“BRAVIA”の価値を高めるデザインとサイズを実現した“優しいケータイ”「SO906i」:開発者に聞く「SO906i」(後編)(2/2 ページ)
“BRAVIAケータイ”SO906iは、AV機能の進化はもちろん、モーションセンサーやU字イルミネーションなど、新しいデバイスを積極的に取り入れた機種としても注目したい。大きくはアピールされていないが、小型化や持ちやすさについても工夫が施されている。
刻印された「BRAVIA」ロゴでブランドをアピール
デザイン面では、背面に金属素材を使い“BRAVIAケータイ”にふさわしい高級感を演出している。カラーによって処理が異なり、Aurora RedとCosmic Blackにはヘアライン、Starlight BlueとMirage Pinkには梨地(梨の表面のようにザラザラした処理)が施されている。「表面と裏面で質感が違いますが、できるだけ表情が近い仕上がりにしています」(鈴木氏)
カラーバリエーションのAurora RedとCosmic Blackは“BRAVIAケータイ”の王道色として展開する一方で、Starlight BlueとMirage Pinkは女性ユーザーに向けて訴求する。
「ブルーやピンクなどの淡い色を金属で出すのは実は難しく、他社ではあまり見られません。アルミ素材なのでアルマイト処理が必要ですが、屋外で使うとアルマイトが退色してしまうので、ギリギリのところで色あせないように心がけました」(鈴木氏)
表面のBRAVIAロゴは、プリントではなく刻印されている点にも注目したい。Aurora RedとCosmic Blackのロゴはダイヤカットされており、Starlight BlueとMirage Pinkのロゴではアルマイト処理が施され本体と同じ色になっている。「ダイヤカットは男性が好む処理で、ソニーの商品、特に初めて立ち上げるブランドのロゴなどによく使われている」(鈴木氏)という。
このBRAVIAのロゴは背面のパネルに刻印されているが、ドコモケータイの背面には型番が入っていることが多く、ブランド名が入っても型番とセットであることが多い。したがって、“BRAVIA”というブランド名が単独で背面に入ることは珍しい。
「ロゴの位置は初期の段階から決まっていて、ドコモさんに“BRAVIAケータイ”のコンセプトをご理解いただいたので、すんなり通りました。王道の906iシリーズの中で、アルミの仕上げやダイヤカットを使っていかにBRAVIAらしさを表現するかを考えました」(西村氏)
また、ワンセグ視聴中に付属の卓上ホルダにSO906iをセットすると、12個のLEDが卓上ホルダの下側に透過する。これは卓上ホルダにアクリルの素材が入っているためで、一見すると穴が空いているように見える。「テレビらしさを見せたい」(鈴木氏)ために採用された。
「テレビのフローティングデザインのように、卓上ホルダを置くと浮くような構造にしています。穴を開けて光を全部通すと強度が弱くなってしまうので、(強度と明るさの)バランスを考慮しました。これは鈴木の意図でもありますが、スマートな置き台にしながら、なるべく(ACアダプタの)ケーブルが見えないよう、設計上可能な範囲で逃がすようにしています」(西村氏)
アンテナの搭載位置を変えてスマートなヒンジに
昨今の携帯電話は高機能化と同時に薄型化も狙うなど、二律背反が求められている。SO906iは、「SO905i」よりも高さで7ミリ、厚さが1.7ミリ下回るなど、小型化のハードルを見事にクリア。重さも約5グラムの軽量化に成功している。
高さ7ミリダウンは閉じた状態での数値だが、開いた状態でも短くなっている。こうした小型化に成功したのは、サブディスプレイと+JOGの非搭載が大きい。
「SO906iは、3インチ液晶を備えたBRAVIAを常に持ち歩いてもらえるよう、ホールド感とサイズ感を重視しました。3インチクラスのディスプレイを備えて、高さ103ミリという折りたたみ端末は、ドコモ向けではほかにないでしょう」(西村氏)
サブディスプレイがないのは時刻を確認するうえでは不便だが、「閉じたままでも時報イルミネーションで時刻を確認できます」と柏木氏。また西村氏は、「+JOGについては社内でも激論があった」と振り返る。
「『SO905iで採用したものを2モデル目でやめるのか』と相当議論しましたが、“+JOGが使いづらい”という声があることも認識していました。ジョグを搭載するには基板に穴を開ける必要があり、どうしても面積が増えてサイズ面で不利になります。とはいえ、ジョグを外すだけでは意味がないので、ソフトのスピードを改善してキーの長押しにもついていけるようにしたり、モーションセンサーで傾けて操作ができるなど、快適に操作できるよう工夫しました」(西村氏)
ほかにも、いろいろな部品を詰めて配置することで小型化が実現した。中でも注目したいのが、2軸ヒンジがコンパクトにまとめられ出っ張っていないことだ。鈴木氏は「2軸ヒンジ対応機でヒンジのアンテナ部分が出っ張っていないのはSO906iだけでしょう」と胸を張る。
ここまでヒンジ部を小型化できた秘密は、アンテナを従来機種よりもヒンジの下に搭載したことにある。
「鈴木からの強い要望もあり、しっかり握れるよう、本体の全周にアールを設けています。ただし丸過ぎると女性的になるので、バランスを取りました。ここは、開発中に大幅な設計変更があったくらい試行錯誤した、設計陣が苦労して泣いていたところです。アンテナはボディギリギリのサイズで入れています。これはすごいことで、試作機が上がってきたときに衝撃を受けました」(西村氏)
「ヒンジの部分には、強度の関係で金属の部品がたくさん入りますが、デザインの趣旨としてもヒンジは出したくない。『男性にも女性にも』というコンセプトを設計陣に理解してもらい、かなり頑張ってくれました」(鈴木氏)
「アンテナとヒンジが近いため、ただ配置しただけではアンテナ効率が落ちてしまいます。そこでアンテナ性能を満たすため、開いたときと閉じたときでアンテナ特性のマッチングが変わるよう切り替え回路を入れています」(柏木氏)
キー面積はSO905iとほぼ同じだが、押し間違いをしないよう、キー間に溝が彫られている。「薄さだけを追求するのなら、SO903iTVのようにシートキーを採用する手もありましたが、商品の完成度を重視しました」(西村氏)
SO906iは“BRAVIAケータイ”として映像機能が進化したのはもちろん、全体的なレスポンスの向上、メールと文字変換の機能アップ、モーションセンサーなどによって、携帯電話としての使いやすさにも注力されている。加えて、U字イルミネーション、アルミパネル、小型軽量ボディにより、“BRAVIA”の価値を高めるデザインとサイズの実現にも成功した。
西村氏が「いろいろな人に優しいケータイ」と話すように、SO906iはケータイに映像機能を求める人だけでなく、メール、通話、カメラなど基本機能をしっかり使いたいユーザーにもお勧めできる。だからといって、単なる“大人しいケータイ”ではなく、U字イルミネーションやモーションセンサーなど、実験的な試みも盛り込まれている。使うほどにその“優しさ”を実感できるSO906i。ぜひ店頭で手に取ってみてほしい。
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