ドコモのiDとEdyは競合しないのか? 電子マネー業界を占う(2/2 ページ)
ドコモが携帯クレジットサービス「iD」を積極展開している。この積極的な姿勢は、ほかの電子マネー事業者との摩擦を生まないのだろうか? 電子マネー業界を分析する。
電子マネー業界をふりかえれば、かつてはEdyとSuica電子マネーが主導権争いで火花を散らしていた。対応店舗数などで先行するEdyを、交通インフラに利用可能という強みを持つSuicaが追う……という構図だったが、ここにきてiDが「第3の電子マネー」に浮上しそうな様相を呈している。
とにかく、iDの対応店舗の増加ペースが激しい。am/pm全店舗(3月27日の記事参照)、ローソン全店舗(3月28日の記事参照)、イオングループのジャスコやミニストップ各店舗(3月27日の記事参照)などでの導入がアナウンスされており、iDが利用できる店舗を1年間で10万店にまで増やす計画が明かされている(4月4日の記事参照)。「EdyとSuicaの争いを決着させるキーマンか」とも言われていた、コンビニのローソンを90億円の資本提携であっさりと取り込んでしまうあたりは、ドコモという企業の底力を感じさせる。
さらに気になる動きもある。iDとSuica電子マネーインフラの共通化が正式にアナウンスされたのだ(4月3日の記事参照)。iDに対応したリーダー/ライターが置いてある店舗では、モバイルSuicaの電子マネーも利用可能ということだから、Suicaがこれによって勢力を増す可能性もある。あるいはiDが、Suicaの電子マネーが威力を発揮する「駅ナカ」の店舗に進出するという意味もあるかもしれない。ちなみにSuicaはJCBとも提携を発表している(3月30日の記事参照)。
ただ、JR東日本の広報に聞いたところ「ビジネスモデルは今後詰めていくので、詳細はまだ分からない」とそっけない答え。ローソンでSuicaの電子マネーが使えるかどうかは、まだ分からないようだ。
Edyを提供するビットワレットはどう考えている?
NTTドコモは、プレーヤーとして電子マネー事業者と競合することはないとコメントしている。小額決済市場はまだ立ち上がっていない状況であり、iDを自ら展開することでほかの事業者と「市場を育てる」のだという。ドコモの中村維夫社長は定例会見の場で、「パイを食い合うことはない。いい関係だ」と強調している(3月30日の記事参照)。
電子マネー事業者はどうなのか。例えばEdyを提供するビットワレット広報部はドコモ同様「小額決済市場を広げようと思っている。あまり発達していない市場を一緒に開拓していく考え」と話している。「プリペイドかポストペイか、ユーザーが自分にあったやり方を選ぶと思う。確かに競合するところもあるかもしれないが、使い方も違うのでそこまでバッティングしていくとは考えていない」。なお、EdyはモバイルSuicaの電子マネーとも共存できるとする議論を展開している(2004年8月27日の記事参照)。
ビットワレットの余裕のあるコメントは、同社が電子マネーとして市場でそれなりの確固たる地位を築き上げたから言えるものだろう。実際、ITmedia誌上で「今後、あなたの携帯をサイフ代わりにするのはどれ?」と題して簡易な集計(クイックポールによる調査)を行っているが、4月12日の時点では60%強がEdyを選択するという結果になっている。
しかし今後、DCMXの本格展開により情勢は変わるかもしれない。そのとき、iDのポストペイサービスがプリペイド市場に影響しないといえるのか。5月以降の電子マネー業界に注目したい。
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