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“ブランドがない” だからこそこだわったワンセグとカメラ――「N905i」開発の裏側開発陣に聞く「N905i」(2/2 ページ)

ドコモの2007年冬モデルは、家電系の端末メーカーが、カメラやテレビのブランドを冠した端末を多数ラインアップした。しかしNECは、強力な家電系ブランドを持たない分「実力で勝負した」という。開発陣に520万画素カメラやワンセグの実力、使いやすい回転2軸ボディへのこだわりを聞いた。

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回転2軸ボディでマルチタスクを使いやすく

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横画面用のメニューも用意。このメニューからは、ワンセグ視聴、ビデオ再生、カメラ、マイピクチャ、iモーション、フルブラウザを起動できる

 N905iはNEC端末にしては珍しい、メインディスプレイを表にして折りたためる回転2軸スタイルを採用した。かつてNECはムーバ端末「N506i」(2004年6月発売)でも“リバーススタイル”として回転2軸を採用したことがあるが、当時は基本的に縦に持つことを想定していた。

 N905iが回転2軸を採用したのは、ワンセグやカメラなどの機能が一般的に横向きのほうが使いやすいからだ。「N905iはワンセグと高画素カメラが一番の特徴になります。ボディ形状はそれらが一番使いやすく、かつ適切なサイズであることが求められます。その結果、回転2軸スタイルを採用しました。ケータイの老舗として操作性にはこだわりがあります。“必ず使い勝手をキープした上で、ワンセグやハイスペックなカメラを載せる”という方針でした」(黒田氏)

 ボディスタイルの変化と連動した機能も用意した。ワンセグ視聴時の「クイックインフォ&スタイルチェンジ」は、「形状の変化によって、ユーザーの操作を減らせないかと考えてできた機能」(板本氏)だ。

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横向きでも、一通りの操作が可能だ。右の[ミュージック]キーはシャッターや決定キーになる。その隣は[左]/[右]キーになる。[クリア]キーは「CLR」と表示されていて分かりやすい。液晶画面側のサイドキーは、[上]/[下]キーとして利用する

 クイックインフォ&スタイルチェンジは、ディスプレイを回転させるとワンセグが起動する機能とワンセグ視聴中にメールを受信するとテロップが流れる機能との合わせ技ともいえるもの。ワイド画面でワンセグを視聴している最中にメールを受信し、テロップが流れている状態で端末を縦に戻すと画面が切り替わり、画面上段に大きくメールの本文画面、下段にワンセグの小さな画面の2画面が表示される。

 「ユーザーがテロップを見たときにスタイルを戻すということは、次の操作でメールを見ることが想定できます。そこで、わざわざ機能メニューやマルチキーでメールを起動することはせずに、スタイルを変更するだけでメールの本文が表示されるようにしました」(板本氏)

 ここでメールの返事を入力をしながら、ワンセグをそのまま視聴でき、本文を確定してメールを送信し終わり(送信中はワンセグ画面が消える)、再び横画面スタイルに戻すとワンセグの画面に戻る。

 メールを見るために、本体を縦に戻すのは必然の動作であり、ワンセグ視聴時にはメール利用時の動作と機能が連動する。一度できることに気がつけば、次からは無意識のうちに操作できるようにしたわけだ。

photophoto ディスプレイを回転させるとワンセグが起動する。ワンセグ視聴中にメールを受信するとテロップが流れる。テロップは15秒くらい流れているので、その間にスタイルをチェンジする

photophoto 縦表示ではメール画面が大きく、ワンセグは画面下段に小さく表示される。そのままメールの編集、送信が可能。再びディスプレイを回転させると、ワンセグのワイド画面表示に戻る

 複数の機能を同時に使えるマルチタスクの組み合わせは、多ければ多いほど便利に使えるシーンが増えそうだが、板本氏は「ユーザーの意見を待ちたい」と慎重だ。

 「一番利用シーンが多くて分かりやすいのは、ワンセグとメールかなと思います。電波産業会(ARIB)の規定で、ワンセグ放送では必ずデータ放送も表示することが決められています。ディスプレイにワンセグ映像とデータ放送を表示し、さらにメール画面を出すだけでもレイアウトが難しい。ワンセグとWebブラウザという組み合わせも考えましたが、実用性は低いと判断しました。ただ、マルチタスクについてはユーザーの声に耳を傾けながら変えていきたいと思います」(板本氏)

ブランドがない──だからこそこだわったワンセグ

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番組に合ったサウンド効果と映像効果の組み合わせを設定できる「ワンセグ効果」。音と映像の効果は連動しているので、別々に設定することはできない。なお、横画面でワンセグ効果を設定するには、[プッシュトーク]キーを使用する。ボタンを押すごとに効果が切り替わっていくので、画面や音を確認しながら設定できる

 NEC端末としては初めてワンセグに対応したN905i。だがNECは、FOMA初のワンセグ対応機を最初に試作するなど(2003年7月の記事参照)、ワンセグケータイについてはむしろ先発組ともいえる。しかし、HSDPAへの対応などWebアクセス機能の拡充を優先したため、ワンセグの製品化が遅れたという。またNECには、シャープの“AQUOS”、松下電器産業の“VIERA”、ソニーの“BRAVIA”といったAVブランドがグループ内にない。だからこそ開発陣は「ワンセグ機能こそ実力で見てもらわなければならない、という意気込みだった」(黒田氏)と振り返り、映像の質感や受信感度に関して、かなり気を遣って調整したという。

