au新モデル、「映像のキレイさ」はどれほどか:有機ELモデルも登場(2/2 ページ)
「映像にこだわる」と明言されたよう、auの春モデルには、ディスプレイに特徴を持つ製品がいくつか用意されている。MEDIA SKINの有機EL、3モデルに搭載されたIPS液晶のクオリティをチェックした。
一方、「W51CA」「W51SA」「W51H」に採用されたのが、IPS(In-Plane Switching)液晶だ。液晶の方式にはこのIPSのほかにも、VA(Virtical Alignment)やこれら3機種の既存モデルが搭載していたTN(Twisted Nematic)といった方式が存在しており、IPSは広視野角や深い色深度といった特徴を持つ。実際、これら3機種は上下左右170度という広い視野角を確保している。
IPSには優れた点も多いが、原理上、VAやTNに比べて画面が暗くなりやすい(輝度が低くなりがち)、コントラストが上げにくい、反応速度が遅いといったデメリットも併せ持つ。確かに視野角が広くなることは、さまざまな視聴姿勢で画面を見られてしまう携帯電話においては大きなメリットとなるが、これらのデメリットに目をつぶってもIPSを採用する必要があったのだろうか。
「確かに単純にデバイスとしてIPSを評価すれば弱点があることも確かです。ただ、IPSも多くの液晶テレビに搭載されるなど技術改良が進んでおり、映像の視聴、例えばワンセグ視聴を念頭とした場合、IPSでも十分なクオリティが確保できると判断しました」(同社)
有機ELやIPS液晶のメリットについて、KDDIでは「鮮やかさ」を第一に挙げる。
確かにMEDIA SKINの有機ELディスプレイで映し出す静止画は、これまでの携帯電話ディスプレイの表示クオリティを大きく上回る。ただ、元になる画像データのクオリティが低ければ高性能な表示デバイスの能力は生かし切れなず、この傾向は動画コンテンツになるとさらに顕著となる。
展示機で視聴する限り、正直なところワンセグ放送を映し出す限りでは、有機ELやIPS液晶を搭載するからといって劇的に映像がキレイになることはない。描画エンジンのチューニングか、一部のIPS液晶搭載モデルは肌色の発色に優れているように思えたが、そう大きな差とは感じられない。むしろ、表示デバイスの能力がコンテンツのクオリティを上回っている違和感の方が大きい。
ただ、高速回線でダウンロードしたリッチコンテンツや、PCからインポートされたクオリティの高いコンテンツを表示するとなれば、強力な表示デバイスはその能力をフルに発揮できる。特に高速回線についてはEV-DO Rev.Aの導入が決定しており、最高で下り3.1Mbpsの高速化が計られる。このスピードがあれば高解像度ビデオコンテンツなどの提供も現実的なものになるだろう。
「映像にも徹底してこだわる」という同社だが、携帯電話における映像とは、端末だけでは完結しない。映し出すサービス/コンテンツの提供まで合わさって初めて「映像」としてユーザーの手元に届く。「ソフト/サービスと美しい映像を映し出す端末はクルマの両輪。有機ELやIPSだけを推進するのではなく、全面的に“映像へのこだわり”を突き詰めていきたい」
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