが提供)するなど、3Gを巡る動きがあわただしくなっている(2月25日の記事参照)。
ただ3G商戦が立ち上がるのは早くても、端末の25%がこの時期に売れるといわれるクリスマスシーズンから。一般ユーザーに認知され、浸透し始めるのはそれ以降になるという見方が大勢を占める。
オペレータの3Gライセンス取得状況は
現在、主要オペレータの中で3Gライセンス取得国が最も多いのがVodafoneで、12カ国。次いでOrangeの11カ国、Hutchisonの6カ国と続くが、Orangeは、独、スウェーデンの2市場については、3Gライセンスを行使しないと見られている。
通信オペレータ | ライセンス取得国 |
---|---|
Vodafone | 英、独、仏、伊、オランダ、ベルギー、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランド、スウェーデン、スイス |
Orange | 英、独、仏、オランダ、ベルギー、ポルトガル、スウェーデン、スイス、オーストリア、デンマーク、ルクセンブルグ |
Hutchison 3G | 英、伊、スウェーデン、オーストリア、デンマーク、アイルランド、ノルウェイ |
T-Mobile | 英、独、オランダ、オーストリア |
TIM | 伊、ギリシャ |
Telefonica | 独、伊、スペイン、スイス、オーストリア |
mmO2 | 英、独、アイルランド |
KPN | 英、独、オランダ、ベルギー |
T-Mobile、mmO2、TIMは、現在2(2.5)Gを提供している各国で3Gを提供することになる。Hutchisonに出資しているKPNは、独、オランダ、ベルギーの既存3カ国にHutchisonを通して英市場を加えることになる。
各事業者の3G展開計画を見ると、3Gの導入後もオペレーターの位置付けに大きな変化は起こらないと見ていいだろう。欧州最大の市場である独・英・仏・伊・スペインの5カ国をすべて手中に収めているVodafoneの優勢は当面続きそうだ。ただ、既存顧客ベースを持たないHutchisonが、どこまで他社からの乗り換え顧客を集められるかは、順位に影響を与える要因になるかもしれない。
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