 ワンセグ放送の受信感度に関しては、ダイバーシティアンテナ搭載モデルに比べれば劣るものの、それ以外のモデルと比べると大差ないという。また、予約録画や外部メモリカードへの録画、タイムシフト再生といった、基本的なワンセグ機能もサポートする。

 N905iのワンセグ機能の中でも優れているのが、タイムシフト再生だ。機能そのものは他社モデルにも搭載例はあるが、N905iだけの便利な使い方を用意する。

 タイムシフト再生は、必要なときに一時停止ボタンを押すと、その時点から録画が始まり、あとから追いかけ再生ができるというもの。N905iはそれに加えて、通常の視聴時でも常に過去2分間程度の映像を内蔵メモリーに録画し続けることで“ちょっと目を離して見逃してしまったシーンを2分前に戻って見る”という使い方もできる。“ながら”視聴の機会が多く、目を離すことの多いケータイのワンセグ視聴スタイルにマッチした機能だ。

 また、ヤマハサウンドがワンセグにも対応したのも大きな特徴だ。「ワンセグ効果」という機能で、番組に合ったサウンドと映像効果を一括で設定できる。効果は“ライブ”“コンサート”“ドラマ”“スポーツ”など、全部で9種類。それぞれ音質だけではなく画質も連動して明るさや色合いが最適な設定になる。

「ワンセグは、水準以上の性能と機能を搭載し、きれいに見えるように仕上げました。この分野は実力で信用を勝ち取っていくしかないですから」(黒田氏)

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N905iのタイムシフト再生。視聴中に一時停止をし、最大2分前まで巻き戻して再生できる
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新幹線の中や喫茶店などテーブルはあるが卓上ホルダが使えない場所では、[9]キーの長押しで横画面表示にし、このようなスタイルで視聴できる。また[8]を長押しすると、視野角を制限するプライバシーアングルモードになるので、隣の人に見られたくないときに便利だ

フルスペック端末にふさわしい高級感を演出

 前モデルのN904iは、2つの箱が開閉する驚きと楽しさをコンセプトに、「2 BOX」(バイボックス)というデザインが採用された。意図は違うが、N905iもディスプレイ側ボディとダイヤルキー側ボディのデザインがはっきりと分かれ、2つの箱を重ねたようなフォルムになっている。

 ダイヤルキー側は持ちやすいラウンド形状を採用し、ディスプレイ側は液晶を効率的に使えるよう四角い形状を採用。幅は49ミリと50ミリを下回り、エッジに丸みがあるため手になじみ持ちやすい。重量バランスもトップヘビーになることなく、持ってみるとスペック上の数値より小さく軽く感じる。

 背面のアルミプレートの処理はカラーバリエーションごと異なり、テクスチャーの違いを楽しめる。フルスペックケータイにふさわしい高級感のあるデザインを目指し、それぞれの質感にこだわった。

photophoto ホワイトのダイヤルキー側ボディには、見る角度によってパールがかった色に見えるニュアンスドカラーを採用。高級車などに使われているようなホワイトを目指したという。ホワイトとブラックはツヤを出し、レッドとピンクはマットな感じに仕上げた。特にピンクは、大人の女性が持っても映える色をコンセプトに落ち着いた色合いにしているという。「NEC製端末のピンクは甘いピンクが多かったが、N905iでは男性が持っても恥ずかしくないピンク」(黒田氏)

photophoto PCのようなダイヤルキーが特徴的。「自分からどんどん情報を発信する人が、がんがん打っても押しやすく、疲れないキーを目指した」(板本氏)。NEC製端末としては初めてフレームレスタイプを採用。サイズを大きくし、キー同士が隣り合っていても境目が分かるようにした。また、キートップはくぼんでいるので、爪の長い女性でも押しやすいという

キーバックライトはイルミネーションのような演出で明滅する。バックライトが点灯した状態でそのまま置いておくと、ライトが消灯する瞬間に一度ふわっと明るくなってから、スッと消える

photophoto 着信/不在着信ランプはディスプレイ側の左右側面に配置。一見すると見にくく感じるが、ボディを回転させたても視認できる位置だ。正面からも見えるように、LEDは少し出っ張っている。卓上ホルダにセットした状態でも確認できるという。

機能的な部分は黒く、それ以外の部分に色を付けるというデザイン処理が行われ、カメラ、アンテナ、サブディスプレイ部分、充電端子部などは黒くなっている。カメラはやや盛り上がっているので、底面は完全にフラットになっていないが、カメラを使うときは指がかかるので使いやすい

photophoto ダイヤルキー側ボディ底面。「側面のラウンドをきれいに見せて、先端部はあえてフラットにしています。そうすることで、スパッと切れたようなデザインになっています」(黒田氏)。大型の樹脂製端子カバーの採用には、社内でも賛否両論があったという

photophotophoto カラーバリエーションに合わせ、待受画面やメニューなどの内蔵コンテンツを用意。ピンク用に用意された「Pinky Panda」は、メニューを選択するとアイコンの間を歩いていったり笹を食べたりする。季節ごとにイベント映像も用意した

待受画面のソフトキーを消せるようになった

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 「N905i」では、待受画面の表示が少しだけ改良されている。従来は画面下にソフトキーの割り当てを示すアイコンが常に表示され、消すことができなかった。N905iでは自分で表示/非表示を設定できるようになっている。「デスクトップ表示設定」で、「使用時のみ表示」を選ぶと、決定キーを押したときやニューロポインタを動かしたときだけ、アイコンが表示されるようになった。それ以外のときは、待受画像を全面画表示で楽しめる。

 設定は、決定キーを押す、あるいはニューロポインタを動かした状態で「設定」→「デスクトップ表示設定」→「常に表示/使用時のみ表示」で行える。


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