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2007年は携帯用燃料電池 元年携帯向け燃料電池 現状と課題(5/5 ページ)

携帯電話用燃料電池の開発に目処がついてきた。複数の開発者が、規制緩和と機器側の電力要求から、2007年を実用化のターゲットとする。国際燃料電池展のセミナーを元に、燃料電池の仕組みを振り返りながら、現状と課題を探る。

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出力密度と触媒電極

 出力密度(パワー)は燃料電池のサイズに直結する。携帯電話では2ワット、そしてノートPCでは12ワットが必要。出力密度が大きいほど小さな燃料電池が実現できる。とはいえ、メタノールはもともと出力密度が高くはない。

 「DMFCの燃料であるメタノールは液体のため、ガス(水素)に比べるとエネルギー密度(容量)が高い。ただし複雑な化学反応をしなくてはならないので低出力密度(低出力)」(NECの久保氏)

 つまり「エネルギーはたくさんあるが、ちょろちょろとしかパワーが出ない」(NECの久保氏)わけだ。

 「パワーを取り出そうとすると大きくせざるを得ない。携帯向けではサイズを小さくしなくてはならないので実用化が難しかった」という事情がある。

 出力密度はもっぱら触媒電極で決まる。触媒反応を効率化させるには、触媒をできるだけ広い面積に付着させる必要がある。NECでは触媒に使う白金をカーボンナノホーンに付着させ、微細で広面積を実現。現状の70ミリワット/cm2から100ミリワット/cm2を目標としている。

エネルギー密度とメタノール濃度

 エネルギー密度(容量)は、携帯機器向けで必要とされる長時間駆動に直結する。水素などに比べて高いエネルギー密度を持つメタノールだが、「燃料電池は、2000mAh以上のレンジで優位性がある。1000mAh以下ではリチウムイオン電池に対して優位性がない」(Samsung AITのチャン氏)のである。

 エネルギー密度の向上には、触媒電極を高活性化させ、現状0.3〜0.4ボルトの動作電圧を向上させる方法が1つ。そして何より重要なのが、メタノール燃料の高濃度化だ。

 「100%に近いものが使えるのを前提としている」(東芝の五戸氏)

 「リチウムイオンの何倍かになる濃度30%くらいが実用化点。濃度を50%に近づけるのが目標」(NECの久保氏)

 高濃度化が難しい理由は、濃度を上げていくと電解質膜をメタノールが透過してしまう「メタノールクロスオーバー」という現象が発生するため。透過したメタノールは発電することなく酸素と直接反応してしまい出力が大きく下がってしまう。

東芝の長谷部氏のスライドより。エネルギー密度を上げようとしてメタノール濃度を上げていくと、電流密度も電圧も下がってしまう(つまり電力密度が下がる)。東芝ではDMFCの電解質膜としてポピュラーなNafion(ナフィオン)膜に、レーザーを照射してメタノールクロスオーバーを減らす技術などを開発し、改良に努めている

 このメタノールクロスオーバーを防ぎ、高濃度のメタノール燃料でも高出力を維持できる電解質膜の開発が不可欠となっている。

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